採用業務へのRPAの導入~メリットと導入ポイントを事例から紹介

人事

2019年08月29日(木)掲載

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RPAを導入して生産性を高めようとする企業が増えています。RPAは2016年頃から市場が立ち上がり、2017年~2018年には大手企業を中心に導入が急増しました。2019~2020年にかけては、「何かできそうだ。とりあえず入れてみよう」という導入ブームが一巡し、真価を発揮する業務へ活用できるか否かが肝になってくると予想されます。

本稿では、優秀な人材を 採用することの難易度がますます高まる状況の中、RPAを活用した採用機能の強化について筆者自身が行った実践例も参考にしながらご紹介します。

なぜ採用にRPA活用が効果的なのか?

RPAは、Robotic Process Automationの名の通り、プロセス自動化のためにソフトウェアロボットに仕事をさせることを言います。

人は同じことを繰り返す業務を面倒だと感じます。一方で、ロボットは同じことを繰り返す業務にこそ力を発揮するという性質を持ちます。採用業務は、同じことを繰り返すタスクが、いくつも連なって構成されるため、RPAを活用することは有効です。

例として、次のような業務は多くの企業がまだ人が実施しているのが実態でしょう。

・面接の合否結果を確認し、候補者へ結果をメール連絡する。(合格の場合は)次回の希望日時を聞く文面も添える。
・書類選考を面接官に依頼する。
・説明会や採用イベントへの申し込み者に対して、詳細の案内を送付する。


これら以外にも採用業務はルーチン性が高い業務が非常に多いため、RPAの活用が効果的である理由の1つ目といえます 。

2つ目の理由は、冒頭にも記載した通り、人材を採用する難易度(厳密には以前と同レベルの優秀な人材を採用 しようとした時の難易度)が年々上がってきていることです。

人材採用に熱心に取り組む経営者/人事責任者/担当者ほど、「難しくなっている」という肌感覚をひしひしと感じていることでしょう。この難しさが一番厄介なのは、一過性のものではないことです。少子高齢化が進むことは確実視されているため、採用難易度は今後5年、10年、20年と時間が経つほどますます難しくなっていく、ということが明らかになっています。

ではどうすべきか?という問いへの答えの一つは、「単なるオペレーションにかかる時間を減らして、採用力向上のための企画・実践の時間を増やす」ということです。この2つ目の理由の方がRPAを導入しようとする根本的な理由になりうるでしょう。

採用業務にRPAを導入する際の手順とポイント

一般的なRPAの細かい導入手順等は他サイトに譲るとして、あくまでも筆者が人事部で実際に新卒・中途採用にRPAを活用していった実体験をもとに、上手くいった点・反省点を踏まえ、理想的な導入手順とポイントを大きく3点ほどに絞ってご紹介します。

手順1:業務を可視化してToBeの大枠を描く
ポイント:業務フローはどうなっていて、どこをハイタッチorロータッチor テックタッチで実施すべきか?

手順2:既存業務システムの改善効果を信じる
ポイント:今の業務システムを前提とするか否か?

手順3:RPA化する
ポイント:テックタッチ部分のどこにRPAを適用するか?


RPAの導入のポイントとしてよく言われるのは、RPA導入ありきでは進めてはいけない、ということです。上記の3点の手順についても、RPAの導入はあくまでも最後の検討事項としています。

ただ、実際に導入してみた立場としては正直どちらでもよいというのが実感値です。目的を重視する立場からは、「RPAの導入は手段であり目的ではないので、まず業務をどうしたいのか?(ToBeフロー)」を決めたほうがよい、となります。一方で、RPA導入ありきでも大丈夫だという論拠もあります。よく聞くのは「お掃除ロボットを家に導入すると、ロボットが掃除しやすいように家を整理し始める。」というものです。

これは、どちらも正しく、結局前者は1→2→3といっており、後者は3→1→2→3といっているという違いにすぎません。このあたりは企業のカルチャーやスピード感に応じて、フィットする方法で進めていくことをお勧めします。

筆者もRPAを導入したときには、「まずやってみよう、スピードだよね」というカルチャーであったこともあり、実際には手順3として、初めに採用管理システムを導入しました。ただ、採用管理システムの導入だけでは十分な業務削減時間を確保できず、さらにRPAを約半年後に導入することになりました。そのタイミングで業務をToBeから整理し始めました。

手順1:業務を可視化してToBeの大枠を描く
ポイント:業務フローはどうなっていて、どこをハイタッチorロータッチ or テックタッチで実施すべきか?

現状の採用フローを紐 解いていく活動です。業務手順をタスクごとに記載し、可視化していきます。矢羽根の形で記載していくのも良いのですが、修正の容易さや、後にRPA化する際にさらに細かいフローを追加する手軽さから、スプレッドシート等を活用するのもお勧めです。

最も採用決定に至っている採用手法から始めればよいため、(リファラルやSNS経由が大多数という一部の採用力のある企業を除けば、)人材紹介会社経由または採用媒体経由のフローが主要なシェアを占めるという企業も多いでしょう。

要素としては次の図を参考にしてください。

アップロードした画像

このようなフローを改めて採用チームで簡易的にでもよいので作成し、共有します。これだけでも、「こんなことしてたのね!」「ここは変更したいね。」というような議論が生まれるきっかけになります。

ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチの概念は、時流としてカスタマーエクスペリエンス(CX)の観点で必須になってきており、採用も当該概念を模したエンプロイーエクスペリエンス(EX)の一部であるという捉え方が重要になってきています。ただ、難しい概念ではなく、採用活動を大切な候補者の体験とみた場合に、どのタスクを人が作業し(ハイタッチ:手厚く、ロータッチ:簡易に)、どのタスクをテクノロジーに代替してもらうことが望ましいか(テックタッチ)という整理をすることです。

図の通り、あるべき論(図中、赤字部分)でいくとテックタッチにできる部分が多そうだという部分も見えてきます。ただし、最初から全て自動化しようとすると大変です。工数なども確認し、最も自動化の効果があるところから実施するのが最善です。

ちなみに、筆者の経験としては、業務を可視化した際に、「メールを送付する」という行為が採用フローの中に10種類前後存在することが分かりました。かつ、そのうちの半分が一次面接結果を送付するまでのものであり、そこに工数が多大にかかっていることが見えてきました。

一次面接までであれば、ボリュームが多い割に個別対応は多くなく、テックタッチにしてもエンプロイーエクスペリエンス(EX) としては変わらないという仮説のもと、ロボットに一次面接の合否結果までのメールを送ってもらうように設計し運用していました。

採用管理システムの機能として「一次面接後、候補者へ不合格理由も添えて、一括でメールを送付する」という機能があればRPA化は不要でしたが、当時の管理システムにそのような機能は存在していませんでした。

人が都度管理システム上で、不合格理由を別ページから持ってきて、メールに貼り付けて、という作業をしている時間が非常に無駄であると感じ、ロボットに操作させてメールを一括で送るようにしていました。

手順2:既存業務システムの改善効果を信じる
ポイント:今の業務システムを前提とするか否か?


上記1で整理したエンプロイーエクスペリエンス(EX) を実現するためには、現状の採用管理システムを前提とせず、SaaS型の採用管理システムにリプレイスするだけでもよいかもしれません 。一方で、RPAは既存のオンプレミスのシステムについても操作できる範囲が広くなってきているため、既存システム×RPAということでエンプロイーエクスペリエンス(EX) を実現できるとの判断も現実的にはあります。

RPA化して自動化する 前段階として、現状の業務フローの前提となっている既存システムを変更することで改善できないのか、という観点を検討することが重要です。

理由は、運用フェーズに入った際のメンテナンスにかかる工数の問題があるためです。RPAは自社で比較的簡単に設計できるが故に、当然ながら不具合や修正等のメンテナンスも根本的な問題でない限り自社で実施するという前提となります。

当然ながらRPA化する範囲が広くなるほど、自社でのメンテナンス工数、管理工数もかかってくるため、可能な限り採用管理システムで解決できないか、という視点は重要になるということを強調しておきます。
(業務システムはRPAよりも融通は効かない一方で、不具合修正などのメンテナンスは当然ながら一任できるため。)

その後、RPAを活用することで飛躍的にEXの維持向上に対する生産性が高まることが見えてきたら、RPA化するタスクを検討していきます。

手順3:RPA化する
ポイント:テックタッチ部分のどこにRPAを適用するか?


採用管理システムを変更して対応するタスク、RPA化して対応するタスクの方向性が整理できたら、最後は実際にRPA化するタスクを詳細手順として書き出していきます。(※採用管理システムの変更で対応するタスクがある場合は、RPA化よりもまずはそちらの変更+運用開始にフォーカスすることをお勧めします。同時にRPA化を行うとリソースが分散して安定運用に支障を来すリスクが高まるためです。)

タスクの詳細手順のイメージとしては、図にある「採用管理システムにて該当候補者を確認する」というタスク一つとっても、RPA化するためにはさらなる分解が必要となります。
次に分解例を示します。

採用システムのURLを入力し、該当ページが表示されたら、ログインIDとパスを入力する

ダッシュボード画面が表示されるので、画面左の「候補者一覧」を押下する

候補者一覧に表示されている中で、「未確認一覧」を押下する


自社でRPA化をしていく場合でも、外注して実施してもらう場合でも、この粒度で記載すると、RPA化できるもの/できないもの、が現実的に見えてくるでしょう。

今後の企業の採用活動、今後のRPAについて

今後、企業は自社の採用力強化のために、「採用機能自体を強化すること」に加えて、採用の「前工程」と「後工程」を強化する戦いの中に入っていくと予想されます。

特に 採用がもっとも重要な位置付けを占めるスタートアップやベンチャー企業などでは当然の手段として行われている部分もありますが、今後大手企業などにも逆輸入的に広まっていくものと予想されます。

「採用機能自体を強化すること 」というのは、人事ではなく事業に採用にコミットしてもらい、採用の工数確保やPDCAが回しやすい体制を作ることもその1つです。また、不明確になりがちなターゲットや人材要件の明確化に改めて時間を費やすこと、進化する採用手法を自社に合う形で取り入れることなど、採用機能単体として進化することをいいます。ここは当然ながら強化していく必要があり、RPA等のテクノロジーを活用することにより企画・実践する時間を創出することが重要になってきます。

一方で、採用の「前工程」=「自社を認知してもらう」 体験とするのであれば、中・長期的な視点としてブランディングを高める活動、短期的な視点としてマーケティング要素をブレンドした(データドリブンに効果的な採用手法・媒体等を分析していく)活動も必要になってくるでしょう。

また、「後工程」=「組織に所属することで、衛生要因や動機付け要因が一定程度満たされている状態」の 体験とするのであれば、昨今では企業の口コミサイトなどでそのような 体験の感想がすぐに世の中に出回り、採用力にも直結する観点から、採用/組織設計/人事制度運用の連携がさらに必要になってきます。

3~5年後を見据えると、現在は採用競争力がある中堅から大手企業においても、採用担当の視点からエンプロイーエクスペリエンス(EX)担当という視点にチームミッション自体を昇華させ、連携し、相応に協働することが当たり前になる時代がもうそこまで来ているのかもしれません。

※記事は執筆者個人の見解であり、パーソルキャリア株式会社の公式見解を示すものではありません。

ライター神吉 徹二氏

大手コンサルティング会社、大手人材会社において人事全般のコンサルティングや実務に従事。その後RPAホールディングス株式会社で人事責任者としてグループ全体の人事制度改定、採用、その他人事全般の戦略から実行まで担当。2019年7月に独立し、人事制度設計やHR領域でのデータドリブンの支援を実施。

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