IT分野での2025年問題の本質~基幹システムの再構築検討の前に~

システム

2020年04月01日(水)掲載

IT分野における2025年問題について解説していきます。

(1)そもそも、2025年問題とは

昨今、世の中で話題になっている「2025年問題」とは、既に発生しています少子高齢化問題の延長として、2025年には日本の人口の年齢別比率が劇的に変化して「超高齢化社会」となることです。これにより、社会構造が大きな分岐点を迎え、雇用、医療、福祉等の様々な分野に影響を与えることが課題として予想されています。この顕著な例としては、2019年あたりから「2000万円の老後貯蓄が必要」で急にクローズアップされてきた「年金問題」もその大きな影響のひとつです。

そして、年金の支給開始年齢が延びるということは、国が要請していますように、雇用する企業も定年を延長しないといけないということになります。この国からの要請による企業側の対応は、昨今のグローバル対応で苦戦している日本の企業にとっては、貴重な利益を高年齢社員の厚生年金保険や健康保険等の半額負担のみでなく、企業の組織運営にも様々な影響が出てくるでしょう。また、このことは、世界のグローバル企業に負けないだけの体力をつけるための企業側の投資に対しても阻害要因の一つともなりえます。よって、この「2025年問題」は単に世の中の医療や福祉面だけの問題でなく、多くの企業側にとっても悩ましい問題というのが実態なのです。

しかし、日本の企業にとって更に重要な「2025年問題」があるのです。
それは、「IT分野における2025年問題」です。ITに関わられておられない方は余りご存じないかもしれませんが、これは日本の大手企業にとっても、今後グローバル社会で生き残るためには、火急かつ重要な問題なのです。

POINT

・2025年問題とは、2025年に社会が超高齢化した際に、医療、年金、企業運営などで引き起こされる様々な問題のことである。
・2025年問題は、今後のグローバル社会で日本が生き残っていくために解決しなければならない問題である。

(2)IT分野での2025年問題とは

では、「IT分野での2025年問題」とは、どのようなことを指すのでしょうか。

経済産業省のDXレポートに記載されたのは、DXとIT人材不足

IT分野の「2025年問題」としては、経済産業省の『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』のなかにも出てきます。このレポートは、どなたでも経済産業省のホームページからご覧いただけます。ちなみに、DXとは「デジタルトランスフォーメーション」というような余り聞き慣れない言葉の略称です。
DXを行っていく中での課題の中には、IT業界の現場におられる方々は当然認識されていらっしゃる、IT人材不足の問題や、欧米では既に10年ほども前から取り組まれています「デジタルトランスフォーメーション」というような言葉が多用されています。ただし、企業側は2025年までにどのようにすれば良いのか、と言った、具体的な現場実務ベースでの対策までは書かれていません。
しかし、このレポート自体は各分野での有識者が纏めた資料であり、一読する価値はあると思います。

DX自体が「2025年問題」の本質ではない

ただ、このレポートの中で強調されている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「2025年問題」との直接の関係は、私には理解しにくく、あまり関係ないのではないかと感じています。というのも、このレポートで一番重要なところはそこではなく、既に何年も前からITに携わっておられる方であれば、上記(1)の一般的な2025年問題に関連して実感していることであるからです。そして、DXというのは、企業の土台とも言うべき基幹システムがあって初めてこれが実現できるのです。

昨今、その基幹システムの再構築の問題対応で苦労している企業側としては、企業の現場として具体的にどのようにすればDXが実現できるのか、そのイメージもあまり湧かないのではないでしょうか?それ故に、経済産業省からこのようなレポートがでると、企業側としては、「2025年の崖」問題よりも、その前のもっと重要な問題である「基幹システムの再構築」に対してどのようにすればよいのか、かなり悩むところだと思います。
しかし、ちょっと考えて見ればお分かりのように、高層マンションの建築では、詳細設計図、それも基礎となる土台をどうするかが明確になっていなければ、安全性や品質は担保されません。これは外観や内装以前の問題ですよね。ITもこれと同様に、企業の土台(1階)となるべき基幹システムがしっかり実現出来なくて、その上に乗る(2階となる)DX等も含めた企業の様々なシステムが上手く運用できるとは言えないでしょう。
よって、私はこの経済産業省のレポートで一番重要な点は、(1)のところでも出ていました雇用、特にIT人材に関わる問題と考えます。つまり、「2025年には、企業ITインフラが老朽化し、ERPのような企業の基幹システムパッケージのサポートが終了の時期を迎えるが、対応できるIT人材がいなくなってしまう。従って、今からその対応を考えなさい。」ということでしょう。

2025年の壁

具体的には、以下が大きな「2025年の崖」と私は理解します。
①DX等々だけでなく、基幹システム(ERP)導入における、ベンダー企業への依存性の高さの問題
②老朽化したシステム(レガシーシステムだけで無く、昨今のERPの古いバージョンも含む)の運用・保守ができるIT人材の枯渇の問題
③ITシステムを導入する企業自体が、主体をもってITシステムのマネージメント、リーディングができるようにならなければ、ITベンダー企業の人材も同様に限りがあり、2025年には対応出来なくなる問題
上記が主なところですが、詳細は皆さんで上記の経済産業省のレポートをお読みいただければ、私の述べていることが良くご理解いただけると思います。

POINT

・DXレポートは重要な資料だが、2025年問題の答えではない。
・IT分野における2025年問題とは、ITインフラの老朽化によって時代の変化に対応できなくなることである。

(3)SAPの2025年問題とは

(2)のところにも関連しますが、企業はかなり前からレガシーシステムのメンテ・保守が大変となってコストもかかるという問題を、25年ほども前から意識していたと思います。そして、その頃日本ではSAP社の「SAPR/3」に代表される企業の統合基幹システムを実現するパッケージがリリースされ、日本の大手企業はこぞって導入しだしました。しかし、日本の企業の複雑な業務システムが、海外で著名なSAP社のERPパッケージといえども、簡単に導入できる訳はなく、当初は苦労して導入された企業も多かったと思います。その後、各社のERPパッケージもどんどん進化しました。
SAP社も日本企業の要望をドイツ本社にフィードバックして機能改善がはかられると共に、SAP社パッケージのアーキテクシャー自体も、当初の「SAPR/3]から昨今の「SAP ERP(ECC6.0)」等で代表されるパッケージへの進化や、クラウド環境のERP等々へ変遷してきた経緯もあり、昨今の企業はERP無しには自社の基幹システムの再構築は難しいという状況でしょう。
しかし、ここで「SAPの2025年問題」が浮上してきたのです。これは現在SAP社のERPパッケージを導入されている企業では周知かと思いますが、問題のポイントは以下です。

・SAP社からの「2025年のメインストリームメンテナンスの終了までに「SAP S/4 HANA」に移行するように、「SAP ERP」等のSAPユーザー企業に促してきた時期がたまたま2025年と重なっており、「SAPの2025年問題」と言われている。(しかし、SAP社によると、最近その保守期限が2027年まで延長するようです。そうなるとこの「SAPの2025年問題」は「SAPの2027年問題」になります。)

しかし、サポート期間が2027年に延びたからといって安心できないのです。というのも、今回の保守終了は既に「SAP ERP」を使っている企業にとっては、これまでのサポートバージョンの終了とはかなり状況が異なるように思えます。よって、SAPユーザーが「SAPの2025年問題」として特に騒いでいる背景があります。更に上記の「IT分野での2025年問題」も重なりますので、余計に大変なのです。よって、2027年までサポート時期が延びたのはせめてもの幸いでしょう。

上記の「SAPの2025年問題」の内容は補足すると以下になります。

今後「SAP ERP」のサポートが終了し、「SAP S/4 HANA」のサポートのみとなると、これはERPのインフラ(DB)やパッケージ自体のアーキテクシャーも大きく異なり、従来のオラクルのDB等が使われていた「SAP ERP」と、SAP独自のインメモリベースの高速DBが使われている「SAP S/4 HANA」へはこれまでのバージョンアップのように簡単には移行できません。よって、既存のSAPパッケージ導入企業にとっても色々インパクトがあり、「SAPの2025年問題」として従来の保守期限のサポートより注目されている所以です。また、これを契機として、ERPパッケージの切り替え・新規導入を検討している企業が増えています。私はこれまで様々なERPパッケージを国内外に導入したことがありますので、各社のERPパッケージに良いところや悪いところがあるのは重々承知ですが、敢えて中立な立場で言わせて頂くとすれば、企業の中核となる基幹システムの再構築や新規導入は、たやすく実現できるものではありません。このことは、既にERPを導入経験された企業のIT部門の方であれば、十分お分かりかと思います。

しかし、企業の基幹システムの新規導入や再構築が上手くゆかない原因は、多分に導入企業側、特に情報システム部門のスタンスにあるのです。そして、このことはこれまでの数多くのERP導入経験で特に感じた次第です。そして、これは経済産業省の冒頭のレポートにも「ベンダー企業への依存度の高さの問題」として取り上げられていることですので、あながち間違いではないでしょう。
その理由を最後に解説して、この「IT分野での2025年問題の本質」コラムを終えることとしましょう。

POINT

・SAPの2025年問題とは、IT部門をベンター企業に頼り過ぎていたために、自社で新たな基幹システムの再構築ができないという問題である。

(4)企業の基幹システムの再構築にむけてのアドバイス

そもそもIT分野での問題は、「IT分野での2025年問題」に対してだけでなく、色々な問題が内在しています。それゆえに、上記の経済産業省のレポートの中で私が指摘しましたような「2025年問題」以前から、そもそもの企業のIT、特に基幹業務の取り組み方のスタンス自体が、従来のシステム開発の考えから昨今のERPに代表される既存のパッケージの適用による開発で大きく変わっているということを、「IT分野での2025年問題」も踏まえて企業側も認識しなければならないと思います。
しかしながら、ITシステム導入における企業側としての重要なポイントは以前とは全く変わらないのに、これを誤解され、パッケージベンダーやITベンダーに全て任せている企業が多くなってきていると感じています。それが(3)の最後のところで敢えて企業側への警鐘として少しふれさせていただいた内容なのです。

これは非常に重要な点ではあり、かなり解説のボリュームがあります。また、このコラムの「2025年問題」のテーマとも離れますので、別コラムの「基幹システム再構築成功に向けての重要な準備ステップ」にて解説しています。よって、詳細はそちらを是非お読みください。
最後に、ここではIT分野での2025年問題を踏まえての「企業の基幹システムの再構築にむけて」として、上記コラムの概要及び目次のみご紹介させていただきます。

コラムタイトル:「基幹システム再構築成功への重要な準備ステップ」

POINT

・ITシステムの導入をベンダー企業に任せてしまっていることが問題である。
・自社で基幹システムの再構築を図るのが重要である。

日本における基幹システムの課題

基幹システムの再構築の前に課題を洗い出しておきましょう。

老朽化

日本と比較すると、海外は非常にDX化が進んでいます。DXは成熟度によってステージが定められており、企業としてどれだけデジタルシフトできているのかを図る指標になっています。
ステージ1~5まであり、例えば、ステージ1はデジタル抵抗者として個人的な人がDXしているのみ、ステージ2は限定的な導入であり全てはデジタル化できていない、ステージ3は基盤確立であり最低限ITの足元はそろっていること、ステージ4はそのIT化の管理まで手が回っている、ステージ5は継続的にデジタルトランスフォーメーションできる、最新のデジタルをキャッチアップできている、という具合です。DXに取り組む企業は多いですが、その取り組みは短期的なものや現場層を巻き込んでいないものが多く、なかなかステージ5に到達している日本企業は少ないのが現状です。日本の企業は、取り組みが短期的でステージ5のようにDXサイクルを回すこともできず、結果、システムが老朽化してしまっているのです。
先述したDXレポートでも、以下のような文章があります。
複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムも足かせとなっている。

ブラックボックス化

ブラックボックスという言葉は、レポートにも出ていますが、基幹システムの中身を知る人間が少なく、その煩雑化も一つの課題です。経済産業省によると、2025年には、合計で43万人のIT人材が不足すると言われています。
ここでの一番のリスクは、古い基幹システムを理解できる人材がどんどん高齢化していってしまっているということです。若い人材は最先端のAI技術を学び始めます。その方が需要があるからです。今まで活躍していたIT人材もいなくなるわけではありませんが、高齢化するリスク、違う技術を学ぶために転職してしまうリスク、などがあるために不安は大きいでしょう。人材が流動的であることも加速して、基幹システムはブラックボックス化しています。

POINT

・日本企業における基幹システムの課題は、老朽化もあるが、ブラックボックス化していることなどもある。

(概要)昨今、基幹システム再構築を目指す企業が多いのは、いくつかの背景があります。まず、一番大きいのは、著名な「統合業務パッケージ」(いわゆるERPパッケージのことです)の導入が、日本でも大々的に始まってから既に20年以上も経過していることにあります。そして、その頃のハードウェアのみならず、業務システム自体が昨今の業務ニーズに合わなくなってきており、海外拠点も含めた対応や、過去の老朽化したシステムの改修など、様々な問題からの脱却が重要課題となっていることが背景にあります。

また、昨今のグローバル化への対応で、海外工場や海外拠点も含めての業務システムの改修が必要となるケースも多々あります。これは、基幹システム再構築で昨今多いケースである「基幹システムのグローバルへの拡張対応」の必然性としての背景です。ただ、基幹システムの再構築は想像以上に難しく、基幹システムの再構築を実施するすべての企業が必ずしも成功しているわけではありません。
再構築プロジェクトの納期、費用、品質(性能や業務満足度も含めて)のいずれかの観点で再構築に失敗し、基幹システムのありかたそのものを再度見直さなくてはならない企業も多く存在するのが実態です。

このコラムでは、企業の基幹システム再構築を成功させるために、基幹システムの再構築のノウハウよりも、再構築プロジェクト成功の鍵となり、開始までに行っておくべき重要な「準備フェーズ」のポイントを、時系列のステップとして実プロジェクト経験から具体的に順に紹介していきます。以下の各「準備ステップ」を基幹システムの導入プロジェクト開始前に企業側が主体となって実施することにより、経済産業省の「2025年の崖」レポートのなかでも触れられていますベンダー依存や、2025年以降のシステム保守の問題解決にもつながるでしょう。

では、「2025年」になって焦らないように、今のうちから時間をかけて、貴社の基幹システムの刷新に向けてじっくり取り組まれてください。

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「基幹システムの老朽化に困っており、対応できる人材が不足している」
「現状の基幹システムに制約や限界を感じており、DX施策として社内の管理システムを刷新したい」
といった企業様、当社でサポートし、DXステージを上げている事例が多くございます。
ぜひ一度ご相談ください。

執筆者H.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門に勤務。米国への社費留学にてコンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はIT顧問として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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