【IT分野での2025年問題の本質:step1】基幹システム再構築成功への重要な準備・ベンダー及びパッケージ選定計画の立案

システム

2020年04月02日(木)掲載

はじめに:基幹システム再構築開始までの重要な準備ステップ

(1) 企業の基幹システムの再構築の背景は?

昨今、基幹システムの再構築を目指す企業が多いのは、いくつかの背景があります。まず、一番大きい背景は、著名な「統合業務パッケージ」(いわゆるERPパッケージのことです)の導入が、日本で大々的に始まってから既に20年以上も経過していることにあります。そして、その頃のハードウェアのみならず、業務システム自体が昨今の業務ニーズに合わなくなっており、海外拠点も含めた対応や、過去の老朽化したシステムの改修など、様々な問題からの脱却が重要課題となっていることが背景にあります。

また、昨今のグローバル化への対応で、海外工場や海外拠点も含めての業務システムの改修が必要となるケースも多々あります。これは、基幹システム再構築で昨今多いケースである、「基幹システムのグローバルへの拡張対応」の必然性が背景です。

ただ、基幹システムの再構築は想像以上に難しく、基幹システムの再構築を実施するすべての企業が必ずしも成功しているわけではありません。再構築プロジェクトの納期、費用、品質(性能や業務満足度も含めて)のいずれかの観点で再構築に失敗し、基幹システムのありかたそのものを再度見直さなくてはならない企業も多く存在するのが実態です。
 
このコラムでは、企業の基幹システム再構築を成功させるために、基幹システムの再構築のノウハウよりも、再構築プロジェクト成功の鍵となり、開始までに行っておくべき重要な「準備フェーズ」のポイントを、順番に紹介していきます。

以下の各「準備ステップ」を基幹システムの導入プロジェクト開始前に企業側が主体となって実施することにより、経済産業省の「2025年の崖」レポートのなかでも触れられていますベンダー依存や、2025年以降のシステム保守の問題解決にもつながるでしょう。

(2) 本来の「基幹システム」の定義


最初に、ひとつ重要な点をご理解いただいてから、具体的な各準備ステップの解説に入ることとしましょう。

既に皆さんもご存じのように、「基幹システム」とは「企業の主要業務を支える様々なシステム」のことを指します。また、最近では「基幹システム」の代名詞として、「ERP」もしくは「ERPパッケージ」が使われますが、これは必ずしも正確な表現ではありません。
 
一般的に基幹システムは、会計システム、営業システム、物流システム、更には、バックオフィス系の業務システム等も含めて、それぞれが基幹システムなのです。よって、従来はこれらの業務毎に独立した別々のシステムになっており、他部門や他業務とのデータのやりとりをする場合には、システムの間の連携や整合性を取る必要がありました。そして、これが一番大変で、業務上の負荷や工数もかかり、大きな課題でもあったのです。
 
そこで、これら各業務システムを統合して、ひとつのシステムで実現しようという発想から「統合業務システム」すなわち「ERP」という発想が生まれたのです。そして、これが、昨今ERPパッケージがグローバルレベルで大手企業に導入されている背景なのです。

よって、ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)がもとの意味ですが、昨今では、ERPは「統合基幹業務システム」や「統合業務パッケージ」、あるいは、企業の基幹となる重要なシステムという意味で、略して「基幹システム」とも言われているのです。
 
したがって、このERPは企業に存在する様々な業務データを統合データベースとして一元管理することも可能となっており、これが企業にとって莫大なメリットを生みます。しかし、過去の大手企業が行ってきたシステム開発のように、企業のIT部門が自前でこの「ERPパッケージ」を開発することは、時間やコストもかかる上に、パッケージ自体の改修や保守も大変です。そして、これは企業が本来リソースを注力すべき作業ではなく、その開発自体が無駄な作業です。それ故に、昨今は多くの企業で著名なグローバルスタンダードである「ERPパッケージ」の導入が進んでいる背景でもあります。

以下、このコラムでの「基幹システム」と言う用語は、この「ERPパッケージ」を意味している、とのご理解の上でお読みください。しかし、仮に個別業務の「基幹システム」を実現するパッケージの開発や再構築する際にも、規模感は異なっても、本コラムで解説いたします重要な「準備ステップ」は、貴社の基幹システム再構築プロジェクトの成功に向けて大いにご参考にしていただけるでしょう。

(3) 基幹システム再構築の基本的な考え方

企業が基幹システム再構築を実行する目的は、既に述べましたように様々です。しかし、その目的にあうように、基幹システムを再構築することは簡単なことではありません。企業全体の中核を為す基幹システム再構築のような大規模なプロジェクトとなれば、失敗すれば、業務面への影響だけでなく、費用面の損失も含めて企業に取って大きなダメージとなります。

それでは、このような大規模な基幹システムの再構築を成功させるためには、どのような点に留意してプロジェクトを開始すれば良いのでしょうか。
 
その答えとしては、先ずは「準備・計画」段階の重要性です。つまり、通常あまり重点が置かれていないプロジェクト開始前の「準備フェーズ」に対して、全社的なレベルでしっかり対応するということです。基幹システム再構築プロジェクトが成功するか否かのひとつの重要なポイントが、先ずはここにあります。

実際、既存の基幹システムの再構築を検討の際には、既存のオンプレミスシステム(昔ながらの自前のハードやソフトでシステムを実現する形態のこと)から、その古いインフラ(ハード)環境をクラウド化してインフラ基盤の統合や刷新をはかるだけというような再構築もあります。また、業務の改革(BPR; Business Process Reengineering)も加味して、大々的な再構築をするケースもあります。

そして、今では世の中の大手企業のみならず、中堅企業でもあたり前に導入しているERPパッケージのような「基幹システムの再構築を実現出来るシステム」を使用した全面的な再構築という考えもでてきます。しかし、いずれの形態であってもまず大切なことは、「準備フェーズ」への対応です。これは、レベルの差はあるとしても、どのようなケースであっても重要性は同じです。

この「準備フェーズ」の内容は盛りだくさんですが、進め方には重要なポイントが多々あります。また、この「準備フェーズ」は再構築プロジェクト自体の開始前の作業となります。このプロジェクト開始前の作業を全て含めて「準備フェーズ」とここでは表現しています。
 
例えば、「ステップ1」は「再構築支援ベンダー及びパッケージ選定計画の立案」、「ステップ2」は「再構築対象範囲・現状課題の明確化」、最後の「ステップ8」の「再構築プロジェクトのキックオフ迄になすべきこと」までの盛りだくさんな内容となっています。
 
つまり、準備や計画といえども、皆さん良くプロジェクト開始段階で作成される「プロジェクトマネージメント計画書」(Project Management Plan)のドラフト(案)作成や、再構築をご支援いただくERPパッケージベンダーやITベンダーの選定プロセス、更にはその先のメインとなる貴社の再構築課題にマッチしたERPパッケージの選定プロセスも、この「準備フェーズ」に含まれます。そして、それが終わって初めて「基幹システム再構築プロジェクトの開始」となるのです。

昨今のグロ-バル化された時代で複雑な企業の業務をサポートする「基幹システム」は、いきなり再構築プロジェクトを開始して成功するほど、企業の基幹システムは単純なものではありません。先ずは、そこをご認識いただくだけでも「基幹システム再構築」の成功に一歩近づいたことになります。

では、以下、順を追って各ステップのポイントを解説しましょう。

ステップ1:再構築支援ベンダー及びパッケージ選定計画の立案

(1) 「準備フェーズ」の根幹となる計画の立案

「準備フェーズ」で最初に行わなければいけないことは、「再構築支援ベンダー及びパッケージ選定計画」の立案及びこれらの作業を具体的に推進する体制と組織の確立です。
 
この計画立案の際のポイントは、通常のプロジェクトの計画と同様に、基幹システム再構築プロジェクトをいつまでに本番稼働をさせるのかというタイムフレームや、全体計画の概要スケジュールを意識した上で、いつまでに「再構築支援ベンダー及びパッケージ選定」作業を完了させなければいけないかということを逆算することです。
 
投入する要員や組織は、再構築プロジェクトの対象や規模により異なります。もし、期間的に厳しければ、その分「準備フェーズ」に投入すべき要員の数も増え、またそれなりの工数(費用)も掛けなければ間に合いません。このタイムフレームを明確にした上で、計画を立案することが大切です。
 
再構築対象プロジェクトの範囲、内容により当然「準備フェーズ」の長さは異なりますが、通常この「準備フェーズ」は最低でも数ヶ月~半年程は見ておいた方が良いでしょう。逆にその程度の準備期間をかけて、再構築プロジェクトの開発を開始しなければいけないと私は考えています。

(2) 「ステップ1」でのアウトプット(成果物)

どのようなタスク、プロジェクトでも同様ですが、アウトプット(成果物)を意識して計画を立てることが重要です。

この「ステップ1」でのアウトプット(成果物)としては、再構築プロジェクト全体のおおまかな期間(マスタープラン)及び、これを踏まえた「準備フェーズ」のスケジュール(計画表)の策定、「準備フェーズ」のタスクを推進する体制の確立、またそれに要するコスト(費用感)の算出、予算取りだと考えられます。
 
また、この「準備フェーズ」全体を通して重要なことは、再構築プロジェクト開始後にプロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーの役割を担う予定の人が、この「準備フェーズ」の段階から参画してリーディングすべきということです。
 
その理由は、実はこの「準備フェーズ」の中で、実際の「基幹システム再構築プロジェクト」の開始後に重要となる「プロジェクトマネージメント計画書」(PMP; Project Management Plan)のドラフト(案)も作成するためです。そして、これがベンダーへの提案依頼書(RFP; Request for Proposal)に加えて、後のフェーズで重要な位置づけとなるためです。
 
そのような意味でも、プロジェクトの開発に携わる予定のキーメンバーがこの段階から関わった方が、その後のロスがなくなり、費用の削減にもつながります。

(3) 「準備フェーズ」で重要な提案依頼書(RFP)とプロジェクトマネージメント計画書(PMP)とは?

既にご存じの方が多いかと思いますが、以降のフェーズ内容を良くご理解いただく為にも、こちらで提案依頼書(RFP)とプロジェクトマネージメント計画書(PMP)とは何か、及びなぜこの「準備フェーズ」の段階で、提案依頼書とプロジェクトマネージメント計画書の両方を作成すべきであるかをご説明しておきましょう。

・提案依頼書(RFP):再構築プロジェクトをご支援いただく、貴社の再構築ニーズに合った最適なベンダーを選定する為のベースとなる資料です。通常、ERP パッケージの選定が主体となるケースが多いと思います。しかし、どちらかといえば、ERPパッケージよりもベンダー(基幹システム再構築のご支援をしていただけるベンダー)の選定をメインに作成し、パッケージはそのベンダーに要件に合った最適なパッケージを担いでいただくという形のほうが、貴社がパッケージありきで選定するよりもプロジェクト成功率が高いケースが多いです。

・プロジェクトマネージメント計画書(PMP):このプロジェクトマネージメント計画書(PMP)はプロジェクト開始段階で作成するケースが通常で、しかも、貴社でなくご支援いただけるベンダーが作成するケースが多いです。しかし、それではプロジェクトが上手く進まないケースが多いです。実際、このプロジェクトマネージメント計画書(PMP)を作成するためには、ある程度の経験やノウハウがないと難しいです。そのため、敢えてこの「準備フェーズ」段階にて貴社独自でプロジェクトマネージメント計画書(PMP)を上記の提案依頼書(RFP)作成直後のタイミングでドラフト(案)として作成し、PMP自体に慣れておく必要があります。
「準備フェーズ」の段階では、このプロジェクトマネージメント計画書(PMP)はドラフトレベルで全く問題ありません。こちらをもとに、その後のベンダーからの提案回答等も参考にしながら貴社の方針に沿ってブラッシュアップし、最終的には貴社の基幹システムの再構築をご支援していただけるベンダーとも一緒に内容を詰められれば問題ありません。あくまでも、貴社主体で作成し、それを支援ベンダーと一緒に共有・理解しながら、これをベースにプロジェクトを進めて行くということが重要です。

以上、初回のコラムから長くなりましたが、この「準備フェーズ」の重要性がお分かりいただけましたでしょうか。

では、「ステップ2」以降は、次のコラムでの解説とさせていただきます。

執筆者H.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門勤務。米国への社費留学にて、コンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はIT顧問として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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