【IT分野での2025年問題の本質:step3】提案候補ベンダー選定への提案依頼書(RFP)の作成

システム

2020年04月03日(金)掲載

RFPがシステム導入に利用される背景

RFPがよく利用されるようになった背景としては、システム導入の環境の変化があります。
1990年代前半までのメインフレーム(汎用大型コンピュータのこと)を中心に据えた基幹業務系システムやシンプルな分散システムによって構成されていた環境下では、ベンダーの提案に全面的に従い、 同業他社の動向を踏まえた上でIT利用に踏み切っても全く問題はありませんでした。
しかし、1990年代後半からはオープン化の浸透により、IT利用に様々な選択肢が考えられるようになってきました。よって企業サイドでは、IT、つまりシステムの実現手段を「選ぶ」作業が求められるようになってきたのです。

しかも、ITでまかなうべき業務の領域が飛躍的に拡大し、かつ、そのIT戦略はビジネス戦略とも深い結び付きを持つようになってきています。更にシステムの多くがパッケージ化され、「業務プロセスをシステムに合わせる」というようなシステム構築形態が増えてきたことも、企業の業務システムを検討する上での流れが変わってきた背景でもあります。つまり、自社のIT部門メンバーだけではシステム構築が不可能となり、システム構築を支援して貰えるITベンダーやパッケージベンダーを選定する必要性がでてきたのです。
よって、これらを的確に選定するための判断資料として、RFPが利用されるようになってきたという背景があります。

RFPとは、どのようなドキュメントなのか?

「ステップ1」の解説でRFPについて少しふれましたが、ステップ2のタスクが終わるのと前後して、やらなければならないタスクがこの提案依頼書 (RFP: Request for Proposal)の作成です。ステップ2までの成果物をベースにこのRFPは作成出来るのですが、未だ一度もRFPを作成したことの無い方であれば、RFPのイメージが良く分からないかもしれません。
そこで、RFPの重要性を解説する前に、ここでもう少しRFPについて補足しておきましょう。
RFPには大きく分けて、以下の二つのパターンがあります。

・あらかじめ導入よりパッケージや実現予算案がきまっており、その実現方法、費用感を提案して貰うパターン
・再構築対象範囲、課題、スケジュール、概算費用感程度しか決まっておらず、解決策や実現パッケージ等も踏まえて全て提案して貰うパターン

上記の二つのパターンの特徴やメリット・デメリット等を表に纏めると以下のようになります。

表1 代表的なRFPパターン比較(例)

図:筆者作成

そして、上記の表のいずれにパターンにしろ、RFPは以下の観点から必要となります。

・各種プロジェクトの要件、狙いをベンダーに文書で示すことにより、曖昧さを排除する。 
・ベンダーからの文書及びプレゼンテーション等での回答により、ベンダーのプロジェクトに対しての理解内容や支援内容を的確に把握することができる(これにより、プロジェクト参画メンバーのスキルの把握も可能)。
・依頼企業側にとって、RFP作成過程の中で自社の要件を整理し、確認することができる。
・ベンダーに対しては、“競争入札”と言う意識を与え、また、企業の経営トップやエンドユーザに対しては、システム化方式選択の妥当性の表明・確認にもつながる(選択・評価の過程で経営トップやエンドユーザの評価も配慮すれば、より効果的)。

RFPの重要性及び活用のポイント

RFPとはどのようなドキュメントかということついてはご理解いただけたかと思いますが、実は、このRFPは基幹システムの再構築に必要なパッケージの選定というよりも、再構築を支援してくれるベンダー選定において特に重要なのです。
よって、個人的には、このRFPは「パッケージの選定」と言うよりも、再構築作業自体を「支援してくれるベンダーの選定」がメインになると考えます。それがパッケージベンダーであれ、自社や他社のパッケージを担ぐITベンダーであれ同様です。

そして、このRFPを上手く活用すれば、次のような観点から貴社の基幹システム再構築プロジェクトにおいて、最適なベンダー選定が実現できるのです。
 
基幹システムの再構築におけるベンダー選定の考え方として、ベンダーが担ぐパッケージの知識や導入への技術力が当然あげられ、それをこのRFPへの回答で評価することはもちろん可能です。しかし、もっと重要なことが、このRFPに対してのベンダー回答(資料説明だけでなく、提案プレゼン等も含め)から判断することができるのです。私はこれをベンダーの「提案力」と表現しています。

企業の生死に関わる重要な基幹システム導入プロジェクトを一緒に担って推進支援してくれるベンダーとして、この「提案力」が非常に重要なのです。そして、多数の導入・構築経験があるベンダーや、そのベンダーの優秀なパッケージ導入支援メンバーであれば、この「提案力」も有しています。

もし、企業側がパッケージの機能面や課題解決で悩んだ場合でも、そのようなベンダーであれば、パッケージの機能を最大限活用出来るような良い提案をしてくれて、色々なパッケージ導入の域を超えるシステム面のアドバイスもしてくれるケースがあります。よって、このベンダーの「提案力」を評価するネタとしても、RFPは重要なのです。

これに関しては、更にこの後のステップでも解説しますが、この「提案力」もふくめたベンダーの選定を意識して、RFPを作成されては如何でしょうか。

RFPの目次やパターンは、昨今ネット上でも良く出ていますが、表面的なRFP資料では、上記のような重要な観点から貴社に最適な支援ベンダーを選ぶことは出来ないでしょう。支援ベンダーやパッケージの選定自体も結構大変な作業です。
もし、最適なベンダーを選ぶことができれば、そのベンダーが担ぐ推奨パッケージも安心して利用することが出来るでしょう。よって、私は「パッケージ選定」ありきでのRFPでなく、「ベンダー選定」を主体としたRFPを推奨する次第です。

但し、唯一の例外があります。それは、貴社が導入しようとするパッケージについてよく知っているIT技術者が貴社内部におり、ベンダーの支援無しに独自に導入できるケースです。しかし 、通常のケースでは、IT技術の進歩が早い昨今、パッケージベンダーやパッケージ導入を専門にサポートしているベンダーに頼った方が、全て自前でやるよりも、再構築プロジェクトの成功率は高くなるといえるでしょう。

尚、実は、ベンダー選定時に、更にもうひとつ重要な観点があります。これは「再構築プロジェクト」の成功に向けて非常に重要なポイントなのですが、残念ながらRFPのみからではなかなか判断しづらい観点です。

こちらについては長くなりますので、次のコラムの「ステップ4:パッケージ自体よりも重要な再構築支援ベンダーの選定」もしくは、「ステップ5:ベンダー及びパッケージ選定プロセスのポイント」で解説するようにします。

ライターH.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門に勤務。米国への社費留学にてコンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はIT顧問として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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