システム選定について|提案候補ベンダー選定への提案依頼書(RFP)の作成、課題は?

システム

2020年04月03日(金)掲載

今までのコラムでは、システム導入の重要性や日本企業における課題を解説してきました。まだ読んでいらっしゃらない方は、以下のリンクよりご覧ください。システムを変革するにあたって、必要なことをプロセス順に解説しています。

今回のコラムでは、システム導入の目的が明確になった企業様向けに、システム選定時の注意点やRFPについて解説していきます。

そもそも、RFP(提案依頼書)とは?

RFPとは、提案依頼書のことです。システムを自社に導入するにあたって、他の受託系の企業の開発を依頼する場合などに、作成します。すなわち、自社課題をわかりやすく記した上で、ベンダーにどんな提案が欲しいのかを示したものになります。
プロジェクトを起こしてシステムを導入する場合、RFPの作成は必須です。

RFPの目的

●提案のズレをなくす

前情報なしにITベンダーに依頼した場合、自社が求める質の提案がもらえる可能性は0に近いです。予め、自社の課題をベンダーに伝え、提案のズレをなくすことで、余分なコストをカットできます。

●ベンダー選定期間が短くなる

RFPの作成により、ITベンダーの提案の質が上がり、より的を射たものになります粒度の高い提案書は具体性があります。そうすると、自社も即決しやすくなり、結果的に選定期間の短縮に繋がります。

●トラブルを避けることができる

RFPという文書に残しておくことで、対社外だけではなく対社内においても、ログとして残ります。このため、プロジェクト開始後のトラブルなども減らすことができるでしょう。企業によっては、RFPを発注書のように認識している場合もあります。

RFPを作らないことによるリスク

RFPを作らないと、

✔社内の合意が得られにくい
✔ベンダーに自社の課題が伝わらない
✔ベンダー選定に時間がかかり正解を見いだせない

などのリスクがあります。これらのリスクを回避するためにもRFPを作成する意味は有るのです。

POINT

・RFPとは、提案依頼書のことであり、システムを自社に導入するにあたって、受託開発企業のために発注元が作成する。
・RFPの目的としては、ベンダーの提案の質を上げたり、選定の期間を短くしたりするところにある。
・作成しないことによるデメリットも多いため、作成するのがおすすめである。

RFPがシステム導入に利用される背景

RFPがよく利用されるようになった背景としては、システム導入の環境の変化があります。
1990年代前半までのメインフレーム(汎用大型コンピュータのこと)を中心に据えた基幹業務系システムやシンプルな分散システムによって構成されていた環境下では、ベンダーの提案に全面的に従い、 同業他社の動向を踏まえた上でIT利用に踏み切っても全く問題はありませんでした。
しかし、1990年代後半からはオープン化の浸透により、IT利用に様々な選択肢が考えられるようになってきました。よって企業サイドでは、IT、つまりシステムの実現手段を「選ぶ」作業が求められるようになってきたのです。

しかも、ITでまかなうべき業務の領域が飛躍的に拡大し、かつ、そのIT戦略はビジネス戦略とも深い結び付きを持つようになってきています。更にシステムの多くがパッケージ化され、「業務プロセスをシステムに合わせる」というようなシステム構築形態が増えてきたことも、企業の業務システムを検討する上での流れが変わってきた背景でもあります。
つまり、自社のIT部門メンバーだけではシステム構築が不可能となり、システム構築を支援して貰えるITベンダーやパッケージベンダーを選定する必要性がでてきたのです。
よって、これらを的確に選定するための判断資料として、RFPが利用されるようになってきたという背景があります。

POINT

・情報のオープン化により、システムの実現手段を「選ぶ」作業が求められるようになった。
・自社の業務システムにあった、ベンダーを選定することが大事である。

RFPとは、どのようなドキュメントなのか?作成の仕方について

「ステップ1」の解説でRFPについて少しふれましたが、ステップ2のタスクが終わるのと前後して、やらなければならないタスクがこの提案依頼書 (RFP: Request for Proposal)の作成です。ステップ2までの成果物をベースにこのRFPは作成出来るのですが、未だ一度もRFPを作成したことの無い方であれば、RFPのイメージが良く分からないかもしれません。
そこで、RFPの重要性を解説する前に、ここでもう少しRFPについて補足しておきましょう。
RFPには大きく分けて、以下の二つのパターンがあります。

・あらかじめ導入よりパッケージや実現予算案がきまっており、その実現方法、費用感を提案して貰うパターン

・再構築対象範囲、課題、スケジュール、概算費用感程度しか決まっておらず、解決策や実現パッケージ等も踏まえて全て提案して貰うパターン

上記の二つのパターンの特徴やメリット・デメリット等を表に纏めると以下のようになります。

表1 代表的なRFPパターン比較(例)

図:筆者作成

そして、上記の表のいずれにパターンにしろ、RFPは以下の観点から必要となります。

・各種プロジェクトの要件、狙いをベンダーに文書で示すことにより、曖昧さを排除する。 

・ベンダーからの文書及びプレゼンテーション等での回答により、ベンダーのプロジェクトに対しての理解内容や支援内容を的確に把握することができる(これにより、プロジェクト参画メンバーのスキルの把握も可能)。

・依頼企業側にとって、RFP作成過程の中で自社の要件を整理し、確認することができる。

・ベンダーに対しては、“競争入札”と言う意識を与え、また、企業の経営トップやエンドユーザに対しては、システム化方式選択の妥当性の表明・確認にもつながる(選択・評価の過程で経営トップやエンドユーザの評価も配慮すれば、より効果的)。

POINT

・RFPを作成するにあたって、自社の狙いを明確に示す。また、ベンダーのプロジェクトに対する理解度、支援内容を正確に把握する。

RFPの重要性及び活用のポイント

RFPとはどのようなドキュメントかということついてはご理解いただけたかと思いますが、実は、このRFPは基幹システムの再構築に必要なパッケージの選定というよりも、再構築を支援してくれるベンダー選定において特に重要なのです。
よって、個人的には、このRFPは「パッケージの選定」と言うよりも、再構築作業自体を「支援してくれるベンダーの選定」がメインになると考えます。それがパッケージベンダーであれ、自社や他社のパッケージを担ぐITベンダーであれ同様です。

そして、このRFPを上手く活用すれば、次のような観点から貴社の基幹システム再構築プロジェクトにおいて、最適なベンダー選定が実現できるのです。
 
基幹システムの再構築におけるベンダー選定の考え方として、ベンダーが担ぐパッケージの知識や導入への技術力が当然あげられ、それをこのRFPへの回答で評価することはもちろん可能です。しかし、もっと重要なことが、このRFPに対してのベンダー回答(資料説明だけでなく、提案プレゼン等も含め)から判断することができるのです。私はこれをベンダーの「提案力」と表現しています。

企業の生死に関わる重要な基幹システム導入プロジェクトを一緒に担って推進支援してくれるベンダーとして、この「提案力」が非常に重要なのです。そして、多数の導入・構築経験があるベンダーや、そのベンダーの優秀なパッケージ導入支援メンバーであれば、この「提案力」も有しています。

もし、企業側がパッケージの機能面や課題解決で悩んだ場合でも、そのようなベンダーであれば、パッケージの機能を最大限活用出来るような良い提案をしてくれて、色々なパッケージ導入の域を超えるシステム面のアドバイスもしてくれるケースがあります。よって、このベンダーの「提案力」を評価するネタとしても、RFPは重要なのです。

これに関しては、更にこの後のステップでも解説しますが、この「提案力」もふくめたベンダーの選定を意識して、RFPを作成されては如何でしょうか。

RFPの目次やパターンは、昨今ネット上でも良く出ていますが、表面的なRFP資料では、上記のような重要な観点から貴社に最適な支援ベンダーを選ぶことは出来ないでしょう。支援ベンダーやパッケージの選定自体も結構大変な作業です。
もし、最適なベンダーを選ぶことができれば、そのベンダーが担ぐ推奨パッケージも安心して利用することが出来るでしょう。よって、私は「パッケージ選定」ありきでのRFPでなく、「ベンダー選定」を主体としたRFPを推奨する次第です。

但し、唯一の例外があります。それは、貴社が導入しようとするパッケージについてよく知っているIT技術者が貴社内部におり、ベンダーの支援無しに独自に導入できるケースです。しかし 、通常のケースでは、IT技術の進歩が早い昨今、パッケージベンダーやパッケージ導入を専門にサポートしているベンダーに頼った方が、全て自前でやるよりも、再構築プロジェクトの成功率は高くなるといえるでしょう。

尚、実は、ベンダー選定時に、更にもうひとつ重要な観点があります。これは「再構築プロジェクト」の成功に向けて非常に重要なポイントなのですが、残念ながらRFPのみからではなかなか判断しづらい観点です。

こちらについては長くなりますので、次のコラムの「ステップ4:パッケージ自体よりも重要な再構築支援ベンダーの選定」もしくは、「ステップ5:ベンダー及びパッケージ選定プロセスのポイント」で解説するようにします。

POINT

・RFPはベンダーの「提案力」、つまりベンダー回答(資料説明だけでなく、提案プレゼン等も含め)を判断するために活用する。
・「提案力」のあるベンダーは実績はもちろん、パッケージの機能を最大限活用出来るような良い提案をしてくれて、導入の域を超えるシステム面のアドバイスもしてもらえる。

ベンダーに依頼する際は、ベンダーコントロールの存在も

ベンダーに依頼する際、自社とベンダーの二社でプロジェクトを遂行すると、自社の売り上げを上げたい思いと、ベンダーのベンダー会社の売り上げを上げたい思いで、交錯してしまう場合があります。

例えば、プロジェクトに余分なシステム機能をベンダーから提案された場合、発注元の企業はそれに気づけるでしょうか。ベンダーにも営業がおり、IT知識の薄い発注元は、営業文句を本当に適切な提案なのか判断できない場合もあります。本来このようなベンダーは悪質なので、発注しないべきであり、そのためにRFPを活用するべきです。

そのためにはRFPの作成、プロジェクトのリーダー設定が重要です。

では、どういった人材を用意すればいいのでしょうか。選択肢は様々あります。
受託開発企業の中途人材を自社で採用し担当者にアサインする、または、IT知識のある経営プロ人材・コンサルティング会社に依頼するなどです。おすすめなのは、経営プロ人材でしょう。筆者もHiPro Bizというサービスに経営プロ人材として登録しています。

経営プロ人材は、自社の課題を実働型で支援する力強い存在です。ベンダーを入れて大規模プロジェクトを始動する際は、自社のIT全般の課題を見てもらうという意味も込めて、プロ人材を依頼してみると良いかもしれません。

まとめ

本コラムのまとめを行います。

まず、ベンダーを決めるタイミングで、RFPを作成するようにしましょう。そうすることで関係者各位の合意をとりやすくなり、ベンダーとのコミュニケーションの質も上がります。

また、そもそも、昨今何故多くの企業がベンダーに依頼するのかも考えておきましょう。それは、1990年代後半からはオープン化の浸透により、IT利用に様々な選択肢が考えられるようになってきたことです。企業サイドで、ITやシステムの実現手段を「選ぶ」ようになっており、自社で行うことをなくしてきています。このことは、大手企業のIT部門の分社化などでも言えるでしょう。IT部門は切り離され、受託開発企業になっていく変遷もあります。
RFPは狙いを定めたものにするようにし、ベンダーに何をしてほしいかを明確にしめすことが大事です。

最後になりますが、ベンダー選定時は、第三者目線もおすすめです。ぜひ検討してみてください。

執筆者H.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門に勤務。米国への社費留学にてコンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はITプロ人材として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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