大企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するには~課題と導入ステップの紹介

新規事業

2019年07月31日(水)掲載

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デジタルトランスフォーメーション(DX)とは様々な定義や諸説がありますが、テクノロジーの変化が与えた影響度を考慮し、ここでは以下の4点を取り上げます。

2010年前後から急速に発展した4つの技術。
① iPhoneの発売を契機として、PCに代わる圧倒的シェアを築いた「モバイル」技術
② AWS、AZUREに代表される「クラウド」技術
③「モバイル」と「クラウド」の恩恵を最も受けて伸長した「ソーシャル」技術
④ 結果として蓄積された大量のデータと、その解析技術の発展による「ビッグデータ・アナリティクス」技術

これらの4つの技術が急速に世の中を変えたのは間違いのないことです。4つの技術を駆使して新しい価値を持つ製品やサービス、ビジネスモデルを創出することが、現時点でのデジタルトランスフォーメーション(DX)と定義できると考えます。

そして結果として、交通面ではUberに代表されるように新興企業が既存の市場を「ディスラプション(破壊)」するか、大企業が市場を奪われないように先手を打つ現象も起こっています。

日本の大企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の現状

4つの技術をベースに、「今、世の中を変えるのでは?」と注目されている技術をあげてみると、AI、IoT、ブロックチェーン(分散型台帳技術)、VR (仮想現実)、AR(拡張現実)などが次々と話題になっていますが、単に新製品、新サービスや自社業務にこれらの技術(以下、デジタル技術と総称)を取り入れることがDXなのか。それは、そんなに簡単なことなのか。

結論から言うと、技術的には、デジタル技術を取り入れることは比較的に簡単なことです。しかし、現実には、日本の大企業では、試しに取り入れてみることさえ時間がかかるのが現状です。

大企業のみなさんとお話ししていると、「ディスラプション」を目指しているとは思えない、新規事業やイノベーションを「産み出すことためのリサーチや開発」という取り組みに、社長直下で実施されている多さに驚きます。

年単位ではほぼ成果が出ていない事業や開発、そのアイデアはうちも考えていたのになぁと言った声を何度となく聞きます。とにかく「考えるばかりで、チャレンジ(投資)しない・できない」「アイデアはあるけど意思決定ができない。時間がかかる」「売上100億円、利益10%以上が出る計画にして来い」「大きなビジネスを作るのだから、それなりに大きい投資案件にして来い」「前例がない」など、耳の痛い話ですが、既存ビジネスの延長でしか捉えられていないのです。

そして、分からないものに責任を取りたくない。さらに言うと、「新しい技術は何ができて、いくら必要なのか」さえ理解できていないことが、なんと多いことでしょう。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進ポイント

では、どうすれば進めることができるのか?時間軸で見てみます。

第1ステップ:理解するために試す
従来型のIT投資の経験から、一度始めると数年にわたり、数億円に始まり、最終的に数十億円に至る従来型のIT投資のイメージが強過ぎることが、意志決定を遅らせる大きな原因になっています。

実は、DX投資は「小さく始めることができること」があまり浸透していません。DX技術はサブスクリプション契約(月額課金のサービス)になっていることが多く、時間単位や日単位で始めることができ、ジャンルによっては動くものを作ることも簡単になってきています。そのため、数週間から2~3ヶ月、数万円から数百万円の投資で試すことができるため、ハードルは下がっていると言えるでしょう。

百聞は一見に如かず。百の解説を聞いて理解するより、ちょっとした投資(POC)で、「体験して理解する!」方が早いはずです。

第2ステップ:どんどん失敗する
新技術を、自社の製品・サービス・業務プロセスに適応して、新しいモノを産み出すために、失敗を恐れずに、様々なアイデアを小さく、たくさん始めること。言い換えれば、失敗は致命傷ではないのです。多くの失敗経験を積み重ねることにより、社内には、「DX技術のノウハウ、アイデア」、「目の前で動いている新しいモノ」、「経験したヒト」などが蓄積されて行きます。これこそが無形の資産であり、明日に繋がる財産。「ゼロから1が産まれる可能性の体験機会」を意図的に作ることが重要なのです。

第3ステップ:1→10に成長させる
実際に動く新製品、サービス、業務プロセスが蓄積されてきたら、そこからビジネスとして大きく成長しそうなもの、コスト削減のために全社展開できそうなものを取捨選択して、軌道に乗せるフェーズに入る。ここで初めて「それなりの投資」が必要になります。

実はこのフェーズも日本の大企業は苦手。デジタル化・効率化・共通化・組織化・最適化などのステップを、すべて自社で進めようとする傾向があります。例えば、デバイス技術はあるが消費者向けのサービスをしたことがないとか、販売網はあるがデバイスを持っていないとか。それなのに、自社デバイスでしか使えないモバイルアプリを開発したり、デバイスを開発したりと得意でないことに時間と手間のかかることを選択し、結果、止まってしまう。つまり「他社と組むのが苦手」なのです。

産み出した新しい価値で市場を変える、ディスラプション(破壊)するにしても、1→10への拡大へスピード感を重視するために、既存の製品、サービスを組み入れることはよくある選択肢として視野に入れておくべきです。

DXにおける「デジタル」の定義は、複数の技術革新が、つながり(コネクティビティ)の向上という意味で統合されていくことが、よく引用されます。時間もコストも従来のIT投資とは違って小さく始められるのですから、デジタルそしてビジネス化するときには、他社とうまく組むことでレバレッジを効かせることができるのがDXの特徴とも言えます。

これからのデジタルトランスフォーメーション(DX)

さて、これは大変な機会損失をしているぞ!と危機感を抱いていただけたでしょうか?それとも、うちは違うな!と他人事のように思えたでしょうか?

今、日本の大企業のほとんどが、GAFA(Google、AMAZOM、Facebook、Apple)に代表される新しい大企業や、UBERに代表されるユニコーン企業と同じ次元、同じレベルに、既存の組織、プロセス、企業文化、風土までを変革する必要が求められています。そうすることで得られる成果の1つがデジタルトランスフォーメーション(DX)なのではないか。つまり、日本の大企業がDXを実現するには、企業文化や風土までに至る「ヒト」の変革が求められていると言えます。

日本では労働人口不足も前提に考える必要があり、「特に人口の少ないデジタルネイティブ世代(物心付いた頃にスマホがあった世代)」をどのように、積極的に、採用、登用、活躍させられるかが、重要になってきている。しかし、これは単なる世代交代ではありません。なぜなら、世代人口が少ないから。

これを補うためには、デジタル世代と一緒になって共同作業ができる既存の経営者、管理職が求められています。つまり、経営者、管理職のDX化が必要とされており、世代を超えた共同作業のつながりの向上へ邁進し、製品、サービス、業務プロセスを作り出して行ける企業が、これからのDX実現を果たし、市場を勝ち抜いて行くのでしょう。




※記事は執筆者個人の見解であり、パーソルキャリア株式会社の公式見解を示すものではありません。

ライター西村 大輔氏(i-common登録顧問)

アクセンチュア株式会社や株式会社日立コンサルティング、日本アイ・ビー・エム株式会社にて要職を歴任。2017年に株式会社ビジネスエコシステムラボを設立し独立。大規模システム開発やAI・IoTビジネスの立ち上げ経験を元に、新規事業の立上やデジタルトランスフォーメーションの推進をテーマに活躍。

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