従業員エンゲージメントを高める6つのステップ~一連の方法をご紹介~

人事

2019年08月23日(金)掲載

キーワード:

最近は、従業員とエンゲージメントを組み合わせた言葉として、従業員エンゲージメントという言葉が使われています。エンゲージメントとは、英語のengageという動詞から由来する名詞で、ある行為に参加させる、関心を引く、魅了させる、歯車や接合部をかみ合わせる、というような意味があります。

「従業員が自分の働く会社に参加し、関心を持ち、お互いがかみ合うように動くことで得られる達成感・充実感に魅了されていること」、それが従業員エンゲージメントと言えます。

「従業員エンゲージメントが高くなると企業経営にプラスの影響をもたらす」とも言われており、多くの企業が「従業員エンゲージメントを高めるための取り組み」を積極的に行っています。

また、従業員エンゲージメントを高める取り組みは、単に福利厚生や給与・報酬制度の充実だけに限定されるものではありません。より多くの従業員に、この会社で働きたい、この会社に関心をもち、積極的にその活動に参加したいと継続的に感じてもらうなど、会社と従業員全員の一体感を高めるための施策や活動全般を意味しています。

ではなぜ今、従業員エンゲージメントが注目されているのか

従業員エンゲージメントの重要性を示す一つの例があります。アメリカの調査会社ギャラップが世界に広がる主要な19の産業において、270以上の企業や組織で働く約650万人を対象として2013年以降の約3年間の調査を実施し、2017年に発表しました(注1)。

その結果、従業員エンゲージメント・レベルが高いと思われる従業員は、全体の15%だけでした(この調査では、日本のそうした従業員の割合は6%で、139カ国中132位と最下位クラス)。そして、従業員エンゲージメント・レベルと従業員のパフォーマンス・レベルには、強い相関関係があることも判明しています。

エンゲージメント・レベルの高い従業員は、エンゲージメント・レベルが低い従業員よりも、明らかに熱意にあふれ、自発的、積極的に行動し、高いパフォーマス・レベルで評価されていました。指示を受けなくとも情熱を持って自ら尽力し、自分と会社との間に強い繋がりを感じていました。こうした従業員が、イノベーションの原動力となり、会社のビジネスを前進させていたのです。

さらに、エンゲージメント・レベルの低い従業員は、職務や給与・報酬などにおいて不満が多いだけでなく、無気力で、会社の業務を停滞させたり、他の従業員の障害となっていました。こうした従業員は、管理者の時間を奪い、指示に従わないだけに留まらず、顧客を失わせ、他の社員のモチベーションやパフォーマンスを低下させる大きな原因の一つになっていました。

かなり多数の従業員が会社の業務やイノベーションの停滞の原因にもなっているとすれば、こうした従業員のエンゲージメント・レベルを向上させることは、ビジネスのさらなる強化、継続的な成長や長期的な拡大につながるため、ビジネスの戦略としても重要であることを意味しています。

また、より良い従業員エンゲージメントは、優秀な人材の採用・確保、従業員の心身の健康レベルや生産性の向上、組織の変革力や収益力の向上などのメリットをもたらすとも考えられます。

つまり、より多くの従業員が会社の活動に心身ともに積極的、自発的に深く関り、参加し、その度合いが深ければ深いほど、会社のビジネスが成功する可能性が高まる、ということです。 なぜなら、それぞれの従業員が会社の目的やミッション、価値観、カルチャーに強い共感を持っているため、会社のビジネスが成功することが、従業員自身の成功や達成感につながっているからです。

従業員エンゲージメントを高めるには

従業員エンゲージメントを高めるためには、どこから始めたら良いでしょうか。

多くの企業が従業員エンゲージメント・サーベイを行う会社のサーベイを導入し、エンゲージメント・レベルの調査・測定をしていますが、それだけではエンゲージメント・レベルを高められません。

従業員エンゲージメント・レベルの高め方は1つではありません。それぞれの会社や組織に適した方法をよく検討すべきでしょう。1つの例として、以下のような一連の方法が挙げられます。

1. 会社のマネージメントと従業員が一緒に従業員エンゲージメントを高める活動を実施するため、マネージメントが協力してくれる従業員を募り、そのための活動委員会などを合同で設置します。

2.エンゲージメント・レベルとパフォーマンス・レベルが高く、今後も継続して働いて欲しい、他の従業員もこうであってほしいと思われる実際の従業員を、職種・職位毎にモデル・ケースとして何名かピックアップします。

3.それらの従業員を、以下のような要素において情報収集・分析します。個人情報の取扱いに注意しながら、既に人事部にある情報を活用するだけでなく、個別のインタビューやアンケートで協力してもらっても良いでしょう。

● 職務内容
● 給与・報酬レベル
● 職務経歴(社外・社内)
● スキル
● 過去3年分のパフォーマンス(人事評価の内容・結果)
● 自分のパフォーマンスを向上・維持するため、何を考え、どんな行動をしているか
● この会社・組織全体のパフォーマンスや業績を最大化するため、誰と何を話し、どんな行動をしているか
● この会社・組織に感じる愛着、魅力は何か(給与・報酬を除く)、またその逆の要素は何か
● この会社・組織で働きたいモチベーションは何か(給与・報酬を除く)、また働き甲斐を失わせる要素は何か

4.上記の情報収集・分析の結果を整理し、さらに上記の活動委員会が従業員に期待する要素を加えて、望まれる従業員像である「ベスト・タレント・モデル」を職種・職位毎に構成します。ただし、あまりに画一的で同じような従業員像ばかりにならないよう、そのモデルの構成時にはある程度の多様性をもたらすようにするとよいでしょう。

5.ベスト・タレント・モデルの基準に近い従業員を増やしていくため、会社における以下のような点を必要に応じて見直して、再構築します。全てに対応するのは難しいため、ここではいくつかの点を選択したり、複数年にわたる長期的な対応をしたりする必要があるかもしれません。

● 会社の共有理念・共有価値
● 事業計画
● マネージメント・メンバーとその選定方法
● 会社と従業員の一体化・結束力を高めるための様々な活動
● 研修制度
● 採用方針・手法
● 評価/査定基準・方法
● 就業規則
● 給与・報酬制度
● 役職・職務等級制度
● 柔軟な働き方、テレワークなどの方法・導入
● ダイバーシティ
● シニア雇用制度
● 退職金制度
● 福利厚生制度

6.上記の活動を継続しながら、毎年または数年に一度、従業員エンゲージメント・サーベイを実施し、エンゲージメント・レベルを測定します。エンゲージメント・サーベイ会社のサーベイを導入する 、または会社や組織に適したエンゲージメント・サーベイを独自に開発してもよいでしょう。

その結果を活動委員会が精査し、整理してマネージメントと従業員にも共有します。その結果に基づき、今後の活動の方針や内容などを調整していきます。

上記はあくまで一例ですが、特に重要なのは、会社と従業員の一体化や結束力を高める活動において、マネージメント側の考えや理想などを従業員に押し付け過ぎず、会社と従業員が一緒に考え行動し、長期的にその活動を継続していくことです。また、従業員エンゲージメントにどの程度の人員、時間、予算等を割り当てるのかも検討すべきでしょう。

従業員エンゲージメントの向上を実現する人事のあるべき姿

マネージメント と従業員の結束を高め、会社の業績を好転させたい。全員が目標や方向性を同じくし一緒に成長したい。優秀な人材を採用し、引き止めたい。

様々な期待と目的を持って企業経営をされている方々、経営陣の方々は多くおられるでしょう。従業員エンゲージメントを高める活動は、それらを達成していくための重要な取り組みの一つであり、そのために組織の隅々までその活動を血液のように循環させていく、ということでもあります。

そのためには、心臓部となる人たちがしっかりと必要な役割を果たし、継続的に良質な血液を送り続け、組織をより良く活性化していかなければなりません。また、従業員エンゲージメント活動は、ただ一時のみ実施するのではなく、長期的な視野でその活動を調整し、継続していくことが重要です。

従来の会社の人事部は、平均的に給与・報酬計算、採用、人材開発、研修、制度・規程の作成や管理などが主な職務でしたが、最近は従業員エンゲージメント・レベルを高め、ひいては会社組織の一体感を高める改革やそのカルチャーの変革、働き方改革などを支援し、会社の継続的な成長を促すカルチャーの醸成をリードする役割が求められています。

そのようなリーダーシップを取れるよう、まずは人事部の変革やその機能強化が必要、というケースも多くみられます。

会社や組織を継続的に成長させるための重要なビジネス戦略の一つとして、従業員エンゲージメント・レベルの向上、また人事部の機能強化などをご検討されてはいかがでしょうか。


注1)State of the Global Workplace (2017) (https://www.gallup.com/file/workplace/257552/State_Global_Workplace.pdf)


ライター執筆者:アルボーレ株式会社 代表取締役 吉野 匡毅氏

外資系・日系グローバル企業等で23年以上の人事実務・人事担当取締役等を経験。日英2ヶ国語による組織変革・人事コンサルティングを専門とし、コンサルティング会社や多様な業種・規模の国内外企業において人事担当顧問、グローバル化、人事制度・機能全般改善、評価・給与報酬制度改革などを実施。

関連コラム