データ活用をできない理由は?課題とうまく活用する例を紹介

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2019年06月06日(木)掲載

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 この数年で多くの企業がデータ活用に取り組み始めました。
きっかけとなったのは、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとするデジタル活用が得意な企業の台頭といえるでしょう。

  GAFAの台頭を語る際によく比較されるのは、世界における時価総額ランキングの変化です。30年前と比較すると、50位以内に入っている日本企業は、トヨタ自動車しかありません。そのほかの50位の企業の特徴を見ると、多大なデータを持つ大手ITコングロマリット、莫大な市場でビジネスができる中国企業、デジタル化に成功した大手企業の3種類に分類されます。

  中でも、IT企業は一人当たりの生産性が高いビジネスです。ゼネラル・モーターズは、21万5千人の従業員を雇用していますが時価総額は26万ドル、フェイスブックは1万7千人の従業員雇用で現在の時価総額で計算すると約2724万ドル。約100倍の価値の差を生み出しているのです。

  GAFAがスタートアップしたのは2000年初頭であることから、データ活用の動きにもう15年ほど差がついています。ただ、近年多くの日本企業が、価値の差を生み出す源泉が「データを集め、データを独占すること」と気付き始めたため、データ活用に本気になり始めました。

なぜデータ活用の重要性が増しているか

 以前にも増して、多数の日本企業がデータ活用に積極的に取り組むのは、内部要因ではなく、たいてい外部環境要因が多くあります。直接的な要因は、GAFAのような大規模プラットフォーマーが他の産業に参入し始めたからです。

 特に、GAFAに近い、エンターテイメント、小売、金融業は大規模プラットフォーマーにより、顧客を奪われ始めています。GAFAの特徴は、使いやすくて便利なサービスを「無料」(あるいは、インセンティブを支払って)で提供することで、急速に顧客のデータを集めることです。既存産業の企業は、売上や利益が上がっていないことから一見すると彼らの事業がうまくいっていないように見えますが、プラットフォーマーは着々と顧客のデータを入手し、蓄積しています。蓄積している段階では、相手が何を考えているかわからないのですが、活用し始めたタイミングで、プラットフォーマーの台頭に危機感を抱き、データ活用に積極的に乗り出したと考えられます。

 たとえば、2019年、確実に日本で流行るのは、MaaS(Mobility as a Service)という様々な移動手段がサービスとして利用できるものや、キャッシュレス決済サービスだと予想されます。キャッシュレス決済サービスは、中国や欧米などの海外でビジネスになると実証できたから日本企業が躍起になって参入し始めています。このような海外事例を見ればわかりやすく、「搾取」されている業界はデータ活用の積極性を増すのですが、実際、「自分たちの業界は大丈夫だ。プラットフォーマーに『搾取』されない」と思っている会社がまだまだ多いです。

 このような背景の中でデータの活用を進める企業が増えていますが、一方で共通する3つの壁にあたるケースがよくあります。

1つ目:情報セキュリティの壁

 これまでの情報システム部や情報セキュリティ部などの考え方では、データを外に持ち出す、クラウド環境で分析するということはあり得ない、という状況でした。しかし、データへのアクセシビリティが悪いと、分析の生産性が下がります。それ以前に、外部に公開可能なデータ、公開不可ないデータ、秘匿化したうえで公開できるデータなど、カテゴリーに分ける必要があります。

 そこで重要なのは、セキュアな分析環境の構築と、情報取り扱い規定(情報取り扱いルール)の見直しです。

 それまで守りのITを行ってきたメンバーがデータをオープンにして分析を促進しようとは考えない場合もあり、一方攻めのIT活用をやりたいエンジニアや企画は、セキュリティ基準について議論できないケースもあります。その結果、妥協に妥協を重ねた体制になります。

 そのため、セキュアな分析環境の構築と情報の取扱ルールを決めることができる、攻めと守りのバランスを取った体制構築が成功できるパターンだといえます。

2つ目:内製化の壁  

 体制構築ができたとして、推進がうまくいかないパターンがあります。内製化の壁です。まず、シニア・データサイエンティストを雇うという選択肢が考えられますが、多くの企業では経営層のデータ活用に関する理解が深くないために経営層を説得できず、あきらめざるを得ません。シリコンバレーのテクノロジー企業の場合、データサイエンティストの年収の中間値は1600万円程度とストックオプションといわれています。もちろん、日本人でも同じ人材価値であれば、同程度の報酬は出ます。ただ、多くの会社ではその半分以下の報酬提示しかできず、いい人材が獲得できないという課題があります。

 次に考えられる選択肢は、社内育成です。とは言っても、データサイエンティストは一般的に数学のマスターを持っている人が多いですから、その同等のレベルを目指すのは現実的でありません。最低限、ビジネス、統計学、データ分析(ツールなど)、データベースへの理解が必要になり、そのため社内人材が活躍し始めるまで時間がかかります。3年間は投資の時期と考えるべきで、それまでは外注や専門家のフル活用を推進すべきでしょう。

3つ目:組織文化の壁

 従来型の日本企業では、組織構造は階層になっていて、上司からその上司へ報告して、上司が部下を評価し育成するものですが、果たしてその働き方や文化がどこまで必要なのかが疑問です。若くても分析能力が高いデータサイエンティストがいたならば、上司はそのスキルの高さやアウトプットを理解できないかもしれません。

 データサイエンティストがリスペクトするのは、上司ではなく、同僚であったり、後輩であったりすることもあります。価値を生み出せる人材こそ真に評価されるべきで、だれを主役にする組織文化を醸成していくかが、最も難しい課題だといえるでしょう。

まとめ

 皆様の企業はいかがでしょうか。この3つの壁を乗り越えるのがデータを活用し、新たな事業を立ち上げる最低限の条件となります。しかし、全て自社内のリソースで賄うことはたやすくありません。外部の人材を要所要所で活用し、最短ルートでこの壁を乗り越えることが今の日本企業に求められているのではないでしょうか。

ライター久米村 隼人氏(i-common登録顧問)

大手の通信教育会社やネットリサーチ会社、大手人材関連企業や新聞社で新規事業開発を担当し、企画立案から事業化・改善までの一連のプロジェクトを推進する役割を数多く担ってきた。なかでも、起業家精神とリーダーシップを活かした「顧客起点の事業」やチームと協業しての「0→1の立ち上げ」に注力。

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