アフターコロナで変わる働き方~「メンバーシップ型」から「ジョブ型」雇用への移行~

人事

2020年07月01日(水)掲載

はじめに

新型コロナウイルス感染拡大防止をきっかけに、いわゆる事務・企画系の職種を中心として在宅勤務を実行した企業は少なくないでしょう。もともと、「働き方改革」と称して勤務時間・体制のあり方を見直していた、あるいは見直すことを検討していた状況だったこともあり、外的要因によって一気に具現化したのかもしれません。今回は急遽実行したため、準備不足などを背景としたシステムや運用における課題も出てきたでしょう。しかし、そういったものはこれから解決していけばよいだけであり、何はともあれ「仕事はオフィスでしかできない」というわけではないことを多くの方々が経験できたというポジティブな面もあったとも言えます。

アフターコロナにおいては働き方が変わってきます。一定期間にわたって在宅勤務が実行されたことによって、今まで慣習的に継続されていた業務が、時間や環境の制約によって「不要な業務」であることが明確になった、あるいは、「今、本当にやるべき業務なのか?」「出社しないとできない業務なのか?」と改めて考え直すきっかけを得た企業も増えたと思います。また、在宅勤務の実施によってフレックスタイム制度の拡充や、週休3日制の検討といった勤務制度についても見直すべき要素が出てきました。

業務そのものおよび勤務制度の見直しが進むと、雇用における考え方も変わってくるでしょう。具体的には「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に変わっていくと考えられています。

「メンバーシップ型」

「メンバーシップ型」雇用とは、「人に対して仕事を割り当てる」日本で主流の雇用形態ともいえるでしょう。インターンシップ以外にはほとんど就業経験が無い新卒者を潜在的なポテンシャルを重視して社員として雇い、ジョブローテーションによって幅広い職種を体験させ、終身雇用を前提にゼネラリストを養成するのに適した仕組みです。いわゆる「就社」のイメージです。

メリットとしては、終身雇用を前提としているため雇用は安定している、企業が社員を育成することを意識しているので、長期間にわたる人材開発制度(新入社員研修、中堅社員向け研修、管理職研修、幹部研修など)のもとで育成される、勤続年数に応じて給与があがっていく(年功序列)といったがあげられます。
デメリットとして、企業の都合による引っ越しを伴う勤務地の変更・配置転換といったものを受け入れる必要があります。

「ジョブ型」

一方、「ジョブ型」雇用とは、「仕事に対して人を割り当てる」雇用形態となります。日本でもスタートアップ企業を中心に取り入れている企業も増えていますが、どちらかといえば海外企業で主流の雇用形態となります。「職務記述書(ジョブディスクリプション)」にて職務・勤務地・労働時間・報酬などを明確に定めて雇用契約を締結します。社員の年齢や勤続年数は関係なく、その人自身の実力・スキル・成果が重要視されます。「職に就く」=「就職」のイメージです。

メリットとしては、自分の能力を活かして経験やスキルで報酬を決めることができる、仕事に必要な能力を持った人材を必要なタイミングで募集するため、欠員が出た際に最適な人材を確保しやすいことです。
デメリットとしては、企業の方針転換や経済状況が変化した際に契約終了になる可能性が高い、自律的にスキルアップができなければキャリアアップが難しい、新卒者は経験がほとんど無いため仕事を得にくいといったことがあげられます。

背景に同一労働同一賃金ルールの導入

また、2020年(中小企業は2021年)から同一労働同一賃金ルールによって「同じ仕事に就いている限り、正社員・非正社員であるかは関係なく、同一の賃金を支給する」ことになりました。仕事の内容によって賃金が決定するので、業務内容に関係なく勤続年数によって給与がきまっていく「メンバーシップ型」雇用は、同一労働同一賃金ルールと相反する要素もあり、雇用制度として維持していくことが難しくなることを意味しています。さらに、既に終身雇用や年功序列の制度は崩壊しつつあるため、雇用や昇給の保障が無くなった「メンバーシップ型」雇用から「ジョブ型」雇用に移行していく可能性は高いでしょう。

「ジョブ型」雇用による働き方の変化

「ジョブ型」雇用が定着していくことによって、「キャリア形成」「複数社での勤務」「テレワーク」といった既に発生している働き方の変化がより加速していくでしょう。

自分のキャリアに応じて転職することが主流になっていきます。これは、一人一人が自身のキャリアをどう形成していきたいのかを主体的に考えるのが当たり前となることも含まれます。良くも悪くも企業がお膳立てするのではなく、キャリアは自分自身で築き上げていくものとなっていきます。

また、1社にて「週5日フルタイム」で勤務する人が一定の割合で存在する一方、複数の企業で勤務する=複(副)業を行う人も増えてきており、さらにその傾向が加速するでしょう。終身雇用の崩壊により1社に「しがみつく」必要がなくなるので、社内政治や不必要な「根回し」に画策することなく、仕事を遂行するために適切なコミュニケーションをメンバーと行う健全な職場環境が確立していくことを意味します。

成果ベースで働くことができる「ジョブ型」雇用と相性のよいテレワーク制度が定着するでしょう。場所や時間にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークには以下の3つの方法があります。
・在宅勤務:自宅にて会社に出勤しているのと同様の業務遂行をする
・モバイルワーク:オフィス外(お客様先や移動中など)に業務を遂行する
・サテライトオフィス:所属事業所以外のオフィス(シェアオフィスなど)で業務を遂行する。

企業に求められる制度改革

現在の制度では成り立たない部分があるので、企業側は制度を改革していくことになります。上述した勤務制度以外に関連しそうな制度に関する方向性をあげたいと思います。

・業務
オフィスに集まらなくても業務が遂行できるように業務プロセスの見直し、あるいは、使用するツール(紙による申請・捺印から電子申請など)の変更が必要でしょう
・テレワーク
在宅勤務だけではなく、各企業のニーズに応じたテレワーク制度を整える必要があるでしょう。これに伴ってオフィスで勤務することを前提としていた手当の改廃や、テレワークに応じて必要な手当新設の検討も考慮しましょう。
・インフラ環境
セキュリティー要件を担保しつつ、オフィス外からも必要なシステム・ファイル文書にアクセスできるようにすることで、在宅勤務などテレワークにおいても業務遂行レベルが維持できるようになります
・給与体系
「ジョブ型」雇用が基軸となるので、難易度の高い仕事をしてパフォーマンスを出している人に適切な報酬を支払う給与体系を構築することになるでしょう。外部マーケットの指標に応じた報酬金額ではないと、適切な人材が確保できなくなります。
・評価制度
「メンバーシップ型」雇用では、社員の「ふるまい」も評価軸に入っていることが多いでしょう。「ジョブ型」雇用においては、実際に「どのような成果」を出したのかによって評価が決まり、成果に伴って報酬に反映される仕組みにしないと、有能な人材が外部に流出するリスクが高くなります。
・採用
新卒一括採用から中途採用および通年採用がメインになるでしょう。採用にあたって、スキルの専門性や、どういった成果を出したのかおよびそれに対する再現性がより強く求められるでしょう。また、新卒者は一括採用からエントリー(初級)レベルのポジションへ応募するか、インターンシップなどによって職業経験を積んでから就職することが一般的になっていくでしょう。

緊急事態宣言解除後、従前と同じように一斉出社することが当たり前となることはなくなりつつあります。「週3日を在宅勤務」とすることで出勤者の比率をコロナウイルス感染拡大前の50%以下に減らすようにする企業や、テレワークで全業務を行うことにして都心にあった複数のオフィスを閉鎖した企業も出てきています。アフターコロナにおいては、今回をきっかけとして実現された「新しい日常」を良い形で継続・改善することを考えていかなければいけないでしょう。大きな変化に対応することが、企業およびビジネスパーソンの両方に求められています。

ライターM.N氏

外資系コンサルティングファームで人事コンサルタント、事業会社で人事企画マネージャーとして人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務を行っている。

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