ハッカソン・アイデアソンについて

マーケティング

2020年06月26日(金)掲載

ハッカソン・アイデアソンとは

ハッカソンとは、新しい技術を使ったモノやソフトウェア、あるいは与えられた課題、例えば社会的問題を解決する具体的なモノやソフトウェアを数日間で作るイベントのことです。
ポイントは「具体的な何かを作る」ということです。
一方、アイデアソンは新しい技術の活用法や、課題の解決などテーマはハッカソンと同じですが、実際にそれが実現可能かどうかは重要視されないことが一般的です。つまり、アイデアを生むことを重要視したイベントです。
アイデアソンの多くは数時間から長くて1日程度の期間で行われます。

この2つを組み合わせたケースも存在します。2日間の場合、1日目の半分でアイデアソンを行い、そのアイデアを残りの1.5日で実装するというようなイメージです。

アイデアソンとハッカソンの違い、は具体的であるかそうでないかのほかに、主催を企業が行うかどうかの比率が異なるという点があります。ハッカソンはその作業を通じて自らの技術力を向上させるという側面もあるため、主催を企業以外にボランティアや有志が担うことも珍しくありません。それに対しアイデアソンは、具体性や実現可能性はともかく、様々なアイデアの発見や気づきに価値を見出すことが多いため、そこに価値を見出すのが企業や行政であるのは自然でしょう。
さらにアイデアソンは具体的に作らなくてもよいことから、参加者のバラエティはハッカソンに比べて多様であることも違いにあげられます。
もう1つの大きな違いは、チューターの存在です。チューターとは本来は個別学習をさすチュートリアルでいうところの教師ですが、ハッカソンの場合はその技術や課題に関する知識を持っている人のことで、実際に作成する場合に必要なサポートを提供する役目を持ちます。アイデアソンでは資料作成のサポートのためのチューターがいる場合もあります。

ハッカソン・アイデアソンとワークショップの違い

大まかに理解するのであれば、これらはそれほどの違いがないと考えて良いと思います。もちろん、ワークショップは体験型学習をさす用語ですのでハッカソンには近いイメージがありますが、アイデアソンにもアイデアの出し方や資料の作り方、発表の方法などを学習できるという側面があるためです。ただし、学習できると述べましたが、ワークショップのように教える側が存在し、参加者に学んでもらうというものではありません。アイデアソン・ハッカソンは既にスキルや知識を持っている人が集まり、何かを生み出すところをお互いに自然に学習するようなイメージです。そのような点では異なるところもあります。

ハッカソン・アイデアソンの具体的な進め方

#アイデアソン
アイデアソンの流れは以下のようになります。もちろんそれぞれの段階で使われるツールや実施する手順などは、用語も含めて多くのバリエーションがありますので、今回はその中の一例を紹介します。
なお、各段階の進行やツールの使用法などの説明およびサポートを行う人をファシリテーターと呼ぶ場合が多いです。

1.初期グループ分け
参加者を3-6名程度のグループに分けます。グループ内ではアイスブレーキングと呼ばれる自己紹介を行うこともあります。このグループは後の個別アイデア出しやグループワーキングの際に一度解散される場合がほとんどです。
2.テーマ説明
主催者が、新しい技術の説明や解決したい課題のテーマ説明、および目標の設定を行います。ここでいう目標とは、ある技術を使用したアプリケーションのアイデアを考えるというようなものなど、多種多用です。
3.個別アイデア出し(その1)
参加者それぞれがテーマと目標に基づいたアイデアを考えます。この段階では、詳細なアイデアというよりも、どちらかというと連想ゲームに近いレベルで、「アイデアの素」とでも呼ぶようなものを数多く考えていきます。そして、アイデアを付箋に書き、テーブルに並べていきます。並べたアイデアを参加者が短い時間で説明する時間を取る場合もあります。
4.個別アイデア出し(その2)
個別アイデアだし(その1)で出たアイデアを元に、さらに新たなアイデアを考えるステップです。具体的にはテーブルの参加者は自分のアイデアの付箋を持ち、座る場所をシャッフルして別のグループに参加します。そこで別の参加者の付箋のアイデアを得ます。
5.アイデアシート作成
参加者はそれまでに得たアイデアを元に、アイデアシートやアイデアスケッチと呼ばれる、より具体的な資料を作成します。このシートにはさまざまな種類があるのでインターネットで検索してみてください。
6.アイデアシート公開
作成したアイデアシートをテーブルに並べます。そして参加者は自由にテーブルを周り、いいと思ったアイデアに印をつけていきます。
一定時間後にアイデアシートを回収し、印の多いものを選びます。そして印の多いものを作成した参加者に数分間の説明を行ってます。ここで終わるアイデアソンもあります。
7.グループワーク
印の多いアイデアシートの内容を発表資料としてさらに具体的にする場合があります。これをグループワークと呼びます。それぞれのアイデアシートを具体化したい人を募りグループを作成します。
具体的な資料はパワーポイントやWebページで作成される場合が多く、場合によってはモックアップと呼ばれる動きやイメージを表現したWebサイトを作る場合もあります。この資料やモックアップをグループごとに作成しますが、作成中にアイデアが変わってしまう場合もあります。
8.評価タイム
グループワークで作成した資料を皆の前で発表します。この時採点を行うことや主催者からの講評が行われることが多いようです。

#ハッカソン
ハッカソンの流れは以下のようなものになります。大きな流れはアイデアソンと似ています。また多くのバリエーションがありますので今回はその中の一例を紹介します。

1.初期グループ分け
アイデアソンと同様です。
2.テーマ説明
アイデアソンと同様ですが、目標がアプリケーションの作成のようなより具体的になることと、提供された技術を使うことというような制約条件が与えられることが一般的です。
3.個別アイデア出しからアイデアシート作成
アイデアソンと同様です。但しアイデアシートにはアイデアソンより具体的な内容が書かれることが多いようです。
4.アイデアシート公開
アイデアソンと同様ですが、ハッカソンの場合、投票も含めてここまでをオンラインで行い、アイデアシートが事前に公開されている場合もあります。
5.グループワーク
印の多いアイデアシートの内容を実際に作成するグループを作るのです。しかし、アイデアソンと異なり、実際に何かを作らなければならないので、グループメンバーの構成には留意する必要があります。
例えばプログラムを作成しなければならないのにエンジニアが誰もいないと困るため、ファシリテーターや主催者側で調整が必要です。逆にエンジニアが1人いれば作ることはできるので1人グループも珍しくあり ません。
6.評価タイム
グループワークで作成した資料を皆の前で発表します。この時採点を行うことや主催者からの講評が行われることが多いようですが、作成できていないチームは評価対象にならないというようなルールのハッカソンも少なくありません。

国内のハッカソン・アイデアソン動向

ここ数年のハッカソン・アイデアソン動向として、AI系のハッカソン・アイデアソンの開催件数が増加傾向にあります。また企業内でのハッカソン・アイデアソンのノウハウを生かした取り組みは増加しているようです。その理由として、費用対効果とファシリテーターおよびファシリテーションの組織化・企業化が進んでいることが挙げられます。
公開型のイベントの場合、特にアイデアソンに関して、主催者はファシリテーションの費用に加え会場費や集客などの費用に応じた成果の評価が良い意味で厳しくなっています。社内イベントであれば、ほぼファシリテーションの費用で済むことと、具体的な目標の理解が一般に比べて深いため、得られる成果も深いものになることが多く、費用対効果の面で有利だと判断されてきているようです。
ハッカソンに関しては、持っている技術の利用を促すという広告的で明確な目標があるため、アイデアソンよりも公開されているものが多いようです。

そんな中、近年開催されている大規模なハッカソン・アイデアソンイベントとして、ヒーローズ・リーグ(旧Mashup Awards)が挙げられます。当初はそれほど大きなイベントではありませんでしたが、今では非常に多くの企業が参加しています。特にインターネットを使ったアプリケーションでは1社の技術を使うのではなく、各種の技術を組み合わせることが当たり前になったため、自社で開催するより、このイベントに参加するほうが双方にメリットがあるというのも納得がいきます。

ハッカソン・アイデアソンの効果

先に述べたように、アイデアソンは実現可能かどうかに捕らわれないアイデアを得るため、ハッカソンは具体的な何かを得るために行うものです。それを踏まえて主催者が持つ状況に合わせたハッカソン・アイデアソンを行うことが重要です。ではハッカソンやアイデアソンはどの様なときに有効な手段なのでしょうか。以下で、私の考えを述べます。

1)自社技術の事前調査や想定しているビジネスモデルの有効性を確かめるにはアイデアソン
社内において開発の過程で市場調査も含めた調査や検討を行っているはずです。アイデアソンの数時間でそれを超えるアイデアが出てくる可能性は高くありません。しかし、そこで出てくるアイデアが事前に社内で検討したものとどの程度乖離するかということには意味があります。なぜなら、その技術を一般に説明した際に想像されるビジネスが、アイデアソンで出てくるはずだからです。もしそこに乖離があるとすれば社内で想定しているビジネスモデルにも影響するということがわかります。

2)自社技術へのロイヤリティを得るためのハッカソン
企業が行うハッカソンは、その技術を開発者などに理解してもらうことが目的のように思えます。しかし、実際はその1,2日だけで完全に理解することは現実的ではありません。それよりも、その企業が開発者や開発コミュニティに対してどのような対応を行うかをアピールし、その技術へのロイヤリティを上げることを目標にするほうがメリットになります。

開発者がある技術を評価する際は、技術の権利を持つ会社が用意した資料よりも第三者がどの程度引用しているかを重要視します。そして、このことは結果的にその技術が使われることにつながります。

注意すべきポイント

ハッカソンやアイデアソンで参加者、特に開発者への対応として重要なのは景品ではなく、リスペクト(敬意)と権利です。以前にあったトラブルで、イベントに参加する際には、イベント公開およびされた内容のすべての権利を主催者のものとするという覚書にサインする必要があるということが起きました。もちろんアイデアだけでは権利になりませんし、それを実現させるにはさらなる時間とコストがかかるため具体化することはほとんどありません。しかし、権利はすべて主催者のものという態度は参加者に対して敬意があるとは言えません。これはその技術に対しての信頼と結びつくということを意識する必要があります。

社内でハッカソンやアイデアソンを実施する際に気をつけるポイントもあります。それはコミットメントです。いくら良いアイデアが出ても、単にその場だけで終わるという前提で行うイベントであれば、参加者の熱意を求めることは難しいでしょう。さらに実際にアイデアを実現する際にうまくいかないことを問題にしないというコミットメントも重要です。

これからのハッカソン・アイデアソンとは

COVID-19のような事態がおきた結果、今後イベントの開催はリモートで行うことも増えていくでしょう。ただその運用スタイルはまだ模索しているというのが現状です。多くのオンラインハッカソンやアイデアソンでテレビ電話が使われていますが、従来のファシリテーションと比較してやりにくいなどの問題もあります。VRの利用も今後増えてくると予想されていますが、手で書くなどの操作はまだ難しいため異なる手法が求められています。

オンラインにせよオフラインせよ、まずは社内で開催してみてはいかがでしょうか。実際に運営し参加することで自社にあったやり方を見つけることができると思います。

執筆者T.K氏

UNIX系の開発からキャリアをスタートし、パソコン向けの製品開発、海外製品のローカライズ、セールスパートナー戦略策定、知財管理、エンジニア教育を担当。
独立後はWeb、スマートフォンアプリの開発をメインとして活動していたが、近年は開発コンサルタント、試作サポートをメインとしている。

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