新型コロナウイルスの影響で変わっていく採用市場の現状と採用戦略のNewモデル

人事

2020年10月13日(火)掲載

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まず、新型コロナウイルスの影響を受ける前の採用市場を思い出してみましょう。
2018年には、有効求人倍率(厚生労働省より)は1.6倍を超え、 求人広告や人材紹介会社など有料の採用手法を活用しても応募すら来ないという状況が続きました。決算記事では人材ビジネスの多くが過去最高益を出していることをご存じの方も多いのではないでしょうか 。

コロナ禍の採用市場の現状とは?

さて、新型コロナウイルスが拡がってから、採用市場はどのように変わったのかということを、まずは有効求人倍率で考えてみます。 2019年12月のコロナ直前が1.57倍、そこから1.49倍(20年1月)、1.45(20年2月)、1.39倍(20年3月)、1.32倍(20年4月)、1.20倍(20年5月)、1.11倍(20年6月)、1.08倍(20年7月)と推移しています。ちなみに、20年7月のタイミングでは、有効求人数1,999,217人に対して、有効求職者数が1,856,080人ということでした。
※上記有効求人倍率は季節調整含む。

また、雇用調整系では有店舗サービス業や旅行・航空などの業界によっては、雇用調整の記事が新聞紙面をにぎわせている事実もあります。

しかし、8月9月の新聞紙面では、求人が増え始めている記事も散見されるようになりました。特に物流や介護系、意外と事務系の派遣案件も増えているという記事もありました。

また、マクロ的にみると、我が国の労働人口はどのように計算をしても「減る」ことが確定しています。この「減る」を掴んでいただくためには2000年の成人人数が164万人、2020年が122万人、2019年の新生児の数が86万人(総務庁統計局より)という事実 を受け止めると、今後20年でまた更に減ることをより体感いただけるのではないでしょうか。

つまり、コロナ禍における採用市場は、一瞬、「人余り」というタイミングに一部の業界は入った事実もありますが、中長期的には人手不足問題解決には何ら影響を及ぼさず、また、人手不足時代に戻ることは容易に想像できます。

POINT

・有効求人倍率は、2019年12月(1.57倍)以降から低下し、2020年7月の時点で1.08倍になっている。
・物流/介護系/事務系の派遣案件での求人が増えている。
・マクロ的視点では、今後の日本の労働人口は減少する。
・短期的には「人余り」でも、中長期的に見ると、人手不足問題は解決していない。

新型コロナウイルスの影響で変わったのは働き方

新型コロナウイルスの影響を受ける前であっても、我が国では経済のキーワードとして、「テレワーク」「生産性向上」「同一労働、同一賃金」などが飛び交っていました。コロナ禍に進む中で、この辺りの整備が強制的に動いたのは紛れもない事実で、ある意味、これは新型コロナウイルスの副産物だと言えます。新型コロナウイルスが拡がらなければ…例えば、web会議 を使ったオンライン会議はこんなに早く浸透したでしょうか

オンライン会議

例えば、新型コロナウイルスがなければ、在宅勤務に向けて、新しい通信のシステムなどの導入をしたでしょうか。
きっとその答えはノーでしょう。
例えば、時間管理という概念からパラダイムシフトする考えをどこまで本気で考えたでしょうか。
新型コロナウイルスのおかげで、この辺りの整備は10年単位程で縮まったのではないかと私は考えています。
また、技術的には既にできていたけれど、結局はそれを扱う人間がやらなければいけない状況にならないとやらないことも明白になったように思います。

生産性を重視する

これまで日本では、生産性や結果よりも、過程が評価される傾向にありました。このため、時間に厳しく、結果に甘い現状になってしまっていた企業が多々あったのです。
しかし在宅勤務者が増えるにつれて、上司が部下をマネジメントすることに限界が生まれてきました。これにより、過程よりも結果を重視する機会が増えました

また、かなり個の力が問われるようになったのも一つの変化です。リモートでのマネジメントや育成には限界があり、人材育成よりも人材活用が重視されるようになりました。

POINT

・「テレワーク」「生産性向上」「同一労働、同一賃金」などの整備が強制的に前進した。
・コロナ禍の影響で、これらの整備は10年単位で縮まったと思われる。
・技術的には可能でも、扱う人間が導入せざるを得ない状況にならなければ、前進しないことが明白になった。

組織と個人の関係性も変化

これまでのパラダイムにおいて、組織と個人の関係性の数は限りなく1つに近かったのが、これからはこの数が増えることは想像しやすいことだと思います。

シニア層の活躍

新型コロナウイルスが蔓延する前にもこの動きは確認されており、我が国においては、シニア層より広がると予測されていました。これは例えば、シニア層の方が「自分の経験を生かして、様々な組織の顧問をする」という働き方だけではなく、「パートをしながら、地域活動にも参加する」というような働き方も含みます。
実際に、顧問人材と企業とはマッチングするというサービスも増え始め、まさに、パーソルキャリアのi-commonがそのサービスの代表となります。

フリーランスが増える

そして、現在ではシニア人材だけではなく、若手・中堅のフリーのコンサルタントや大企業の副業としても活用されるようになってきています。
このように、一人の人材が多くの組織と雇用などの関係性を同時持つ働き方として、ピータードラッガーは著書の『明日を支配するもの』などの中で「パラレルキャリア」として、これを解説しています。

このように組織と個人の関係性は1つではなく、今後はさらに一見すると、複雑化していくと考えられます

POINT

これからは、一人の人材が複数の組織と雇用関係にあるなど、「パラレルキャリア」が広まっていくと予想される。
個人と組織の関係の形が一つではなくなり、一見では複雑化していくと考えられる。

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採用戦略のNewモデルを考える前に

組織と個人の関係性は一見すると複雑化するかということに関して、ある意味、これはNoと言えるでしょう。
その理由として、正社員という働き方で、ゼネラリストとしてその会社と心中する気持ちで働くという選択をすることもありです。こちらは、中長期的なキャリア形成をし、会社への忠誠心でマネジメントをかける形と言えます(メンバーシップ型雇用)。もう一方の働き方として、専門領域を高めて、そのスキルをもって、多くの会社にその価値を提供する働き方もありです。いわゆるジョブ型雇用といった働き方とも言えます。時間管理ではなく、成果による判断になります。

ここで、何が言いたいかというと、採用戦略のNewモデルを考える前に企業がやるべきことは、柔軟性のある、働き方(雇用形態・雇用契約・評価制度などの人事制度)を許容することです。
あくまでも私の意見ですが、ごくまれに、今でも「課長が42歳だからメンバーは40歳以下でなければ…」という会社がありますが、これはもうナンセンスであると思います。

経営戦略の実現に向けて、人材戦略に関しては、より柔軟な発想で資源配分をしていくことが求められます。多くの組織は硬直へと向かいます。そして、既に硬直している組織では異物を嫌います。許容をしない組織になります。そうなった途端に、今までの当たり前が通用しなくなるでしょう。

1学年に200万人もいた時代の採用の成功体験をいまだに引きずり、「今の時代になっても、ハローワークに求人出したら応募がたくさん来た!」と言っているとすると、少し残念に思います。

POINT

・企業のやるべきことは、柔軟性のある以下のような働き方を許容すること。
1:ゼネラリストとして、一つの会社で中長期的なキャリア形成をする「メンバーシップ雇用型」の働き方
2:専門領域を高めて、自身の持つスキルを価値として、多くの会社に提供する働き方
・新たな要素を異物として拒むのではなく、柔軟な発想で資源分配していく必要がある。

どのように採用戦略のNewモデルを考えるのか

採用戦略のNewモデルのキーワードの1つは「柔軟性」です。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用をどのように配分するのかということに対して、2つ目のキーワードとして、「チャレンジ」するということになります。

組織を硬直させないために、時にはカオスを作り出すために、今までの人材候補と違う人材を登用するというようなチャレンジが必要となります。

例えば、「大卒総合職という採用は本当に正しいのか?」ということに疑問を持つことも大切です。総合職で採用した新人に同じ研修を施して営業をさせることよりも、もしかしたら、SNS担当として、それぞれのSNSアカウントを活用させて、世界に情報を発信する仕事を作った方が結果を出すかもしれません。 最初、このやり方がわからないのであれば、専門家人材をジョブ型で雇用し、メンバーシップ型採用の正社員がノウハウを吸収するのもいいと思います。

POINT

・採用戦略のNewモデルのキーワードは「柔軟性」と「チャレンジ」
・組織を硬直させずに、柔軟性を持たせるには、今までと異なる人材を登用するなど、チャレンジが不可欠。
・「従来の」仕組みや「常識」に疑問を持つことも大切。
・専門家人材をジョブ型で雇用し、メンバーシップ型採用の正社員がノウハウを吸収するなどの工夫が必要。

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採用戦略に柔軟性を持たせ、求人をとにかく顕在化させる

採用戦略のNewモデルには柔軟性とチャレンジが必要だと述べましたが、この発想ででてきた求人をとにかく顕在化させ、実際に募集することが重要です。
頭の中にある、計画の中にあるだけの求人は、求職者の目にはもちろん留まりません。そのため、求人を顕在化させるということが大切です。そして、ここでのポイントは「求人内容が不明確」でも、求人化させるということです。
「求人が不明確」である場合は、しっかりとミッションやビジョンを求人には記載し、応募者としっかりと対話を図り、採用候補者と具体的にしていくことが大切です。
また、このような人材をどのようにして集めるかに関しては、人材紹介者へ案件化するというやり方 でもいいですし、自社採用サイトを活用することもお勧めです。
自社採用サイトをSNSなどでプロモーションすることで、求職者とコミュニケーションをとりながら関係性を構築していく手法になります。
今すぐ採用しない求人でも求職者に興味を持っていただき、関係性を構築し、中長期でリクルーティングしていく手法が今後は更に注目されるでしょう。そして、このことをタレントプールやデータベースリクルーティングという言い方もされますが、私はこれを「未来の求人を今から募集せよ!」
と呼び、採用戦略のNewモデルだと考えています。

POINT

・採用戦略のNewモデルとして連想した人材を顕在化させ、実際に募集することが重要。
・求人が不明確な場合でも、実際に公募し、候補者と話しながら具体化していく。
・人材紹介会社へ案件化したり、自社採用サイトを活用したりするのもオススメ。
・今すぐ採用しない人材でも、関係性を構築し、中長期的にリクルーティングしていく「タレントプール」や「データベースリクルーティング」が採用戦略のNewモデルである。
・未来の求人を今から募集する。

まとめ

現在の採用市場は、コロナ禍の影響を受け、有効求人倍率が一時的に低下していますが、日本の出生率より、中長期的な視野では、労働人口の減少は確実です。つまり、採用戦略のNewモデルを考えることは必須です。特にコロナ禍で働き方が大きく変化したことで、個人と企業の関係性も変化していくと予想されます。

このため、人材採用には「柔軟性」と「チャレンジ」が不可欠となり、従来の仕組みや常識に囚われない考え方を持たなければなりません

しかし、新しい風を吹き込む人材像をすぐにビジョンとして想像するのは、簡単なことではありません。このため、外部の力を借りたり、貴社のミッションやビジョンに賛同する採用候補者と対話をしながら求める人材像を明瞭にしたりする作業が必要となります。i-commonでは、経営顧問の紹介サービスを行っており、採用や人材市場に詳しい専門家が数多く在籍しています。コンサルティングを通じて、貴社のミッションやビジョンを損なわず、未来を更に多様化させていくお手伝いをいたします。まずはお気軽に貴社の現状をご相談ください。貴社の現状に合わせて、適切な顧問をご紹介いたします。

執筆者K.S氏

採用定着支援の専門家である採用定着士®の育成機関である一般社団法人採用定着支援協会を運営。開講から1年6か月で北海道から沖縄まで全国に社労士を中心に200名以上が受講。「お金をかけず定着する人材を採用する」(労働新聞社)など著書多数。

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