【IT分野での2025年問題の本質:step7】 PMP(案)ベース評価基準をもとにベンダーを選定

システム

2020年04月10日(金)掲載

「ステップ6」のところでは、「4-1.図1 ベンダー選定・評価プロセスの中の「選定準備フェーズ」と名づけてある部分、つまり各ベンダーからの提案回答が返ってくるまでに行っておかなければならない重要なことについて解説しました。
今回のコラムでは「ステップ7:PMP(案)ベース評価基準をもとにベンダーを選定」として、「ステップ6」のアウトプット(成果物)である「評価基準」をもとに、どのようにベンダーを選定すれば良いのか、その具体的な手順を解説しましょう。

今回は、「ベンダー選定・評価の作業ステップ」の中の「各ベンダーからのプレゼン&選定作業」の部分にクローズアップし、復習も兼ねて今一度その図を下記に示します。

4-2.図1 ベンダー選定・評価プロセス中の「選定作業フェーズ」

図1:筆者作成

ベンダー選定作業全体の流れ

先ずベンダー選定作業全体の流れは、基本的にRFP説明会でのスケジュールに従っての実施となりますが、スムーズに選定作業を進める為には以下の点に留意する必要があります。

一旦RFPを候補ベンダーに提出後は、以下のようにチームを大きくふたつに分けて、ベンダー選定が予定の日程通りに進むように、候補ベンダーの選定作業を進めて行く必要があるということです。具体的には以下となります。

・チーム1:ベンダー対応のいわゆる事務局(窓口)となるようなチームです。このチームのメインタスクは、各ベンダーから寄せられたRFP回答資料や各ベンダーからの質問、及びこれらに対しての回答等をきちんと整理しておくことであり、チーム2のメンバーが効率よくベンダー選定作業を進められるように支援するチームとも言えます。

ベンダー選定作業の中でも特にプレゼン実施に向けて、社内や各ベンダーとの日程調整や社内外への連絡作業もこのチームの重要なタスクとなります。

・チーム2:このチームはベンダーの選定をメインでリーディングする重要なチームです。メインメンバーはIT部門と再構築の主幹業務部門が担当し、当然、プロジェクト開始後にPMとしての役割を担うようなメンバーがメインで構成されます。

尚、書類選考時は情報システム部門だけでなく、関連業務部門のキーパーソンも随時巻き込む必要があります。また、各ベンダーからのプレゼン実施による選考時には、社内の幹部メンバーも巻き込む必要がありますので、プレゼンの日程調整等はチーム1のメンバーの支援も得ながら進めることになります。

よって、もし仮にベンダーの書類選考作業やプレゼンの準備作業が遅れそうであれば、その後のメインとなる「基幹システムの再構築プロジェクト」開始のスケジュールにも影響しますので、チ-ム1とチーム2は、このプロジェクト開始前の「準備フェーズ」全体のスケジュールを意識しながら、両チームが密接に連携しながらタスクを進める必要があります。
また、ベンダー側からも、提示されたプレゼン日程に合わず調整して貰いたいというような要望が出るケースもありますので、このようなケースも想定して、余裕をもった日程計画にてこの「評価・選定フェーズ」を進める必要があるでしょう。

第一次選考:書類選考時のポイント

これは既に「ステップ6」のところでも触れましたが、「ベンダーの提案書類選定基準チェックリスト」が出来上がっていれば、特に問題無く進められるでしょう。
 ただし、ここで1点注意すべきことは、既に「ステップ6」でも触れましたが、ベンダーからのRFPの回答に対しての書類の選定・評価をする基準は、提案書の細かい機能の内容よりも、「ITプロジェクトに携わるベンダー、メンバーとして基本的なことが守られているか否か」ということです。よって、この観点からの「提案書類評価基準チェックリスト」を作成してください。
提案内容の細かい点は、その先のステップであるベンダーからのプレゼン段階でチェックできますので、余り気にする必要はありません。それよりも、「基本的なことが守られているかどうか」が支援ベンダーの書類上の評価として重要になります。

ベンダー選定の難しさは、書類だけでは当然不十分なのですが、実は、プレゼンテーションの段階でも評価基準が明確になっていないと見逃しがしてしまう重要なベンダー評価指標があるのです。
プレゼンテーション中の直接のQ&Aによってある程度はベンダーのスキルはわかりますが、まだ十分な評価はできないでしょう。それが「ステップ6」のコラムでも「4-1. 図2 ベンダー選定・評価基準の考え方(一例)」を引用した次第です。そして、ポイントは、今回このコラムで再度4-2.図2の中で示しましたZ軸、つまりベンダーからプロジェクトへ参画メンバーの「コミュニケーション力」なのです。この詳細を次の「第二次選考:プレゼン選考時のポイント」で詳しく解説します。これをベンダープレゼン時の選定評価のご参考にしてください。

第二次選考:プレゼン選考時のポイント

「ステップ6」のところでもふれましたが、「プレゼンでの選定基準チェックリスト」がしっかり出来上がっていれば、この第二次選考も問題無く進められるでしょう。ただし、ここでも1点注意すべきことがあります。
ベンダーがプレゼンテーションする段階では、それなりに「ITプロジェクトに関わるベンダーとしての常識がある」ベンダーに既に絞られていると思いますので、ここからの選定基準のチェックリストは、書類選考時のチェックリストとは色々な点で異なります。
 つまり、「パッケージ」ありきでなく「ベンダーありき」でベンダーを選ぶような「選定基準チェックリスト」を策定してください。ただ、この段階でのベンダー選定は、選ぶ方もそれなりの知識やスキルが必要であり難しい面もあります。そのためには、以下の点に留意して評価・選定を進める必要があるでしょう。

・貴社全体としても、評価コンセンサスや評価指標をあらかじめ考えておき、またこれらの各評価指標の重み付けも考えておく。

・時間的な制約はあっても、この選定段階では焦らずに、納得がいくまでじっくり検討する。

・ベンダーのプレゼンテーションは、実際にベンダー側でプロジェクトの纏めをするキーメンバーに行っていただく。そして、そのプレゼンの中で、ベンダー提案の範囲(責任範囲や契約形態も含めて)や推進体制も明確にし、その上でPMP(案)の中の予算とベンダーからの提案予算との整合性も比較する。

・正確な提案予算を出せない場合は、フェーズを区切っての契約も検討する。
例えば、要件定義フェーズとそれ以降のフェーズで分けて費用を算出していただき、要件定義フェーズ終了段階で、その後のフェーズ予算を再精査してもらいます。もし、大幅に異なるようであれば、その理由を明確にして貰うなどの対応をしてもらいます。(仮にこの段階で、何らかの見解の相違があり、ベンダー側が進め方の再調整を行うことや戻りも含めながら実施することになっても、既に要件定義は終わっているため、そのアウトプットは全く無駄にならず、最小限度の損失で済みます。そのほうが、その後の工程での大幅な手戻りの費用を考えると全く問題にならないどころか、逆にプロジェクト品質があがり(土台がしっかりし)、最終的に費用が安く済むと言うメリットも出てきます。よって、フェーズ毎の見積りがしっかり出来ているかどうかのチェックも必要です。要件定義の後のフェーズが、概算予算であっても、前提がしっかりしていれば問題ありません。(逆に、現段階で全てのフェーズを通して完璧な予算を提示してくるベンダーは、余程のことが無い限りいないと思います。こちらはベンダー側もかなりのリスクを伴いますので、逆にどの程度のバッファーが積まれているのかを精査する必要があります。)

・プレゼンテーション時には、ベンダー側の取り纏め者のプロジェクト参画経験や人間性(企業との相性)も踏まえて評価・選定する。

・ベンダーの選定は、IT部門だけでなく業務メンバーや幹部も含めた場でのプレゼンテーション方式で最終的に行う。
もし、プロジェクト開始後にPMO(プロジェクト支援チーム:Project Management Office)としてのプロジェクト支援メンバーが決まっていれば、PMOメンバーにもプレゼンテーションに参画してもらいましょう。一般的にPMOはプロジェクト経験が豊富なメンバーで構成されるので、この準備段階からのPMOの参画でPMではなかなか判断の難しい事柄の意思決定支援も可能となります。

特に最後の項目は重要であり、これには下記のように明確な理由があります。

よく幹部の中から、ITは分からないから情報システム部門だけで決めて貰いたいというようなご意見を聞く場合もありますが、企業の基幹システムはITよりも業務のほうが重要なのであり、これを実現するツール、手段がITであり、基幹システムなのです。よって、このITの選択を間違えると、企業のIT戦略、ひいては企業戦略にも大きな影響を与えます。
そのため、今の時代、企業にとって重要かつ将来の企業戦略にも深く関与する基幹システムをご支援いただけるベンダーの選定は、決して情報システム部門だけでなく全社的に合意を取った上で進める必要があります。つまり企業としての一体感、コンセンサスを得ることが重要なのです。

ベンダー選定時に重要な考え方

「ステップ6」のコラムでも触れましたが、通常は、下記の4-2.図2のなかのX軸とY軸だけでベンダーを選ぶケースが多いです。しかし、私はこれまでの国内外のITプロジェクトへの参画で、多くのベンダーとかかわってきました。その中で最も重要なのは、ある意味Z軸ともいうべきベンダーの「コミュニケーション力」であると感じています。
 以下に、ここで再度「4-2. 図2 ベンダー選定・評価基準の考え方のポイント」を例にとり、コミュニケーションの重要性を解説します。

 4-2. 図2 ベンダー選定・評価基準の考え方のポイント(重要なZ軸)

図2:筆者作成

このコミュニケーションというのは、有名なPMBOK(プロジェクトマネージメント知識体系:Project Management Body of Knowledge)の中でも昨今では特に重要視されてきています。
 通常は、上記の4-2.図2のなかのX軸とY軸だけでベンダーを選ぶケースが多いです。しかし、最も重要なのは、Z軸ともいうべき、ベンダーの「コミュニケーション力」だと私はこれまでのプロジェクトの経験から感じています。
 このコミュニケーション力は、ベンダーに限った話ではなく、どのようなプロジェクトでも重要です。しかし、貴社の重要な「基幹システム再構築プロジェクト」を支援してくれるベンダーのコミュニケーション力が弱いと、プロジェクトがスムーズに進まないばかりか、様々な問題が発生します。逆に、ベンダーのコミュニケーション力が優れていると、「痒いところに手が届く」ように、貴社の意図するポイントをよく理解してくれるだけでなく、課題等に対しての対策も分かりやすく説明してくれ、双方で納得して進めることができます。これは当然、プロジェクトの支援内容やその費用面の説明にも当てはまります。

更に重要なのは、貴社のプロジェクトが国内だけでなく、海外拠点も対象になっている場合です。海外ではどの国であれ、共通コミュニケーションツールとして、英語でプロジェクトを進めるケースが多々あります。その場合、我々日本人もつたない英語で言いたいことを伝えないといけません。その場合に、このコミュニケーション力が非常に重要になります。
 以前、海外プロジェクトであったケースを紹介します。ある日本人ベンダー技術者の定例進捗会議煮に出された「英文での状況レポート」の内容が私は良く理解できず、その元となる日本語のレポートを見させてもらったのですが、その日本語のレポート自体が分かりにくいことがありました。英語というのは論理的な言語ですので、日本語での意味が明確になっていない文章を正しい英語には出来るはずがありません。
 要するに、ここで私が言いたいのは、英語力は別としても、コミュニケーション力のすぐれたベンダー技術者は、報告書の内容も分かりやすく、誤解の無いように記載されて報告されるということです。ITプロジェクトにおいて曖昧さはできる限り避けないといけませんので、そのような意味でも「コミュニケーション力」がベンダー選定上も重要であると私は考える次第です。

「準備ステップ」全体を通してお伝えしたい重要なこと

最後に、この一連の「準備ステップ」全体をとおしてお伝えしたい重要なことがあります。

それは、このプロジェクト開始前の段階の「準備フェーズ」を、「品質・納期・コスト」を意識して予定通り終わらせることも、ある意味PMの重要な役割であり、本番開始前の重要なタスクでもあると言えます。
よって、理想を言えば、「基幹システム再構築プロジェクト事前準備フェーズプロジェクトマネージメント計画」のようなPMPも事前に作成すべきかも知れません。
(昨今のITベンダーの選定が難しくなっている状況の中で、心配性の私がもしPMOであるならば、PMとなるべき候補の人に、この「準備フェーズ」のPMPも恐らく作成依頼をすることでしょう。)
それほど大げさなPMPでなくても問題ないですが、大きなプロジェクトと同じように、最低限必要な項目は全てカバーし、目的やスケジュール、体制(工数、費用予算面も含めて)、会議体なども含めてPMPを作成し、この重要な準備フェーズに関わるメンバー全員が主旨や目的をしっかり把握した上で一丸となって準備作業を進められるようにする必要があります。すなわち一連の作業の見える化、共有化が狙いなのです。

この「準備フェーズ」でのPM作成は、少しやり過ぎであると思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、私はよく「高層マンションの建築」を例にとりあげて説明しますが、高層マンション等の建築においては基礎(土台)が重要であり、これをしっかりしておかなければ、後々大変なことになります。
基礎(土台)がないがしろにされ、1階や2階が目で見てもわからない程に少し傾いていても、数十階にも及ぶような大きな建物であれば、完成間近になってその傾きが目に見えて露呈するのです。しかし、完成間近の段階で気づいても既に手遅れです。
このことは、ITプロジェクトにも当然あてはまります。高層マンションの建築では、長年のノウハウ蓄積でツールも整備されており、このような単純なミスは起きないと思います。しかし、ITプロジェクトのマネージメントでは、建物と違って簡単に目で見えにくい面も多々あり、またプロジェクトマネージメントツールも昨今整備されてきているとはいえ、まだまだPMのスキル、経験に頼らないといけない面も多々あります。よって、プロジェクトの最初の段階での土台の不十分さはなかなか見えにくく、プロジェクトの終盤になって土台の不十分さに気づくこともあります。それ故にITプロジェクトのマネージメントは難しく、なかなか「品質、納期、コスト」の面で成功できない、という背景があるのです。
このあたりの詳細は、また別の機会に「プロジェクトマネージメント」関連のコラムで詳しく解説いたしましょう。

次回のコラムでは、貴社にとって最適な支援ベンダーが決まった後に、再構築プロジェクト開始のキックオフまでに、事前に実施しておくべき重要な点を「ステップ8:再構築プロジェクトのキックオフ迄になすべきこと」として、いくつか解説することとしましょう。

ライターH.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門に勤務。米国への社費留学にてコンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はIT顧問として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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