【IT分野での2025年問題の本質:step6】ベンダー提案回答受領迄になすべきPMPの作成

システム

2020年04月09日(木)掲載

今回のコラムでは、前回のコラムの「3-2.図1 ベンダー選定・評価プロセス」の中の「選定準備フェーズ」と名づけてある部分、つまり、各ベンダーからの提案回答が返ってくる迄の期間に行っておかないといけない重要なことについて解説しましょう。

復習も兼ねて、「3-2.図1」の「選定準備フェーズ」部分にクローズアップして、今一度その図を下記に示します。

4-1.図1 ベンダー選定・評価プロセス中の「選定準備フェーズ」

図1:筆者作成

先ずは「PMP(案)の作成」を実施

上記の4-1.図1中のPMPとは、もちろんプロジェクトマネージメント計画書(Project Management Plan)を意味しますが、今、この選定準備フェーズの段階でなぜこのPMP(案)の作成が必要なのでしょうか。
その理由は、次のステップである「ステップ7:PMP(案)ベース評価基準をもとにベンダーを選定」の段階でこのPMP(案)が必要となるからです。以下のその理由を詳しく解説しましょう。

ベンダーやパッケージの選定は、RFPを元にしたベンダーからの提案回答書にて評価・選定すれば良いと通常はそのように考えます。また、このPMPはプロジェクトの開始段階にて選定したベンダーが作ってくれるケースもあります。
しかし、これがプロジェクト推進上の落とし穴なのです。これによりプロジェクトが失敗する原因になることもあります。既に以前のコラムでも書きましたように、このPMPは依頼する企業側自らが作成する必要があります。決してプロジェクトをご支援いただく立場のベンダー側が作成するドキュメントではないのです。では、どうしてこのベンダー選定の段階にPMPを作成し、しかも「PMP(案)」の作成なのでしょうか。
それは、未だこの段階では柔らかい状態、内容でのこのPMP(案)を用いて、次のステップでベンダーやパッケージの選定を行う必要があるからです。

各ベンダーはRFPを元に提案回答書を作成・提示してきます。そして、通常はRFPをもとに、これらのベンダーの提案回答内容に企業側が提示した条件が満たされているか否かを評価します。
確かにこれも必要な基本的な評価ステップです。しかし、選定の段階で敢えてRFPだけで比較せずに、実際にその提案回答をベースに「基幹システムの再構築プロジェクト」がPMP(案)の計画通りに実行できるかどうか、という観点からもベンダーやパッケージの選定を実施する方法があります。逆に、そうしなければ、「プロジェクトマネージメント」としての観点からのチェックは、RFPからでは出来ないのです。では、なぜPMP(案)なのでしょうか。
それは、まだベンダーやパッケージが確定していないこの段階では、貴社が作成したPMPはまだ実現性が見えません。「絵に描いた餅」になる可能性もあります。そして、それが理想像に終わらず、本当に実現出来るプロジェクトであるのかどうかを、ベンダーからの提案をもとに確認&是正する必要があります。よって、まだPMP(案)なのです。
そして、最終候補ベンダーのプレゼンテーションの内容を踏まえて、候補ベンダーと一緒にそのPMP(案)を、本当に実現性のあるPMPの完成版にして行くのです。
その課程の中で、当然よく見えなかったベンダーを含めての推進体制図も固まりますし、適用する具体的なパッケージベースでの導入スケジュールや工数、費用も固まってきます。したがって、これが出来るまでは、「選定準備フェーズ」段階では未だPMP(案)なのです。

更に付け加えるとすれば、これらの作業を再構築プロジェクトのPMとなるべきメインメンバーが実施することにより、そのプロセスを通してPM自身もプロジェクトに対しての理解がより深まります。つまり、PMとして重要なプロジェクト全体を見通す力、更には、PMとして重要なスキルの一つである「リスクマネージメント」力も醸成されると言うメリットもでてきます。
 
よって、この「選定準備フェーズ」から、PMとなるべきメンバーやプロジェクトのメインとなるメンバーが関わる必要があると、既にコラムの中で述べたわけです。

次に「ベンダー評価基準」の策定

PMP(案)が出来れば、次はこのPMP(案)をベースとして、「ベンダー評価基準」の策定です。既に何度も書きましたように、「パッケージ評価基準」でなく、「ベンダー評価基準」なのです。

既にもうお気づきの方もおられると思いますが、RFPで選ぶのは「パッケージではなく」そのパッケージを担いで、基幹システムの再構築を支援して貰える「パッケージベンダー」もしくは「ITベンダー」の選定・評価基準の策定が重要です。
その理由としては、導入しようとしているパッケージの業務・機能を良く知っているのはベンダー側であって、決して依頼する企業側ではないからです。これは結構重要であり、このところをはき違えてプロジェクトを進めて失敗するケースがよくあります。
つまり、あくまでもパッケージは「信頼するベンダーが貴社にとってベストなパッケージとして提案してくるパッケージ」を選ぶべきであり、パッケージありきで選べば、もしそのパッケージでの導入プロジェクトを支援してくれるベンダーが、実はそのパッケージの導入経験があまりない、もしくはパッケージの機能を良く知っていなければ、その再構築プロジェクトは決して上手く行きません。
一見上手く行いっているように見えても、そのパッケージに関しての課題やトラブルが発生した際に、このことは露見します。しかし、その段階で分かっても「時既に遅し 」なのです。そのパッケージを一番よく知っているのは企業側ではなく提案ベンダー側なのです。そのベンダーがパッケージ関連の課題やトラブルを解決できないものを企業側のPMだけでは決して解決できません。更に付け加えると、プレゼンでベンダーからパッケージ自体の説明を良く聞いたからと言って、簡単にパッケージの細かい機能まで理解出来る筈はないのです。それを分かったつもりでそのパッケージありきで選べば、プロジェクト失敗の大きな要因となりえます。

よって、貴社にとって「ベストのベンダー」を選ぶような「評価基準」でないといけません。そして、その評価基準を作成するベースは、ずばりPMP(案)なのです。企業側とベンダー側でそのPMP(案)を実現可能な完成度の高いPMPにしてくれるのは、貴社が選ぶ「ベストのベンダー」なのです。
通常、評価基準に織り込むべき内容はRFPやPMP(案)から当然引用されるべきですが、各評価基準の重み付けは難しく、かつ、重要です。
すでに、以前のコラムでもふれましたように、この「評価基準」によってベンダーを選ぶわけであり、この「選定準備フェーズ」のアウトプット(成果物)とも言えるこの「評価基準」が良くないと、次の「ステップ7:PMP(案)ベース評価基準をもとにベンダーを選定」も上手く行きません。よって、4-1.図1の中の「選定準備フェーズ」が重要なのです。
そして、先ずはPMP(案)を作成し、RFP及びこのPMP(案)をインプットとして、「評価基準」を策定するようにして下さい。

では具体的に、「PMP(案)」や「評価基準」の内容はどのようになるのか?」と、お知りになりたいところだと思います。
昨今、便利な時代であり、インターネットを検索するとPMPの目次案や、評価基準の例は数多く見つかるでしょう。そして、そのような案や例は確かに参考にはなります。
しかし、企業の独自性を出すと言う意味では、型にとらわれずに、貴社が重要と思われる項目をPMP(案)におりこみ、これらをベースに貴社にとって「ベストのベンダー」を選べるような「評価基準」を作成することが重要です。
このコラムで書かせていただきました内容を念頭に置いて、貴社独自の基準で策定されるのが良いと思いますが、以下の観点を貴社が「評価基準」を策定される際のご参考にされるのが良いでしょう。

先ずはベンダーからのRFP回答に対しての書類での選定・評価基準としては、提案内容自体よりも「ITプロジェクトに携わるメンバーとして基本的なことが守られているか」と言う観点からの「評価基準チェックリスト」を作成されてください。細かい内容はその先のステップであるベンダーからのプレゼン段階でチェックできますので、余り気にする必要はありません。それよりも、これら基本のほうが支援ベンダーとして重要になります。
 
RFPで指定した回答内容、様式を守れないベンダーは、そもそもプロジェクト遂行に対しての信頼度に対しても疑問符がつきます。これは提案内容以前の問題です。よって、「機能面等々の書類選定だけでベンダーで落とさないように」と以前のコラムで書きました背景はここにもあります。書類選考時の選定基準の意味合い、重要なポイントを間違っている企業を時々見受けます。提案書の内容だけでは、ベンダーとして重要なスキル(これは後でこのコラム内でふれます)が余り評価できませんので、最初の選定ステップである書類選考とはいえど、慎重に行ってください。
 
次の、ベンダープレゼン段階では、それなりに「ITプロジェクトに関わるベンダーとしての常識がある」ベンダーに既に絞られていると思いますので、ここからの選定基準のチェックリストは書類選考時のチェックリストとはかなり異なります。
つまり、しつこく書いていますように、「パッケージ」ありきでなく「ベンダーありき」でベンダー及びパッケージ選ぶような「選定基準チェックリスト」を策定してください。この段階でのベンダー選定は、選ぶ方もそれなりの知識やスキルが必要であり難しいですが、そのヒントを以下に図示しましょう。

4-1. 図2 ベンダー選定・評価基準の考え方(一例)

図2:筆者作成

通常は、上記の4-1.図2のなかのX軸とY軸だけでベンダーを選ぶケースが多いです。しかし、最も重要なのはZ軸ともいうべき、ベンダーの「コミュニケーション力」だと私はこれまでのプロジェクトの経験から感じています。

では、次の「ステップ7:PMP(案)ベース評価基準でのベンダー選定」のところで、どうしてこの「コミュニケーション力」がベンダー選定で重要となるのかを、具体的に解説しましょう。

ライターH.K氏

大阪大学工学部卒業後、電機業界の大手企業に入社し、情報システム事業部門勤務。米国への社費留学にて、コンピュータサイエンス修士号取得後、米国・東南アジア・欧州の関連会社に出向駐在を経験。日系企業の基幹システム導入支援等を多数実施。定年後はIT顧問として活動中。英語・海外関連著書30冊以上あり

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