パーソルキャリア×日本総合研究所 共催セミナー 企業価値向上のための社外取締役活用戦略

社外役員

2019年10月03日(木)掲載

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イベント&レポート概要

コーポレートガバナンス・コードを受けて関心が高まる「社外取締役」をテーマにしたセミナーが、2019年8月30日に千代田区大手町の経団連会館カンファレンスにて開催されました。適切なリスクテイクを可能とする体制の確立や、意思決定の質・スピードの担保など、企業価値向上の観点からも経営における監督機能の強化は重要なテーマになっています。本セミナーでは、コーポレートガバナンスの最新状況を踏まえながら、社外取締役のスキルや選任プロセス、処遇のあり方、候補人材の発掘方法などを実務的な観点から紹介。当日の模様をダイジェストでレポートします。

講師プロフィール

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
理事 山田 英司 氏
上場建設企業において現業部門を経験後、関係会社へ出向し経営企画・管理責任者として経営再建に関わる。帰任後は本社管理部門で連結経営管理・決算、グループ中期計画の策定を担当。2001年より現職にて、グループ経営、インフラ産業に関するコンサルティングに従事。専門は、グループ経営、組織・ガバナンス改革、M&A・事業再編、経営管理など。

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
部長・シニアマネジャー 青木 昌一 氏
不動産デベロッパー会社の人事部門を経て、関連事業部にて関係会社経営管理、資産流動化を担当。2000年に日本総研(旧さくら総研)に入社し、主に人事分野のコンサルティングに従事。専門は、人事制度構築支援、労務対応支援、役員制度構築支援、M&A時の人事対応支援など人事関連全般。

パーソルキャリア株式会社 タレントアライアンス事業部
i-common ゼネラルマネジャー 荒井 雅人
2008年パーソルキャリア(旧インテリジェンス)入社。金融業界向けの人材紹介事業を経て、2013年「i-common」に参画。2017年4月より現職。

【第一部 1】
ガバナンス強化に資する社外取締役のあり方

第一部では、株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 理事の山田英司氏が登壇。6月28日に経済産業省が策定した「グループ・ガバナンス・システムの実務指針」を踏まえ、昨今のコーポレートガバンス強化の方向性や、日本企業における社外取締役についての今後の課題について講演しました。

山田氏は初めに、2015年に適用が開始されたコーポレートガバナンス・コード(CGC)への対応が大きな転機となるなど、全体の背景となるガバナンスのトレンドを紹介。CGCの重要ポイントとして『監督と執行の分離』と『社外目線の確保』の2点を挙げ、「加えて、今までのガバナンスがどちらかというと『守り』だったのに対し、CGCでは『稼ぐ力』を意識した『攻め』と『守り』のガバナンスであることが特徴。取締役会および社外取締役に関しても非常に多くの記述がされています」と解説しました。

また、近年のガバナンス上の重大問題の多くがグループ会社に端を発している現状に触れ、6月に出された「グループ・ガバナンス・システムの実務指針」において、グループ全体のガバナンスにおける社外取締役の役割など、重要な課題が整理されていることを説明しました。「ポイントの一つは、稼ぐ力を担保するために、事業ポートフォリオマネジメントの議論における社外取締役の主体的関与の必要性が指摘されている点です。そのことから、今後は社外取締役の要件として、事業ポートフォリオに深い造詣を持ち、適切な意見を出せることも重要になると考えます」と山田氏。

続いて、制度対応を完了した上場企業の多くが、コーポレートガバナンスをより高度化するための自主的な取り組みを進めている現状に触れ、検討を要するテーマとして、取締役そのものの役割が今後変わってくるであろうことや、独立取締役の重要性、そこに関連しての指名・報酬委員会の活用、さらにはサクセッションプランやインセンティブの設計の必要性にも言及。「このように具体的な検討項目は非常に多岐にわたるため、これまでコーポレートガバナンスは総務部門が対応することが多かったのに対し、経営企画や人事が横串で検討していくべきものに変わってきています」と指摘しました。

本題である「ガバナンス強化に資する社外取締役のあり方」については、社外取締役の役割が増えていることから、社外取締役を迎え入れるための仕組みの再整備が必要だと解説。「自社にとって必要な社外取締役の要件を明確にするとともに、選任プロセスとルートを確保することが重要になります。また、社外取締役が役割を発揮するための仕組みも必要で、リスク軽減措置の整備・見直しはもちろんのこと、サポート体制の充実も重要な要件と言えます」とコメント。さらに、中長期目線において、社外取締役の責務や要件に「ESGやSDGsへの見識・対応力」を含める必要性なども、検討事項として提示しました。

【第一部 2】
変化する社外取締役の役割と処遇の考え方

第一部の2人目の講師として登壇したのは、株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長・シニアマネジャーの青木昌一氏。社外取締役のスキル、選任プロセス、処遇の考え方に関する実務的な対応方法について講演しました。

青山氏は冒頭で、社外取締役の責任が重くなっている現状に触れ、社外取締役候補者の提案に関して機関投資家はさらに厳しい条件を設定し、議決権の行使を行うようになる可能性が高いと指摘。「社外取締役の選任議案に対する条件に保有スキルや能力の証が求められ、複数企業の役員を多く掛け持ちすることや、本業の片手間に取り組むことは容認されなくなってくる」と予測します。

青山氏は社外取締役の要件として次の3つを解説。1つ目は「実績」で、上場企業やベンチャー企業の経営経験者、専門分野の第一人者などが対象となり、スキルマトリックスを整理することで社外取締役に求めるスキルはある程度洗い出すことが可能といいます。2つ目の「コンピテンシー」は、一般的に行動特性や行動能力と言われるもの。客観性や、正確性・合理性を追求する精神、公平性と良心など、経歴だけでは見えにくい側面を把握する重要性を指摘し、理由として「いくら高いスキルや実績を有していても、行動に移すことができなければ、取締役会での責任を果たせない可能性があるため」と説明。3つ目は「時間」で、社外取締役として経営の監督を行うには「相応の時間」が必要であり、それを確保するためには「相応の対価」も必要になると解説しました。

社外取締役の報酬については、一昔前までは当たり前だった、取締役に役位を付けて序列化することは、現在では監督と執行の分離の観点からも避けるべきだと指摘。あるべき姿として、取締役はフラットにし、執行役位に序列をつける形が望ましいと語ります。そのため、社外取締役の報酬を考えるよりも先に、執行役員を含めた取締役全体の人事フレームや役位の体系をしっかりと議論して固めることをアドバイス。その上で、それぞれの役割に対する固定報酬を決定することによって、「自社のあるべき報酬について理論武装をしていく」必要性を説きました。

続いて、社外取締役の変動報酬(インセンティブ)については、JPX400のうちインセンティブを設けている企業は2018年3月時点で全体の16.8%(66社)であることを紹介。「かつては社外取締役にインセンティブは向かないという見方もありましたが、今後インセンティブは重要になってくると考えます。ただし、短期インセンティブでは、社外取締役が果たすべき監督機能との相反が起きる可能性があるため、中・長期インセンティブの導入が望ましい」と説明。また、社外取締役の力を発揮させるために、社外取締役に対して必要な情報提供などを行う独立したサポート組織の重要性も指摘しました。

【第二部】
リスクを軽減する社外取締役選任方法

第二部では、パーソルキャリア株式会社 タレントアライアンス事業部 i-common ゼネラルマネジャーの荒井雅人が登壇。スキルや相性を確かめた上で社外取締役を選任するという、新しい社外取締役選任方法を紹介しました。

i-commonは、各業界や各専門領域で培われたプロフェッショナルの知見や経験を、事業成長や社会発展に活かしていくことをコンセプトにした、新しい形の経営支援サービス。「業務委託」「職業紹介」「独立役員紹介」を3本柱にサービスを展開し、登録専門家は現在約13000名。新規事業やAI・IoTといった新しい分野から、マーケティング、人事領域、経営基盤の強化まで、多岐にわたるテーマにおいて約2150社、6000件以上の支援実績があることを報告しました。

その中でも、独立役員紹介サービスについては、2019年6月より新たに専任チームを立ち上げて注力していることを紹介。「背景として、独立性を担保した社外役員が量的に不足し、どう探していいのかわからないというお話をいただくケースが増えています。一方で、独立性を優先して人脈以外で探すとなると、その方の実績や人柄まではなかなか把握しきれず、実際に選任に踏み出すには不安があるとのお声も多くあります」と荒井氏。

そうした声に応えるi-commonの独立役員紹介サービス。特色は大きく3つあり、1つ目は、就任前に数カ月間のフィジビリティ活動を通してスキルや相性の確認を行うことで、ミスマッチなどの「リスク軽減」が可能なこと。2つ目は、上場企業役員経験者をはじめとする約2000名の独自データベースから要件を満たす人材を紹介することでの「独立性の担保」。そして3つ目が、候補者の実績やスキル、人脈を可視化した上で紹介するからこそ可能となる「企業価値向上」。可視化については、スキルや専門分野、スタンス、人柄、ネットワーク、実績、条件など数十項目にもわたるアセスメントを専任チームが行い、質の高いマッチングを行っていることを説明。最後に、実際の登録者の一例や支援事例を紹介しました。

社外役員として活躍するi-common登録者の一例
https://i-common.jp/advisers/

独立役員紹介の支援事例
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(https://i-common.jp/casestudy/ma-cp/

まとめ

今回のセミナーは、パーソルキャリアと日本総合研究所の共催で実施されました。当日はあいにくの空模様ながらも、講演スタートの時点から、約150名の参加者で会場は満席に。終了後には、登壇者に個別に相談する参加者の姿もあり、社外取締役活用に対する各社の関心の高さや、課題感の強さがうかがえました。