O2OからOMOへ。アフターデジタル時代のデータ活用の事例と実践

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2021年01月04日(月)掲載

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OMOとは何か?

OMOとは「Online merged with offline 」の略である。私の理解で詳述すれば「顧客の体験をOnline・Offline問わずに融合すること」と言えるだろう。そもそもOMOの前身である概念としてO2O(Online to Offline)が存在した。最終目的地であるオフライン(実店舗)への送客やデータ連携をWEB上=オンラインで提供するというマーケティング起点のアクションである。基本的にこのベクトルは単一方向であり、WEBから実店舗へ、という流れが固定化されていた。

一方、OMOは更なる顧客の変化とテクノロジーの変化に対応した新しい概念である。現在において生活者はオンラインとオフラインをシームレスに移動している。例えば衣類を購入するとした場合、普段利用しているSNS上で情報収集し、気になったものがあれば実際に店舗へ行き試着をする。そして、ECやフリマアプリにて、よりリーズナブルに商品を探し、購入自体はEC上で実施する。このようなWEBから実店舗へといった一方向の動きではなく、オンラインとオフラインを自分のラクなように行き来するのが現代の生活者なのである。

こうした顧客の行動を取得できるようになったのも、スマートフォンの普及が大きいと考える。顧客と企業は、スマートフォンによってありとあらゆるタイミングで接することができるようになった。加えて、近年決済手段が大きく多様化することによって、決済のデータも活用できるようになった。こうして情報収集段階から購買まで、マーケティングファネルの上位から下位まで全てを補足することも可能な状況になったのである。

データ活用視点におけるOMOはこうしたあらゆるファネルにおける顧客情報の統合をすることにより推進される。本稿においてはデータ起点におけるOMOを解説する。

OMO戦略を支えるデータ基盤の構築

OMOにおいてのデータ活用を推進する際に、最初に考えるべきことは、可 能な限り多くの顧客接点を創出するということである。データ分析をするために必要なのは(トートロジーのようになってしまうが)、データである。データそのものの物量がなければデータ分析をすることはできない。仮にデータ量が数百程度であれば、統計的にも分析することが難しい状態になる。顧客と接点を創出し、データ量を確保することがまず第一歩になるのだ。

自社の顧客の活動においてデータ量が確保できそうな部分はどこなのか。そのような視点で、まずデータ取得可能な環境を整備する必要がある。例えば、小売店舗であればECを用意することから始まるだろう。ECは純粋な購買のデータだけでなく、登録時のデモグラフィックデータ、購入に至るまでの顧客の行動などあらゆる活動をデータ化することができる。更に言えば、実店舗での購買とECでの購買は同じIDで確認できるとなおよいだろう。そのために顧客にID登録をしてもらうことも必要となるはずだ。

モバイルアプリを用意することも効果的である。最も顧客の近くにあり、且つ活動が多いアプリを用意することで、顧客の動きをつぶさに記録することが可能になる。2021年、2022年にはWEBブラウジングにおけるCookie利用が厳しく制限されることが確実となっており、WEBにおける行動記録やそこからのマーケティング活用が難しくなるだろう。アプリ接点を持っておくことは非常に重要なアクションとなると考える。

そして、こうした様 々な接点におけるデータを管理・利用するためのデータマネジメントプラットフォーム(DMP)の構築も必要であろう。近年DMPの構築はクラウドサービスやマーケティングダッシュボードサービスの充実によって、構築・維持管理コストが大きく低減した。自社データを管理統合するプラットフォームを持つことは、データ分析・アクションをする上で重要な一手となる。なお、データを蓄積するにあたり重要なのはデータを個人に紐づかせることである。

いくら大量のデータが蓄積していても、散漫な状態ではデータ分析をすることはできない。個人に対して可能であれば1つのIDを付与し、そこに購買行動や探索行動のデータを蓄積することで、生活者起点での分析をすることが可能になる。

OMOのデータ活用における成功の手段

前項でOMOにおけるデータ活用に必要な基盤構築について述べた。しかし、難しいのは、ありとあらゆる企業がこうした行動を取ることによって、結果的に生活者との接点が複雑化しているということである。確かにデータを取得するうえでスマートフォンのアプリの活用は有効であるが、人ひとりがスマートフォンで活用するアプリの絶対量には限りがある。そのため、全てを自社アプリでやるということは現実的には難しいだろう。

この問題の解決には2つの手法がある。1つは「アプリを使うと顧客の体験が向上する」という状態を作るということだ。例えば、CRISP SALAD WORKSというカスタムサラダ専門店では、アプリを活用することによって、カスタムしたサラダを店舗で待たずに受け取ることが可能である。つまり、アプリを使えば店舗での待ち時間が減るというメリットがあるのだ。こうした動きはマクドナルドのモバイルオーダーアプリでも可能で、飲食チェーンでは広がっていく動きである。加えて、アプリを使うことでデリバリーも可能となった例もある。店舗で受け取る際も、届けてほしい時も常にアプリ起点で実現可能な体験となっており、アプリを使うことに明確にUXとして体験が向上するならば、顧客は喜んでアプリを使いデータを蓄積するということになる。

もう1つは、「データを持つプラットフォーマーと連携すること」である。人の行動のデータを取ると言っても、生活者の行動は非常に幅広く、自社だけの視点で見れば取得できるデータには限りがある。例えば、商業施設を持ち1次流通を担う丸井は、2次流通を担うメルカリと業務提携しデータ連携を行っていくと発表した。CtoCマーケットプレイスであるメルカリには、中古品・新古品販売データが豊富に存在する。こうした2次流通のデータは、1次流通である丸井にとって、自社では取得できないデータである。しかし、2次流通ニーズが高い商品は1次流通でもヒットになる可能性がある。あるいは価格の下落率などを見ても商品の価値を理解することもできるだろう。このように、データを持つプラットフォーマーと連携し、必要なデータを拡充するという手法が存在する。

OMOにおいて大切なこと

全てを自社のアプリやWEBサイトに無理やり寄せようとすると、結果的にデータ取得が進まないといった事態に陥ることもある。近年やや落ち着いてはいるが、一時は自社アプリが大量に生まれ、そしてユーザビリティを損ない、多くの自社アプリが消えていった。顧客のユーザー体験・ニーズをよく理解した上で、明確にメリットが生まれる接点をまず検討することが、結果的にデータ活用を推進するという構造になっているのである。

繰り返しになるが、OMOをデザインするのに重要なことは、顧客起点でユーザー体験を考えるということである。決して企業目線や企業の事情を踏まえてデザインしてはならないと私は考えている。デジタル化やOMO推進は手段であり、目的ではない。昨今デジタル化やDXが目的のように語られることが多いが、DXそのもので売上トップラインがあがることはほとんどないであろう(効率化されることは多いが)。

電通デジタルの「日本における企業のデジタルトランスフォーメーションの調査」において 、DXを取り組んでいる企業の半数しか「DXで成果が出ている」と回答しなかった。「非常に成果が出ている」はわずか3%、「ある程度の成果が出ている」が17%、28%が「一部に成果が出ている」と答えており、残りは成果がでているとは言えない、という回答である。

顧客との接点が飛躍的に増えているということは、あらゆる企業が様々なタイミングでアプローチをかけることができるということでもあるだろう。つまり、顧客起点でユーザー体験を向上するという大目的をおろそかにすれば、より良い体験を提供している企業に容易に機会を奪われるということでもある。だからこそ、顧客起点でOMOを進める必要があると私は考えている。

執筆者T.N氏

大手広告代理店にて、一貫してマーケティング部門に従事。その後、フリマアプリ運営企業にて、オフライン/オンラインを問わない統合マーケティングを経験。独立後、オンラインだけではなくオフラインでの顧客接点や顧客体験とを融合させたマーケティング・PR戦略の立案・実行支援を行っている。

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