アニメーション・キャラクターを利用した新規事業開発

新規事業

2020年06月02日(火)掲載

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はじめに

2020年1月からの僅か4−5ケ月ほどで、世界中の人々の生活・文化や政治・経済などは、中国武漢から発生したと言われる「COVID-19」という新型コロナウイルス感染症の破壊的な伝播力で全く様変わりしてしまった。この原稿を書いている2020年5月現在では韓国、台湾、ニュージーランド、ドイツ及び一部北欧諸国など、政治がCOVID感染症対策を上手く実施した国は徐々に元の生活を取り戻そうとしているが、日本を含めたそれ以外の国でも感染者と死者の急増で苦しんでいる。
このことが今後の世界全体の経済等にどのような影響を与えていくかは現時点では全く不明である。よって、このコラムは2019年までのアニメーションやその他エンタテイメントコンテンツ関連の動きを中心に書いているということを予めご了解願いたい。

過去40年のエンタテイメントビジネスの動向

さて本題に戻り、最近のエンタテイメントの動きとして1980-2019年までの40年間を振り返りたいと思う(そのうち1990-2019年の30年は筆者がエンタテイメント業界に従事している期間)。

エンタテイメント業界の某大手企業が、1980年以降、テーマパーク事業という当時としては目新しいビジネスを開始し、某巨大テーマパークが瞬く間に絶大な人気の場所となったのは記憶に新しい。元来、そのテーマパークのアニメーションは、映画として日本でも長く親しまれてきたため、テーマパークになっても人々に全く違和感はなく、寧ろ「パークオープンを待っていた」のだろうと考える。この人気と認知が急激に広まったことにより、エンタテイメントという業界全体も改めて人々の耳目を集め、注目度が大きく上り、活躍の場が広がったのが1990年代と言える。その証拠に、新たに屋内型テーマパークが1990年に営業開始となり、欧米や日本の映画/ゲーム/ライセンス商品/漫画なども一気に増えた。中には今でも(25年以上も)高い人気が継続している漫画が1990年代半ばにいくつも生まれている。そして中には直ぐにテレビアニメが制作されたものもある。続いてライセンス商品も開発、販売された。そうした動きに加えて、中国に本社を構える情報・通信業の大手企業が1999年に創業され、エンタテイメント商品のインターネットを介してのビジネスが巨大市場の中国で盛り上がり、さらに国内では2000年初頭にCool Japanなる言葉と組織まで組成されるなど国を挙げての盛り上がりが続いた。

アニメーション/キャラクターの利用方法について

由来、エンタテイメント制作は感性を司ると言われる右脳の役割が大事で、一方人間の生活で必要な科学など論理を司るのは左脳の役割という形式で理解される。エンタテイメント業界にいる我々がよく言うのは「世の中にエンタテイメントは無くても人間は死なないが、衣食住は人間が生きていくためには必須である」ということだ。つまり最近の流行で言うと「不要不急」ということだ。そのため、今回 もイベント/コンサート等エンタテイメント関連は真っ先に自粛要請をもらってしまうことになった側面もある。従って、ビジネス上で戦略を語る際には、どうしても論理的な数字よりも人の感情・感性・好き嫌いなど右脳中心の把握・理解しづらいもので語ることが多い。

若干話が外れたが、’90~’00年代に隆盛を迎えたアニメーションは、どのような形でビジネスとして利用されたかについて語りたい。

読者もよくご存知のように、元来アニメーションや漫画は、主として「子供向け」の商品であるため、玩具との相性が非常に良い。多くの版権元(著作権保有者)は自社が持つアニメーションや漫画を玩具企業にライセンスする形で商品を制作・販売することが多い。日本の玩具会社はほぼ全て何らかのアニメーションや漫画に登場するキャラクター(ファンシーキャラクターとも呼ばれる)を使った商品化の経験があると考えられる。つまり、まずアニメーションや漫画の使い方の最初の事業が、いわゆる「商品化(Merchandise)」であると言える。その商品を製作して、各種小売店やイベントなどで販売する。次にアニメーションで使用されている音楽やビデオの出版(今ではインターネットで非常に多くの楽曲・ビデオが定期購読(=サブスクリプション)されている)、そしてあらゆる種類のゲーム(ゲーム機向け/携帯用ゲーム/PC)等も使用用途として多くある。それに加えて単なるライセンスを受けた商品としてではなく、「企業が提供するサービスの販促に利用すること」もあり得る 。

ひとつの例を挙げれば、銀行が自社の預貯金サービスを販促するためにアニメーションのキャラクターを使うというようなケースである。アイキャッチとしてだけではなく、景品(プレミアム)としてキャラクターをデザインした銀行通帳/メモ帳なども顧客に提供することも含まれる。このように、アニメーションや漫画としてストーリーを持つ作品が日本独特の制作委員会で制作され、商品化・音楽・ビデオ出版・ゲーム出版そして各種販促関係で利用されることが多い。もう少し加えるならば、アニメーションをベースにミュージカル制作、芝居、テーマパークのアトラクションなどへの展開もありえるだろう。ここまで広がると、アニメーションや漫画の版権元にとっては大きな金を生むCash cow作品となると考えられる。

そうした活動の集大成ということではないが、多種類のライセンス商品や音楽、ビデオ、ゲームなどを集め、POP-UPショップとして百貨店などがコーナーを作り、期間限定で販売するケースもある。これは、ある程度人気のある作品だと毎年恒例の催事になることも多い。百貨店の雑貨を主に扱う問屋、または版権元が通常取引している問屋に仕切ってもらい、①商品販売拡大②百貨店の販促③作品販促などを目的として行われることが多い。

しかし、百貨店といえば昔は屋上によく遊園地のような遊び場があったが、昨今ではほとんど無くなり、POP-UPショップがそれの変形の一つとも考えられる。筆者自身も子供の頃に何度も屋上遊園地に連れて行ってもらったが、あれはよくできた「シャワー効果」の典型であったように思う。まず小さい子ども連れが屋上遊園地で楽しみ、その後、昼時には上層あたりの食堂階でランチを食べて一服する。そして、その階下の婦人物売り場や紳士物売り場での買い物を誘うという流れである。1日を効果的に使える、子供は遊園地とランチで満足し、親は其々の買い物が出来て満足という実に幸せな「昭和の日本の家族」の風景が浮かぶ。残念ながら、こうした時代はとうに過ぎてしまったので、今回は新しい百貨店のアニメやキャラクターとの付き合い方を提案してみたい。

意識が進んだ百貨店では「アニメ事業部」のような組織を自社で編成し、新たな収益源を探る活動が少しずつ出始めたように思うが、私の提案は、ずばり「自社のキャラクターを持ちましょう」というものだ。アニメーションはゼロから制作すると膨大なコストが掛かるのだが、それを「コストではなく、未来に対する投資である」という考え方をすることから始めたい。『新しい収益源を探す=それは新商品開発と同様な新規事業であり=それは投資である』とマネジメントが考えて号令をかければ、昨今の優れたソーシャルメディアを上手く活用してキャラクターを作り、自社の顧客(ファン)を増やしたい、囲い込みたいと考える若手社員は沢山いると思われる。更に、様々なソーシャルメディアではアニメーションだけでなく、スタンプキャラクターの開発が進んでいるものも多い。これに投資をして自社のデザイン(=著作物)を確保し、さらにストーリーをつけて電子書籍販売サイトなどでの販売を行うことが考えられる。仮に人気が出れば、上述したように商品化をはじめ色々な展開に繋がることも期待できるであろう。

そしてそれらのキャラクターやライセンス商品は、海を越えた国でのライセンスビジネスにも繋がる可能性もある。上述したように、エンタテイメントは数値や論理よりも感覚での作業が多くなるので、成功までの論理的な説明は難しい。従ってこの提案も今の時点では説得力のあるものではないが、魅力のあるストーリーは描ける。それは「高品質が担保された」「日本発」のエンタテイメントは、「Cool Japan機構」として海外でも知られている政府系組織のサポートを得られる可能性が高い、ということである程度のアドバンテージにはなる。

そうした投資としての新規エンタテイメント事業創出をお考えの小売店様がいらっしゃれば、一声お掛けいただければ、筆者も多少なりともお役に立てるかもしれないと考えている。少々筆者の自己紹介になるが、国内外でのエンタテイメント業界30年以上の経験とネットワークを使い、日本と海外、特にアジアとの間にエンタテイメントの橋をかける、そして相互の成長と成功を作りたい、というのが筆者のビジョンである。

ライターH.M氏

1982年早稲田大学政治経済学部卒。約30年間、国内外でライセンス・アニメ製作等のエンタテイメント業務に従事。
2010年、自らシンガポールでアニメ会社を創設し、現地スタジオとアニメ共同制作及び放送を実現。
某独立行政法人のPJTにおいて、日本の中小企業が東南アジアへ進出する分野で活動中。

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