ERP導入のメリットとは?会社経営を失敗しないためのポイント

生産

2019年06月25日(火)掲載

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 製造業の企業において、市場環境の変化に適合するためにERPソフトウェアの導入が積極的に進められています。しかし、中には「システムの導入の進め方がわからない」「全てベンダー任せになっている」「全社的な情報の流れが描けない」など、苦慮される企業も増えております。

 今回はERPの導入で何が出来るのか、また、導入する場合の注意すべきポイントについてご紹介します。

ERPソフトウェアとは

 ERP(Enterprise Resource Planning)を日本語にすると経営資源計画となります。企業内のあらゆる経営資源(人、物、金、情報)を最適に配置し全体を管理することで効率的な経営を目的とする経営手法です。情報システムとしてのERPソフトウェア(以下、ERP)は上記経営手法を実装したシステムです。世界中の企業が実践している進んだ業務プロセスを徹底分析し、それをシステムに取り込みます。

 それ以前はMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画、資材調達、製造、在庫、出荷を計画・実行する手法)といわれておりました。そこから人事、設備、キャッシュなど企業に必要なすべての資源を管理する手法に発展したのがERPと言われています。

 したがって、我々はシステムを通して様々な業務を学ぶことができます。システムはその具体的な動きも示してくれます。非常に多くの仕事のやり方が埋め込まれているのですが、いくつかの総合的な特徴を紹介します。

特徴① One Fact in One Place
1つのデータは一箇所で入力され、あらゆる業務で利用されるというコンセプトです。これによって、組織内の情報伝達を瞬時に行えるようになり、迅速な経営判断を可能にします。

特徴② コンプライアンス統制、内部統制
権限の分離や改竄の出来ない仕掛けが組み込まれています。

特徴③ 国際会計基準
地域や国における税制に対応するとともに、国際的に要求されるルールが組み込まれています。

特徴④ マスター設定による業務標準化
マスターデータを設定することにより、業務の標準化を促します。また、定型的な業務のエラーを防止しスピードを改善します。

特徴⑤ 売上や原価の日々完結(決算早期化)
購入や出来高など実績データは溜めずに会計へ直接連携可能です。これにより決算を素早く締めることができます。したがって仕訳が決まっていないような実績を無くしていく努力が必要ですが、これが標準化を促します。

特徴⑥ 最適生産管理方式の検討
生産は、受注から納入までに必要な期間と顧客に要求される期間の違いによって、受注生産、部品生産、在庫引当などの方式を取ります。しかし、製品ごとに方式を見直すことにより、受注・納入期間の短縮や仕掛・在庫の効率化を図ることが可能です。

工場にERPを導入する際の注意点

 工場に新たにERPを導入する場合に気をつけなければならないことを紹介します。工場には日常的に使うエクセルなどを含めると、数千〜数万に及ぶ個別プロセスが存在します。全てを1つのERPでカバーしようとするならば、少なくとも全ての個別プロセスを再評価・見直しすることが必要でしょう。しかし、現実的には予算、人的能力や投資対効果の制約があり、困難だと言わざるを得ません。そこでなんらかの基準を用い、ERPでカバーする範囲を決める必要が出てきます。

ERPでカバーする範囲を決めるためには以下について考えるべきでしょう。

1.ERPに合わせる業務と競争力に関わる業務の切り分け
 ERPにあわせることのできる業務の領域は、企業にとって共通の機能であり多くの場合競争力の源泉ではありません。しかし、常に素早く正しく業務を行うことが求められます。ERPの合理的な考え方を理解した上で導入すれば、業務の標準化やレベルアップを図ることができます。徹底的にやれば固定費の削減・抑制も可能でしょう。

 計画・調整や分析判断を要する業務など、自社にとって他社と差別化を図るために重要な独特のやり方があるのならば、ERPに合わせることは逆効果になるかもしれません。その場合、ERPはあえて使わず、引き続き自社で考えることが重要です。また、この切り分けをすることでERPの無理なカスタマイズを避けることができます。

2.定型業務か非定型業務か
 生産現場にはERPから製造指示と納期が渡されますが、スムーズに生産ができることはあまりなく、様々な現場の経験値を活用することで数量と納期を達成しています。常に変化のある現場では、ERPは向きません。例えば、現場の物流は毎日工夫され変化していきますが、ERPを使おうとすると納入場所のマスターデータを毎日更新しなければなりません。実際このような更新はなかなかやり切れるものではありません。

 データ入力が追い付かない、同じデータを複数のシステムに入れなくてはならないといったことになると、アイデアは良くても結局長続きしないことになります。また、他システムとのインターフェースの有無、有りの場合、その複雑さを理解しておくことも重要です。

海外工場の場合

次に、海外の工場にERPを導入する場合の注意点をご紹介します。
まずは、海外工場と国内の間の関係を確認します。

① 完全子会社、合弁会社、買収したての会社か
② 本社が海外のICT戦略を決めるか、それぞれで独立させるのか
③ 工場の関係者がICT部門と一緒に海外へ行って活動できるか

上記の条件によって、大きくやり方が異なってきます。
本社、またはマザー工場(日本にあるとは限りませんが)が海外工場の生産や業務の標準化を行い、レベルの底上げを行う目的を想定した場合の注意すべきポイントを列記してみます。

ポイント① リーダーシップの所在
 海外工場にシステム導入を行う場合の人材や予算は、日本(本社)やマザー工場がコントロールできることが大前提です。リーダーシップを取れなければ、標準を示してそれをローカルの活動としてシステムに反映させるくらいのレベルまでしかできません。実力に応じて標準化の目標レベルの設定が必要になります。国内工場においても同様の課題はあると思います。

ポイント② システムに対する考え方の違い
 地域や国によってシステムに対する考え方が違います。一般的に欧米ではソフトウェアパッケージはそのまま使うだけ、それ以上のことは考えないで導入します。日本では仕事のやり方についての考え方にこだわることが多く、苦労することがあります。どちらが良いかということではなく、2つの考え方があることを理解しておくと良いでしょう。システムに合わせた方が進歩するのであればそうすればよいし、システム以上のレベルを目指すのであれば業務設計を自分で考えなければなりません。

ポイント③ ベンダー
 
日本とプロジェクトを行う国両方に拠点のあるベンダーを選択するとコントロールがしやすくなるでしょう。ベンダーにもそれなりの海外での実力が求められます。それが心もとない場合は、社内の人材で体制を強化したり、プロジェクトマネジメント特化型のベンダーを加えるなど工夫が必要です。

ポイント④ 導入の流れ
 標準システムを国内(マザー工場)で確立してから海外工場に導入するのが良いでしょう。そうすれば海外工場へしっかりと新業務の全体が効率よく説明できます。結果的に時間と予算の節約が可能です。

システムを導入する際のベンダーの選定で必要な項目

 まずは、提案や回答のスピードが早いかどうかで、ある程度総合力を推し量ることができるでしょう。スピードが早い場合は、自社で使っているシステムである、自社にエンジニアがいる導入実績が多いなどの背景があり、したがって経験値が高いという判断ができます。大きなベンダーや外資系ベンダーの場合は、海外の本社まで伺いを行うなどの社内ルールがあり時間がかかる場合はありますが、多くの場合、スピードを見ることで判断ができるでしょう。

 長いお付き合いになる場合は、経営が安定している、海外へのサポートが出来る、という事も重要になります。また、その場合は社内にもベンダーと協力して継続的に面倒を見ることのできる部署を置くことを推奨します。

 提案の中身は、わかりやすさや自社のソリューションを持ってくるだけではなく、ユーザー目線に立って広く提案できる、運用への引き継ぎが出来る、得意な事や特徴がはっきりしている、なども重要です。

 声がけをするベンダーをあらかじめ評価しておくことも必要です。開発請負特化型、ソリューション提供型、運用特化型、特殊技術ベンチャー型など、何が得意なのか、公開情報や他社とのネットワークを駆使して調査しておきます。このような調査ができる情報サービスも存在します。場合によっては日本に限らず海外にも目線を広げることをお勧めします。今日では、グローバルどこからでもサービスを受けることが可能です。

 システムを有効に使うには、適用する現場や業務とシステムの相性に関する基本理解が必要です。その上でベンダーにどのような協力が必要か伝える必要があります。決して丸投げしてはいけません。

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