企業競争力を高めるための戦略購買とは?購買部門の役割や課題

調達

2020年03月18日(水)掲載

「購買」と一言で言うと、ただ仕入れるだけの業務に過ぎませんが、高い利益率を出す、継続的に買い取れる仕組みをつくる、という意味では、「購買戦略」が必須です。

「購買」ひとつとっても、「戦略」立てていく必要があるということです。

購買部門はなぜか軽視される傾向にあります。しかし、製造の委託や外注する箇所や部門の管理、計画、仕入れ先の選定、などは決して簡単な業務ではありません。今回は、その購買を戦略的に行っていく方法を説明します。

購買部門の役割

日本産業規格(JIS)では購買を、『生産活動に当たって、外部から適正な品質の資材を必要量だけ、必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系』と定義しており、購買は文字通り、生産に必要な原材料や部品などの資材を買い入れることを意味しています。すなわち、生産計画に従って必要な量の資材を必要なタイミングに供給できるように、仕入先から買い入れておくことを意味します。また、企業によって購買は資材の買入れだけに留まらず、間接資材を購入する仕事も含まれることもあります。またJISでは、購買の仕事の中には、様々な業務があることも示しています。購買を生産計画通りに進めるための”購買管理“もその中の1つです。その他に、製造委託、外注管理、国際購買、購買計画、発注、受入検査なども重要な業務の1つとして認識されています。

そして、購買で特に重要として考えられている責務が、仕入先の選定です。企業の生産計画通りに生産を進め、かつ高い品質を維持するためにはそれに見合った生産能力を持ち、一定の品質が担保されている仕入先から資材を仕入れる必要があります。たとえ同じ資材を生産している仕入先であっても生産能力や品質は仕入先毎に異なるため、自社にとってベストな仕入先を選択する必要があります。

その基準となるのが、”品質(Quality)・価格(Cost)・納期(Delivery)“です。品質基準にそぐわない資材を調達すると自社製品の品質低下を招くことから、品質基準を充分吟味しながら慎重に検討することになります。すなわち、仕入先を開拓するにあたり最も重要になるのが品質です。次に、コストを限りなく抑える必要があります。コストを抑えることで、自社の製品価格や利益に反映させることができます。そのために積極的に価格交渉を行うことに要求されます。最後に、納期に合わせて滞りなく生産が行われるかどうかを仕入先に確認し、連携することも重要な仕事の1つとして認識されています。そして、これまでの調達購買は先にあげた購買管理の仕事を粛々と行うことで充分評価をされていました。

POINT

・購買とは、生産に必要な資材を良いタイミングで供給できるように買い入れておくことである。
・購買の業務は、購買管理や製造委託など多岐にわたる。
・購買の最も重要な責務は「仕入先の選定」で、「品質、価格、納期」を判断基準にする。

購買戦略が大事になってきている

しかし現在では、企業が継続的に高い利益を生み出していくには『購買戦略』が欠かせません。しかしながら、購買部門の役割を誤解している企業も多く、正しい購買戦略を打ち出せていない実例も多く見受けられます。そこで、購買部門の役割とその重要性を理解しつつ、購買戦略とは何かを考える必要があります。

POINT

・購買戦略が求められる時代になってきている。

購買部門の現状と課題

購買部門にとって最大の使命とは、品質を高めてコスト(仕入れ価格)を下げることです。しかしながら、多くの企業ではこれを怠っているケースが多く、また品質を下げて仕入れ価格を下げる、という選択肢を取る場合もあります。

しかし、品質を下げてコストを下げることは誰にでもできます。そうすると、結果として、企業の経営方針に悪影響がでることとなり、また経営層のトップの考え方自体が、品質を下げてコストを下げることになっていると、購買部門に優秀な人材が集まることは起こりえません。購買部門の役割はマーケティングや営業・研究開発部門の要求・要望を満たしたり、また積極的に商材を開発したりすることになります。それに加えて、品質を高めながら、コスト(仕入れ価格)を下げることが使命にあるが故に、現状とは異なった知識や知見が必要になることは言うまでもなくありません。

では、購買部門が持つ課題とは何でしょうか?購買部門は、マーケティングや営業・研究開発部門から言われたことだけやっておけばいい、というわけではありません。しかし、現実にはこのような考えを持って購買活動をしている方が結構います。まずは現状を理解し、この考え方を改善していくことが最初のステップではないでしょうか。

課題その1:サプライヤーソーシング活動の欠如 現状では購買部門の中で、自ら飛び回って仕入れ先を開拓するような人はほとんどいません。ほとんどが代理店や商社にお願いして仕入れ先を探していただいています。その結果、品質を高めてコストを下げることがほとんどできておりません。また、付加価値の高い買付けも結果として出来ません。

課題その2:コンプライアンス違反
購買部門は企業の数ある部門の中でも不正の温床になりやすい部門です。サプライヤーが仕事欲しさ故に購買部門にコンタクトし、不正がおこります。サプライヤーはそれらのお金を購入価格に上乗せしますので、結果として、価格優位性が全くない購買活動をしていることになります。

課題その3:サプライヤーへの敬意欠如
サプライヤーは日々創意工夫を重ねて商品開発を行っていますが、そのサプライヤーへの敬意が欠如している購買部門も多く見受けられ、良質なサプライヤーとの取引はできなくなっているところもあります。また購買部門の仕事はサプライヤーを叩くことと思っている人が多いのも現状です。このような状況ではいわゆるWINーWINの関係が生まれてくるはずもありません。

以上のように、購買部門が抱えている課題・問題は深刻なものです。ここで購買が変革を為しえない限り、購買戦略から事業を立て直すというチャレンジは意味をなさなくなります。

POINT

・購買部門の最大の使命は、仕入品の品質を高めてコストを下げること。
・購買部門の抱える課題は3つあり、「サプライヤーソーシング活動の欠如」「コンプライアンス違反」「サプライヤーへの敬意の欠如」である。
・3つの課題を解決しない限り、購買戦略から事業を立て直すことはできない。

戦略購買への変革ステップ

上記の現状と課題を踏まえて、戦略購買へのステップとして取るべきアクションは、
A:購買組織マネジメント、B:サプライヤーマネジメント、そしてC:ステークホルダーマネジメントの3つに集約できるものと考えます。

A:購買組織マネジメント
購買部門で働くにあたって適した人材は、倫理観をもっている・数値に強い・全体を俯瞰できる眼を持っている・バランス感覚がある・フットワークが軽い・戦略眼を持っている、の資質を持っていることが望まれます。このような人材がいれば積極的に他部門から購買部門に異動させます。或いは、外部から採用します。そして、積極的に購買部門の人をトレーニングします。人材は人財です。購買部門はHigh Performing Organizationになることが期待されています。

B:サプライヤーマネジメント
これからの購買部門は次の三つの逆転発想が必要です。

1、サプライヤーをパートナーとみなす。
バイヤー企業が偉く、サプライヤーはそれに従うという上下関係から脱皮することです。

2、サプライヤーへの情報を秘密にするのではなく、オープンにする。
バイヤー企業の情報をサプライヤーへ開示することにより、お互いの本意を見せ合いながら一丸となって革新的なものを創り上げることです。

3、Win-Winのコラボレーションを目指す。
利益共同体として、サプライヤーを定義しなおすことです。この三つの発想を実現させるものは、相互信頼を基本とした、“戦略的癒着”と考えます。

C:ステークホルダーマネジメント
会社として最適な結果を得るために必要な社内活動のことを意味し、社内要求を的確にコントロールして企業として最適な要求を満たすソーシング活動を行うことであると考えます。すなわち、不必要な要求を見極め、複雑さ・納入タイミング・仕様のばらつきを削減することをバリューと考えます。

POINT

・戦略購買への変革ステップは「購買組織マネジメント」「サプライヤーマネジメント」「ステークホルダーマネジメント」に集約される。
・サプライヤーをパートナーをみなし、情報共有しながらWin-Winの関係を目指す。
・不要な要求を見極め、シンプルな仕様にしてばらつきを削減する。

最後に

購買とは、自社の生産・販売活動に必要なモノを買う仕事で、優秀な購買部門の担当者とは、以下の4つのスキル・ノウハウ・スタンスを持つ人材です。

1)自分が納得するまで価格に妥協しない
2)高いハードルに挑戦する
3)早く仕事をこなす。
4) 以下の5つの矛盾する要求を可能な限り満足させながらマテリアル・サービス・物品を調達する
①最高品質のモノ
②最高技術を有するモノ
③業界最安値なモノ
④最短納期のモノ
⑤支払いサイトが業界最長のモノ

さあ、購買部門の皆さん、World Class Procurementを目指して前進して行きましょう。

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ライターK.I氏

簡易経歴:1981年に国立大学工学部醗酵工学科を卒業。5年間日本企業勤務の後、アメリカ系外資で18年サプライチェーンを担当。MRPIIなどのプロセス導入に尽力。その後、16年間2社の外資系製薬会社で購買マネジメントに従事(特にカテゴリーマネジメントとステークホルダーマネジメントに力を注ぐ)

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