企業におけるSNS活用方法~投下型アプローチからの脱却~

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2019年10月03日(木)掲載

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SNS活用方法~顧客第一主義を実現するSNSの活用方法とは~

*リープフロッグ現象により、生まれて初めて手にする端末がスマートフォンやタブレットという、いわばデジタルネイティブと呼ばれる世代の比率が高まり、これまでのメディアやアプローチでは企業からのメッセージが届きづらくなってきています。

各種SNSはサービスを開始して既に10年以上が経つにも関わらず、まだまだ企業での活用は他メディアと比べ消極的で、使い方も広告や公式アカウントを開設する程度でとどまっています。今回は企業におけるSNSの理想的な活用方法を考えてみたいと思います。

*リープフロッグ現象とは
世代を飛び越えて一気に最新のテクノロジーが社会に普及すること。通信端末であれば、固定電話から携帯電話、そしてスマートフォンというように段階を踏まず、デジタルネイティブ世代は生まれて初めて触る端末がスマートフォンやタブレットであり、一気に最先端の技術に触れている。

なぜ今SNSが注目されているのか

企業と生活者という関係を軸に他のメディアと比較をするとわかりやすいと思います。オールドメディアの代表格であるテレビ、ラジオ、新聞などと比べ、リアルタイムでのやり取りがベースである点、そして企業からの一方通行ではなく双方向でのやり取りが可能な点などが挙げられます。

つまり、SNS上では企業も生活者も1”アカウント”という同じ単位であり、同じ目線でコミュニケーションが出来るのが特徴です。

これまで、多くの企業はオールドメディアを使って一方的に情報を投下してきました。発信するのは企業からで、生活者はそれを受動的に受け取っていました。しかし昨今はSNSの普及によって、企業より生活者の方が能動的に発信をするようになり、さらにその生活者同士が繋がることで情報共有がリアルタイムに行われるようになりました。

また、マーケティングという視点で考えると、他のデジタルメディアと比べマーケティングファネルの点からみても、認知、興味・関心、比較・検討、購入で終わらず、購入した後のアドボカシー、つまり他の生活者にその体験を伝えるという段階が追加される、商品やサービスに満足した生活者がまた別の生活者をファネルの中に入れてくれることになります。

そして、SNSは広告配信、公式アカウントの投稿などのマーケティング活動だけに留まりません。デジタル変革の一環として、カスタマーセンターを電話からSNSのチャットにシフトする企業も増えてきています。これにより生活者は電話をかけて、自動音声案内でオペレーターが出るのを待つ必要がなくなります。この取り組みは企業側にとってもメリットが大きく、お客様のストレスを軽減することにより、自社から他社へのブランドスイッチを防ぐことにも繋がります。

また、電話であれば1人のお客様に対して1人のオペレーターが必要ですが、チャットであれば同時に複数人進行することも可能な上、担当者が対応中に入れ替わることも可能となり、コストの削減にも繋がります。

このように、SNSは生活者との距離感を縮め、新規顧客獲得の機会を得ることが期待出来ると同時に、リスク低減やコスト削減にも期待が出来るメディアであるということが言えます。

SNS活用の注意点

これだけ様々な活用が可能なSNSですが、炎上という言葉もあるように、十分にマネジメントをしなければ企業にとってリスクになることも少なくありません。単に流行っているから使うという感覚では危険です。

まず公式アカウントを開設する企業が多いのですが、アカウント開設が無料だからといって無策で運用を開始してはいけません。誰もが知る大企業のアカウントでも運用がうまくいっていないというケースはよく目にします。

何のためにそのアカウントを持つのか、どんな目標を設定するのか、誰がどんな運用をするのかを戦略的に考察する必要があります。

開設した後もフォロワーを増やすために広告を打ち、フォロワーが増えたら一方的に企業やブランドの告知を行う。これでは双方向というメディアの特性を活かせていないばかりか、むしろ企業イメージを下げる結果にもなりかねません。

一方的な告知をしている企業のアカウントは、生活者からするとまるで相手の話を一切聞かず、自分の話ばかりしている人のように見えるのです。それではコミュニケーションは図れません。

このようにSNSはコミュニケーションプラットフォームですから、デジタル上、SNS上であっても、実際に会って話している時をイメージすると生活者と良い関係を築く第一歩になると思います。

顧客第一主義の実現

SNS上で生活者と良い関係を築くために、最初のステップとして企業はソーシャルリスニングなどを採用し、生活者の生の声を聞くところから始めてみると良いと思います。

自社の企業名、ブランド名、サービス名のデータを検索すると量だけでは無く、定性的に生活者の声をリアルタイムに取得できます。また同様に競合他社のデータも取得することで、より全体的に理解が出来ます。

次にそれを誰が発信しているかを理解します。SNSはアカウント名がありますので、私の場合であれば野村とはわからなくとも、「アカウントAという人が自社に対して〇〇と発言しており、とてもポジティブである。」など、例えばテレビCMではただの1視聴者と平面でしかなかった情報が、このように立体的になります。

ここまでのデータを持って、自社の顧客データなどと突合することが出来れば、それらの情報は更に立体的になってきます。

ここで企業はようやくその人にあった発信の準備に取り掛かることが可能となります。マーケティングであればその生活者にあったコンテンツを制作し、その生活者及びそれに近しい属性の方に広告などの手法でアプローチすることにより、生活者はその企業からのメッセージを自分ごと化出来るようになります。

例えば、私がある企業からノートパソコンを購入したとします。そのノートパソコンが購入後すぐに壊れてしまったとします。その状況を私がツイッターを使って「Bという企業のCという製品、買ったばかりなのに壊れて最悪!どうしたらいいの?」と発信したと仮定します。

そうするとそのテキストデータを同社は取得することで、私に同社のツイッターアカウントを使ってカスタマーセンターのチームがダイレクトメッセージを送ってきます。「A様、この度の投稿を拝見して連絡をさせていただきました。B社の〇〇と申します。弊社のC商品がすぐに壊れたということですが、具体的にどのような事象でしょうか。電源が立ち上がらないでしょうか。このボタンを押して再起動は出来ませんでしょうか。」などといった具合です。

その後私が返答し、このサポートを受け入れたタイミングで、同社は端末のシリアル番号などを聞くなどを行ない、自社の顧客データと繋げます。

そうするとこのAさんは”野村さんという名前で、15年前から顧客。これまで5台買い替えてくれているロイヤルカスタマーである“ということがわかり、そのロイヤルカスタマーが怒っているということがわかるのです。

カスタマーサポートチームはこの状況を理解した上で対応を行うことが出来るのです。また同時にこの情報を広告宣伝部門や、マーケティング部門に共有することで、私への広告やアプローチを問題解決まで止めることが可能となります。デジタル上ではクレームを出しているタイミングで同じ企業から広告が当たることも珍しくありません。

さて、その後問題が解決され、私がそのサポートに満足したとします。そうするとそのタイミングで解決済みという状況と現在所有しているCという商品の情報がマーケティングチームに送られます。これによって現在使っているCの後継機種がリリースされるタイミングでその製品のコンテンツの広告やダイレクトメッセージで私にアプローチすることが可能となり、広告においてもパーソナライズされた発信がされる、といった流れになります。

このようなアプローチがデジタル上における顧客第一主義のためのデジタル変革です。このようにSNSを活用することにより各部門で連携し、一生活者に寄り添い、一企業として一貫性のあるメッセージを発信することが可能です。

このようにSNSは単なる広告の新しい配信先や発信ツールではありません。企業がSNSによって生活者との距離を縮め、今その生活者の状況に合わせたコミュニケーションを図ることで、デジタル上においても顧客第一主義の実現、”おもてなし”を提供することが可能となるのです。

ライター野村 肇氏

indaHash Country Manager、ビジネスデザイナー、マーケティング戦略アドバイザー。ベンチャー創業、米ユニコーン企業の日本及びアジア圏の事業開発などを経験。現在大手ブランドを中心にデジタル変革からマーケティング及び営業戦略の策定、実行まで幅広く支援。

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