再生可能エネルギーの未来予測 ~FIT終了後のビジネスチャンスを考える

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2019年08月26日(月)掲載

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FITからみる再生可能エネルギー産業

2012年に始まった再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(Feed-in Tariff 以下、FIT)。一大産業を生み出したこの制度も、最近になって特に太陽光発電はそろそろ終焉を迎えつつあると噂までされるようになりました。一体、何が起きているのでしょうか。

今回は、再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力など自然によって生み出される電気(以下、自然エネルギー)にフォーカスして、FIT終了後のトレンドを予測し、今から準備しておくべきビジネスチャンスについて考えてみたいと思います。

そもそもFITとは、再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換した電気を、電力会社が一定価格で、10年もしくは20年間の固定期間で買い取ることを国が法律で定めた制度です。買取期間は系統連系への最大送電容量によって定められ、買取価格は当年度時点での投資対効果から算出される調達価格として毎年定められます。

例えば、FIT初年度、太陽光発電は買取価格が40円(税別)であったものが、2019年度には14円(税別)にまで引き下げられました。これは、当初から比べると発電コストが40分の14にまで引き下がったことを示しており、国が企図していた再生可能エネルギー普及は太陽光発電に限っては大いに成功したと言えます。

再生可能エネルギー業界(太陽光発電・風力発電・バイオマス発電・地熱発電)の変遷

今後の自然エネルギーの業界トレンドについて考察する前に、全量買取制度開始から現在に至るまでの再生可能エネルギー業界の全体について振り返りたいと思います。一言すると、太陽光発電以外は、決して成功しているとは言えない状況であるだろうということです。では、ひとつひとつ、普及に成功した太陽光発電と比較してみます。

風力発電は一定量の風が吹き続ける地域が限られている日本の気候や地勢には投資リスクが高く、大企業しか参入できず拡大していません。太陽光の場合には正確な日射量が各機関によって計測されており投資予測に正確さがありましたが、風力データは太陽光ほど計測地点は多くなく正確さに欠けます。また、投資費用が太陽光に比べて桁が上がることも、拡大していない理由の1つです。

バイオマス発電は燃料別に買取価格が定められています。燃料別に定められている理由は発電技術が異なるからです。発電技術が異なると言っても、全てのバイオマス発電に共通していることが燃料を燃やすということです。燃やす機械が20年もの間、正常に動き続ける保証があるかどうかという点が投資家の不安を拡大させ、太陽光発電と比べて投資リスクが高いため、太陽光発電ほどは普及していません。

地熱発電は、火山大国である日本にとってはとても魅力ある発電方式でしょう。しかし、バイオマス発電と同様、20年間、機械が正常に動き続ける保証がないこと、またエネルギー源の安定化に不安(地熱は人的には制御できない)があること、地熱利用可能な地域は温泉などの観光地が多く温泉水枯渇を懸念した住民や企業による反対運動などがあります。これらの種々のリスクを考慮すると投資が起きにくい背景が、阻害要因として挙げられます。

では、なぜ自然エネルギーが多くの企業に注目されてきたか

日本の再エネ制度の中では群を抜いて成功した太陽光発電も、冒頭で述べたように(いつになるかはわかりませんが、)FITでの運用は近い将来に終了することになるでしょう。では、この数年間に、多くの企業が太陽光発電に注目・参入した背景には何があったのでしょうか。この切り口から、次のビジネスチャンスをうかがってみたいと思います。ここでは4つのポイントについてまとめます。

ポイント①
国が20年間売電保証する事業であり長期間固定売上を実現する投資対象として注目された。

ポイント②
太陽光発電は、特別な技術やノウハウを持たなくても建設できた。

ポイント③
自然エネルギーのクリーンなイメージや大企業にしか参入できなかった発電事業の開放によるビジネスチャンスなど、多くの事業家の関心を集めた。

ポイント④(筆者はこれが最大の理由と考えています。)
一般投資家が投資できる金額、具体的には1か所2000万円以下で表面利回り10%以上を実現できた。いわゆる低圧案件という日本独特の発電所を提供できた。

現在の自然エネルギーを扱う業界におけるトレンド

自然エネルギーの最大の弱点は、その名の通り自然任せであるということです。人が欲しいときに必要なだけ電力供給できない自然エネルギーをどう制御するかということが最大の課題です。その課題解決策として最近注目されているのが、VPPやDRと呼ばれるものです。

VPPとはバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)、DRとはディマンドリスポンス(Demand Response)のことです。この2つを手段に用いて、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB : Energy Resource Aggregation Businesses)が、自然任せのエネルギーを社会全般に効率的に利用できる考え方です。ERABを再解釈すると、「分散型協調発電所群」と表現できるでしょう。

VPP、DR、ERABはすでに多くの場で取り上げられておりますのでここでは個別の説明は省きますが、当コラムの主題であるビジネスチャンスとこの3つの要素の結びつきについて考えていきます。

今後の再生可能エネルギー業界のトレンド予測

問題があるところにビジネスチャンスがあるといわれます。今後、3年後5年後に注目を浴びるのであろう再生可能エネルギー業界のトレンドやテクノロジーについて、ERABの実現のために必要な課題解決策の提示という切り口でまとめてみます。

まず、当コラムが対象とする太陽光発電を含む自然エネルギーの問題点について今一度、捉えなおしたいと思います。2014年に起きた九州電力が接続許可を一時的に見合わせた、いわゆる九電ショックに自然エネルギーの問題点が凝縮されています。

1)送電網に供給の限界がある。
2)需要と供給とが不均衡になると連鎖停電が起きる可能性がある。


1) はそもそも電気を送ることができるのかどうかという問題、2)は発電したものがかえって悪さを誘発するという問題です。

いずれも、原因は人的要素と自然的要素の不均衡にあります。風力発電所は風が強いところに設置すべきですし、太陽光発電所もできるだけ安くて広大な土地に敷き詰めて設置すべきです。つまり発電量をより多くし、コストをできるだけ引き下げたいという経済原理がより働くと、必然的に発電所の候補地は人口が少ない地域となります。つまり、電気の需要が低いところで発電されるので、電気の需要が高い都市部や工業地帯に送電しなければなりません。自然と人の問題の第一のアンバランス(不均衡)の問題です。

第二の不均衡の問題は、風も太陽も自然まかせの発電のため、人が電気を必要としているときに自然任せに送電すると、蓄電できない交流電力に多大な悪影響を及ぼします。

以上の事からビジネスチャンスの潮流を見出すことができます。

①需要があるところで発電する。つまり遠くに送電しない。
②需要と供給とを一致させる。つまり需給バランスを制御する。


そして、それらは投資意欲を掻き立てる小型化高利回り発電所を要素とした組み合わせでなければなりません。

太陽と風を使って発電して自家消費し、それでも電気が余ったら、他者に送電するか、蓄電するか、捨てるかを判断する。現在でも、この需給バランス制御を電力会社の火力発電所が担っています。それぞれの発電所の出力側の電力周波数を計測し、その周波数が高くなれば発電量を下げ、周波数が低くなれば発電量を上げるという操作をしています。各発電所は、情報ネットワークで結ばれることなく、自分に課されたルールを一所懸命に守ることで自然と全体最適が図られる仕組みになっています。

少々乱暴な例えですが、インターネットのデータのやり取りも、データを経由する機器間のやり取りが保証されるよう、1対1の約束事をしっかり守っていくことで全体が運用されるようになっています。

送電の分野でも、多地点の発電所が、情報のやり取りをすることなくシンプルなルールを守ることによって全体が最適化されるような技術やルール作りが必要となります。全体最適を中央集権的に行うのではなく、分散化された発電所が個々に判断する方法を考案、構築できるかがカギです。そのため、この分野の技術革新が望まれます。これは、国、電力会社、大学の研究者が取り組むべき課題です。

一方、一般の中小企業が取り組めるレベルの課題としては、発電した電気を自家消費したいと思う家庭や企業を増やすことが挙げられます。これは、技術面というより、BCP(事業継続計画)の側面からも必要とされてきていますので、技術力がなくとも、営業力や提案力で推進できる課題です。

一般の中小企業でも技術面でのチャンスは多くあります。それは、余った電気の活用方法を考えることです。余った電気を使って何を作るか、ということです。多くの方々は、製造機械を動かすことを想像されると思いますが大胆な発想の転換が必要です。農業併設型のソーラーシェアリング、水素精製、仮想通過のマイニング等々も一例ですが、より飛び抜けた使い道を見出した企業が次の自然エネルギーの覇者となるでしょう。

ERABの可能性

東南アジアの経済発展は、多くの日本人の予想や感覚をはるかに超えて進展しています。その象徴的事例にスマートフォンの普及がよく挙げられます。スマートフォンの普及率は、かつて後進国と言われた東南アジア諸国と日本とにはそれほど大きな差はありません。逆に東南アジアの国のほうが高いくらいです。この現象が起きた大きな理由は無線技術の進歩が挙げられます。つまり、有線で通信網を整備するのでなく、無線機器を設置する電柱を次々に低コストで配置することで、一気にインフラ整備できました。この分野では日本の携帯電話インフラ網の技術が活躍しています。

一方、電気の供給についてはどうでしょうか。後進国の多くは、いまだ送電網がしっかり整備されていないエリアが広がっています。このコラムで記述した自家消費型で小型発電所による狭域型ERABを日本でしっかりと構築・実証し、それを東南アジア諸国に提供できれば、日本の一大輸出産業になるでしょう。小型技術のため、中小企業にも大いにチャンスがあると言えるでしょう。

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