不動産業界における新規事業のススメ~具体的な事例、アイデアと進め方の紹介

新規事業

2019年08月02日(金)掲載

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IoT、AI、IT、VR、ドローン等に象徴される技術革新や海外での日本企業による不動産開発、越境EC、インバウンドビジネス等のグローバル化の進展、そして急速に進む少子化、高齢化、人口減少による空き家問題など日本の不動産業界を取り巻く環境は大きく変貌を遂げています

このように激変する経営環境において、企業も人もビジネスモデルも変化を余儀なくされており、一見すると混沌としていますが、逆に言えば、既にオープンイノベーションが各企業で実施されているように、これを素晴らしいチャンスと捉え、積極的に自ら変化を遂げる企業がこれからの躍進企業ではないでしょうか。

またそのような企業がたくさん登場すれば日本は益々元気になります。いまや何かを実現するための要素技術は巷に溢れており、それらを組み合わせて、今までなかった新しいサービスを提供できるチャンスに恵まれた時代だと言えます。皆さまもそのチャンスを発見し、この変化の波に乗っていきましょう。

現状の不動産業界の動向

2008年のリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻に端を発した世界的な金融危機である、いわゆるリーマンショックにより、不動産業者の倒産が相次ぎ不動産市況は落ち込みました。その後、2020年の東京オリンピック、パラリンピックの開催決定を契機に、2012年頃から全国の国家戦略特区を中心とした建設ラッシュ、不動産購入に必要な資金調達のマイナス金利政策、2019年10月の消費税増税前の駆け込み需要等が重なり一戸建て住宅やマンションの売買も活性化し、現在、不動産市況は上向きとなっています

しかし、国内不動産市況の盛り上がりを尻目に日本の人口減少や2020年のオリンピック・パラリンピック後の需要減退を見据え、不動産大手各社はアジア等の成長国にオフィス、賃貸住宅、商業施設開発等に乗り出しています

不動産×IT「不動産テック(不動産IOT)」

一方、不動産業界の新規事業の新しい潮流として、不動産とITを組み合わせた不動産テックは外せないでしょう。新しい不動産投資資金の調達先としての「クラウドファンディング」、不動産仲介や不動産管理の一部の業務をIT技術により自動化する業務支援、物件を見に行かなくても物件が見られる等のVR、外部から自宅の部屋の温度調整や帰宅前にお風呂をセットする等の家に装備されたIoT、空き家をシェアハウスや民泊に転用したり、空きオフィスをシェアオフィスやワーキングスペース、レンタルスペースに転用したりするスペースシェアリング等が主な不動産テックとして広がりをみせています。

この不動産テックの流れは日々急速に進展をしています。

●AirB&Bなどインターネット市場での伸びが大きい

例えば、AirB&Bの活用により、国内の民泊市場も新たな宿泊形態としてここ数年で一気に広がっており、外国人観光客増加の一助となっています。都心の繁華街やショッピング施設に外国人が溢れているのはもはや自然の光景で、爆買いがニュースになっていた数年前の出来事は、いまや昔話となりました。この事例だけでもいかに進展が早いかを感じることができるのではないでしょうか。

少し話は飛躍しましたが、つまり不動産業界とは、個人に対してはBtoCでしかビジネスが成立しなかった時代から、ITの進展により個人と個人(CtoC)のビジネスにも参入できるようになってきている時代だということです。そこでの企業の役割は、消費者同士を結びつけるようなCtoCを成立させるためのプラットフォームづくりも求められています。


POINT

・2020年の東京オリンピック、パラリンピックの開催決定を受け、不動産市場は上向き。
・不動産とITを組み合わせた不動産テック。AirB&Bなど、インターネットを活かした進展が早い事業が特徴的。
・ITの進展により、企業の役割は、BtoCだけでなく、個人と個人(CtoC)のビジネス機会も創出するものになってきている。

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不動産業界での新規事業の例

不動産テックの新規事業の代表例として、借り手のいなくなったような古家や古ビルを活用してシェアオフィス、シェアハウス、民泊等に用途変更をすること等が挙げられます。

シェアハウスリノベーションで利回りが向上した例

ある不動産企業は、築40年以上且つ半年以上空きが出ていた都心の一等地に建つ賃貸マンションの2フロア分を一括して借り上げ、 シェアオフィスへリノベーションを行ったところ、2カ月で満室稼働し、利回りも2倍近くになったという例があります。この例は、不動産オーナーから相談を受けた不動産会社がシェアオフィスを専門に取り扱っている会社と組んでリノベーションを実現したことや、また、シェアオフィス募集の専門サイトを活用したことがポイントとなり、2カ月で満室稼働という成果を上げられました。ここでも、インターネット市場を大きく活用することで、利益を大きくあげています。

●シェアハウス専門の募集サイトへ掲載して成功した例も

シェアハウスにおいても、借り手がつかずにいた物件を不動産オーナーからある不動産会社が借り上げ、シェアハウスにリノベーションを行いました。結果、半年で満室稼働し、利回りは3倍近くになりました。ここでの成功ポイントもシェアハウス専門の募集サイトへ掲載したことが挙げられます。

民泊リノベーションで利回りが向上した例

次に民泊ですが、半年以上空室であった築30年以上の都心の全3戸のアパートを、ある不動産会社が一括して借り上げ、民泊向けの部屋にリノベーションをしました。さらに民泊専門の管理会社と組みオペレーションまで実現させ、民泊専門の募集サイトを利用したところ2カ月で利回りが以前の4倍になりました。 既に民泊専門の募集サイトも多々あり、多言語対応で利用料金の回収まで募集サイトが行ってくれるため誰でも安心して利用することができます。

●民泊の魅力は大人数でも宿泊可能な点

民泊は一般の住宅を利用して宿泊施設を提供する新しい宿泊形態であり、従来と最も異なる点は、大人数でも同じ空間で泊まれるという点です。 年々増加する外国人旅行者は、観光庁の発表によると2018年には3,000万人を突破し、2020年には4,000万人到達を目標としており、民泊の需要も高まりをみせています。 (データ1)

POINT

・シェアハウスに関する事業は、シェアハウス専用募集サイト利用することで発展している例が多い。
・シェアハウス事業同様、民泊に関する事業も、専用サイトを利用することで発展している。民泊は、外国人旅行者が増加している背景も受け、市場は潤っている。
・どういった市場にせよ、インターネットをうまく活用することで、大きく利益をあげている。

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不動産業界における新規事業の進め方とは 

私がこれまで新規事業立ち上げに携わってきた経験から、新規事業を発想する考え方はこの一つだと思います。それは、「いかにして既にあるものを組み合わせるか」です。

今まで全くないものを生み出すことはもちろん大切ですし、そうありたいと思います。しかし、不動産という「一物一価」である唯一無二の資産を扱う際に、その特性を生かした活用を考える方が現実的です。例えば、上記のシェアハウス等の例でも、「古い」「今の顧客ニーズとは合わない」ため、建替えるという発想もできます。ただし、莫大な時間やコストもかかり、普通の賃貸住宅等は既に飽和状態で利回りも期待できません。

それならば、今の住宅の特性を生かし、ニーズのあるシェアハウスにリノベーションをすることで、コストも抑えつつ利回りを上げることができます。古家、古ビル等を活用したシェアオフィスや民泊の考え方も同様です。つまり、「①不動産特性」+「②リノベーションノウハウ(アイデア)」+「③募集プラットフォーム」+「④消費者ニーズ」の4つのパーツの組み合わせで新規事業を考えることができます。

①②は顧客ニーズを満たす商品で③は④の顧客の需要を満たすための橋渡しとなり、ビジネスモデルそのものとなります。

古ビルの有効活用の実例

私がこれらのシェアリング事業を手掛けたころ、古ビルの有効活用相談を受けたことがあります。 この古ビルは表参道という立地のよい場所であったため、①の不動産特性を生かして、レンタルスペースを開設しました。②のリノベーションノウハウは、ダンスフロア等を専門に手掛けている改装業者にお願いして、主にダンススタジオや撮影スタジオに利用できるスペースを作りました。そのころは③の募集プラットフォームの存在を知ってはいました。しかし、コストはかかるものの、立地がよかったため、自前で宣伝をはじめても十分に集客できると高を括り、事業を開始しました。

ところが、ネットやチラシ広告等の宣伝広告費をかけてもほとんど集客できず、赤字が数か月続きました。このままでは撤退となるところまで追いつめられ、ようやく募集プラットフォームの会社に相談をして、募集や運用を任せることになり、初月で当初の想定していた利回りに到達しました。

②のリノベーションノウハウも重要です。私の場合は、レンタルスペースの仕様で専門家に相談して作ったため助かりましたが、もし相談をしていなければ、募集プラットフォームを利用しても、④の顧客ニーズとマッチしない商品のため、利回りは確保できなかったかもしれません。

需要を意識した「組み合わせ」も大事

ところで、皆さんに質問です。海外旅行をする際、その国の風習にあった部屋や寝方をしたいか、それともよくあるホテルと同じような部屋で泊まりたいか、どちらが安心でしょうか。実は外国人にとって、 後者が圧倒的に人気も高く、日本人の思い込みで作った中途半端な和装の部屋や布団部屋はあまりピンとこないということで人気がありません。つまり「組み合わせ」が重要ということです。この組み合わせを間違えると簡単にビジネスが成立するものを遠回りしてしまうという教訓があります。

POINT

・「①不動産特性」+「②リノベーションノウハウ(アイデア)」+「③募集プラットフォーム」+「④消費者ニーズ」の4つのパーツの組み合わせが非常に大切。

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今後の不動産業界の方向性とアイデア

2020年のオリンピック・パラリンピック開催後、不動産価格が下落し、不動産市況が冷え込むのではないかと言われています。私自身も26年間不動産業界に身を置いておりますが、 確かに現状の土地高騰をみていると一旦どこかで落ち着く時期はくるのだろうと感じています。

オリンピック・パラリンピックが契機になる可能性は

それが建設需要の減るオリンピック・パラリンピックが契機になる可能性はあると思います。高値で不動産を抱えている企業や個人にとっては不動産を売る機会を失い、損失を出すことにより不況に陥るマーケットは存在することになるでしょう。しかし、リーマンショック後もそうでしたが、不動産価格が下がることによって、今まで買い控えていた層が動きだし、逆に土地取引が活性化する可能性はあります。新築住宅の需要はどんなに住宅が増えようと一定数は必ず存在し、新築マンション用地は土地を安く買えるほど、消費者に届けやすくなります。

少子化など社会問題に関する課題

一方、少子化、高齢化による人口減少に伴う空き家問題、労働力人口減少による外国人労働者の流入、人生100年時代、副業制度導入等に伴い終身雇用制の崩壊等による小規模事業者の起業の増加等がますます加速してきます。

空き家問題に関しては、シェアハウス、民泊等の活用がありますが、最近では民泊が営業日数180日という制限があるため、営業制限のない旅館業へ民泊事業者が切り替えを行っています。私も最近コンサルティングを行っている会社で、民泊を旅館業へ切り替えたばかりです。この旅館業へ切り替える流れは、大都市圏に限らず、外国人の観光が盛んな地方都市までますます広がりを見せており、今後戸建で民泊を行っていた事業者が少なくなり、戸建の旅館が増える可能性があります。この戸建旅館が新たな投資先として注目される日も近いでしょう。



労働環境による課題

また日本の労働力不足の改善策の一つとして、増え続ける外国人労働者に対する住宅の提供も必要となるでしょう。企業がリストラで売却した寮を外国人労働者用の寮として活用している事例もあります。

また副業や小規模事業者の起業にあたり、小規模なシェアオフィス、シェア会議室、コワーキングスペース等がより発展していくと考えられます。既に東京に起業家向けスクールとシェアオフィス、シェア会議室の複合施設が誕生しており、起業家向けスクールに地方出身者が新幹線等で通う等、複合施設の需要も高まっています。

今後の不動産業界のキーワードは「いかに組み合わせるか」で差別化を行い、新たな需要を掘り起こせるかが決め手となりそうです。



POINT

・今後の不動産業界は、東京オリンピックの影響もあり、下降傾向になる可能性もある。
・ただ、社会問題や労働環境に関する課題を抑えることで、伸びていく市場やビジネスはあり、いかに組み合わせるかが大切になる。


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データ引用元:
データ1:観光庁ホームページ(https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/vjc.html)

※記事は執筆者個人の見解であり、パーソルキャリア株式会社の公式見解を示すものではありません。

不動産業界の動向をおさえて新規事業を立ち上げるなら

東京オリンピックのみならず、社会問題等もダイレクトに業界動向に響いてくるのが不動産業界です。他業界の影響も受けやすく、変動の大きな市場と言えます。だからこそ、不動産業界での新規事業を検討しているのであれば、この業界を取り巻く状況をいち早く理解し、トレンドについていく必要があります。

そこでおすすめなのが、既にその業界での知見やノウハウがある経営顧問を頼る方法です。

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不動産テックなど、不動産という市場を変えずに、新規事業に挑戦する会社は多いですが、何事も社内にノウハウや経験がないと、その事業モデルが大成するのはなかなか難しいと言えます。

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ライターコア・エリート株式会社 代表 丸山寛之 氏

立教大学大学院卒(MBA)
不動産会社営業2年目に全国1位。不動産業界の大手企業にてグループ経営企画部で新規事業、生産性向上、ブランド広報、コンプライアンスを担当。不動産ベンチャーの事業再生で売上30倍。シェア事業担当。2018年不動産・企業コンサルティング等で起業。

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