はじめての薬事申請~外せない注意ポイント!流れを解説

研究開発

2019年07月02日(火)掲載

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 少子高齢化に伴い、新たにヘルスケア領域への事業の機会を見出す企業が増えております。その中で一つの関門となるのが薬事申請です。
今回はi-commonに登録のあるヘルスケア領域の専門家に、薬事申請を新たに取り組む際に注意すべきポイントについて語っていただきました。

薬事申請のプロセス

 事業を開始するにあたって、市場ニッチを見出し、製品を開発もしくは導入して、購買、生産プロセスを円滑に動かし、適時に市場投入し顧客へのデリバリーやサービス提供という一連のプロセスで、いかに顧客の満足を獲得し、適切な利潤を得ることができるか、そのための仕掛けを事業戦略として立案、可視化、組織共有というプロセスが最初にあります。

 このときに、薬事申請はヘルスケアビジネスにおける、ある意味最大の関門となります。この関門(=薬事申請)は事業プロセスの全域にまたがって影響するものです。多くのヘルスケア専業企業では、事業計画立案の際、最初の段階で薬事戦略を十二分に練り上げることになります。

 それではヘルスケアビジネスに最初に参入する際の薬事申請についての留意点について、以下にまとめてみます。ここでは医療機器や体外診断薬の事例を考えます。

1) どこの国でヘルスケアビジネスをすることを検討しているか。

2) 1)を明らかにするために疾患動態の把握、医療ニーズ、保険制度、薬事規制システムの理解(QMS体制についての規制)、競合状況や価格水準、事業の旬などを調査する。

3) 各国における事業の可能性と限界を明確化し、そこで求められる製品像(製品、技術、価格、リスクなど)と市場投入の時期を考える。

4) 上市する国と優先順位が決定した段階で薬事規制、QMS体制の内容を勘案し、上市までの薬事視点でのプロセスを明らかにする。ここで上市時期と可能な薬事申請の時期に乖離がある場合が多いので、いかに申請までのステップを詰められるかを議論し、最終的な市場投入の時期を明らかにする。なお、設計開発プロセスにかかる経費なども、莫大な経費が掛かる場合もあるので、例えば、非臨床試験、臨床研究や治験についての要否も早期に判断することをおすすめします。

薬事申請に必要な組織

 上記のことを最初の段階で明らかにすると、次に組織作りです。薬事的組織は初期段階では設計部門の中にあり、ある程度設計が進展するに従い、信頼保証や品質保証の部門に出てくるケースが多いです。QMS確立に伴い、その後、業許可申請までには「国内品質業務運営責任者」・「安全管理責任者」 ・「総括製造販売責任者」を指名する必要性も出てきます。設計開発にある程度目処が立った段階で人材の採用に向けた活動は始めた方がよいでしょう。

 薬事のエキスパートは該当者自体が市場に少なく、採用の難易度も高い傾向にあります。ヘルスケアビジネスにおける最上級のエキスパートであり、ヘルスケアビジネスの専門性は極めて高い、その裏側として一人がカバーできる幅が狭いので、余計に自社のニーズにピタリとフィットする人材に出会える確率は少ない傾向にあります。特に、高度管理医療機器の業に必要な安全性管理責任者は需要に供給が追いついていない傾向が見られます。

 医療機器や診断薬が求めるQMS体制は、欧米の職務主義組織が基本です。一方、日本企業の多くは、いわゆる職能主義組織を採用していますので、どうしても実組織とQMS組織に乖離が生じます。一つ言えることは、現場の部課長クラスは実組織とQMS組織で出来るだけ強調できるような形式が望ましいですし、最近はそのような企業も増えてきていると感じます。

薬事申請に必要な人材

 問題は、人材採用です。医療用医薬品は組織で動かす仕事です。プロセスごとにエキスパートが育ってきますし、例えば開発であっても、製剤開発の専門家、薬理試験の専門家、HTSの専門家のようになります。例えば取材をさせていただいた専門家の場合、抗がん剤の薬効薬理の専門家で、作用機序の解明、これにまつわる創薬プロセス上流域には知見がありますが、それ以外は素人のようなものだそうです。バイオ医薬品の生産については生産材料と生産株の開発に関わってきた関係で、ある程度までは理解できますが、プラントエンジニアのような人間ではありません、ともおっしゃっていました。

 その点、医療機器や体外診断薬の場合は、もう少し一人が経験する仕事の幅は広くなるようです。取材させていただいた専門家が長く暮らした医療機器や診断薬業界の場合、研究開発、薬事・品質保証、学術などをローテーションすることはさほど珍しくなく、技術者が事業開発に出てくることもよくあります。取材させていただいた専門家は、薬事、学術、製品開発、基盤技術開発、事業企画開発、最後は経営までを見てきましたが、一つ一つの守備範囲が狭いので、このようなキャリアも成立します。

 ただし、医療機器の場合、計測器を扱っている人がいきなり植込み型医療機器の専門家になれるかといえば、それは困難だと思います。医療機器は膨大な種類がありますし、各々で求められる科学的特性も大きく異なるためです。特に体内に入るか否かの違いが大きく、組織立てを考える場合であっても、機器が体内に入る場合、臨床試験まで行う体制と人材を求めることも多くなります。得手不得手が、診療科別に出てくるのも医療機器ならではかもしれません。

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