新規事業の立ち上げパターンと重要なプロセス

新規事業

2019年09月10日(火)掲載

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ビジネス環境が大きく変化するVUCAな時代において、新規事業の立ち上げは多くの企業にとって避けて通れないものになっています。本業の頭打ち感、余剰資源の有効活用、リスクの分散などの目的、また事業承継の際に新規事業の立ち上げを伴わせるケースも多く、新陳代謝の側面も持ち合わせています。

しかし、既存事業とどう折り合いをつけるか、誰をアサインするか、検討の手順などに悩まれている方も多いことでしょう。

新規事業は、この3パターンのいずれかに当たる場合が多いでしょう。

① 既存事業(経営資源)をベースにするか
② 異業種へ進出するか
③ 市場未形成の分野を開拓するか


そしてフィジビリティスタディとして、3つの観点から新規事業の可否を判断することが重要です。

(1)参入市場の将来性
参入市場に将来性が無ければ、他の条件が良くても意味がありません。衰退が予測される事業分野は、実現可能性があっても対象から外すことが賢明ではないでしょうか。

(2)競合企業の現状
ライバル企業が、どの規模の事業をどの範囲で実施しているかを把握することは重要です。経営資源や経験が不足している企業が、その分野で勝ち続けている企業と競争することは困難です。競争を回避する上で、ポジショニングの決定は非常に大切です。

(3)成功条件
業務面・システム面での実現可能性の有無を事前に検証しましょう。さらに事前に必要な経営資源(チーム・リーダー選定・資金)を把握しておけば、無駄のない行動を実践できます。

新規事業がうまくいかない理由と「制度」をカタチにする分析力

新規事業のパターンは大きく3つに要約されるため、新規事業部の設置、社内ベンチャー制度やアイデアコンペティション、オープンイノベーション、アクセラレータープログラム、デザインシンキング研修など、様々な打ち手が実行されています。しかし、なかなか成果に結びつかないケースが多い理由は何でしょうか。

(1) ビジョンの明確化


成果が出ない要因のひとつとしてビジョンの不明確さがあります。経営陣と現場の意識のズレ、企業内不和や意思決定のスピード・質が低下し、成功確率を大幅に下げてしまっているのです。


「新規事業ガイドラインの設定」「組織づくり」「環境整備」「評価制度の見直し」は十分でしょうか。ガイドラインは、同種の新規事業に失敗したといった過去の経験や技術で判断すると、通用するものも見逃してしまう可能性があります。

事業創出の阻害要因を抑止する組織体制、IT投資を含めた環境整備などの地盤づくりも必要です。ビジョンが明確化されていないと、企画段階で社内から反発・不安視されてしまうでしょう。既存事業との折り合い、社員のアサインに頓挫する理由もここにあります。

(2)市場と成熟性と事業の成長性を確認する

「リスクが高い新規事業より、経営努力でシェアアップして売上を伸ばした方が良い」と、堅実な話が出た際は、中長期的視点で考え(例えば5年から10年)、縮小し続ける国内市場環境の中で成長を持続させることがどの程度可能なのか再検討が必要です。


「定番商品」と言われる例外を除き、ほとんどの製品やサービスには市場から撤退する時期が来ます。製品やサービスが撤退するまでのプロダクト・ライフサイクルで考えた時、「成熟期」の時点であれば、財務的余裕もあるためリスクをカバーできる最適な時期です。

「成熟期」によく行われる、人材育成のための新規事業立ち上げという側面であれば、「ゼロからの経験を積ませ、将来の経営幹部候補として育成したい」「積極的に取り組む姿勢、風土、カルチャーを発信することで、人材採用の活性化につなげたい」といった狙いもあると思われます。

しかし社内ベンチャー制度やアイデアコンペティションの活用時に、事業成長性を見極めるフレームワークやPEST分析・SWOT分析、3C分析、ポジショニングマップ作成などのノウハウが社内にない状態で進めることで失敗する企業もあるかもしれません。

事業成長性の検討や立ち上げ期は、外部の専門家の力を借りることも有効です。目的や意義によって、事業が目指す目線や成功の定義、そこに至るための最適なアプローチが異なるからです。

その「ペインポイント」は、事業(対価)になるのか

ビジョンをディスカッションする際「イメージはあるが、具体的なものを描けない」「イノベートが苦手」など、明確に言語化できずに葛藤している人も少なくありません。

新卒時から知識インプット型の研修が主流であることに加え、ヒエラルキー型の組織で効率重視の経営環境で育つことが多いのではないでしょうか。さらに優位性のある既存事業では、プロセス改善を繰り返すことでスキルやノウハウを得ることが想像されます。これらは既存事業(経営資源)をベースにした新規事業に特に有効です。

しかし異業種への進出や市場未形成の分野を開拓するには、異なる能力を持つ外部の専門家の知見も必要かと思われます。

例えば、アイデアコンペティションなどで上がってくる企画は「ペインポイント(想定顧客の痛点、悩みの種)」を、ヒントにしたものが多くないでしょうか。

問題はその見極めです。コスト削減や生産性向上などへのペインポイントは、どの企業もあります。ただ、そのニーズは多くの企業が「対価を支払ってでも解決したいかどうか」と「あれば便利」というどちらのレベルでしょうか。

企画当初の市場調査やユーザー調査を、新規事業のさまざまな判断を仰いでいるうちに、いつしか社内で判断されやすい様な理由付けをしていないでしょうか。

新規事業のアイデアは、顧客ニーズを超えるペインポイントから出す必要があり、以下3点の検証は欠かせない要素です。

〇ユーザーニーズは不確定要素がたくさんある
〇実行段階でユーザーニーズに対価を払うか検証する
〇対価を払って利用しようとした初期顧客の声を検証する


検証があってこそ会議で「良い提案だがなぜ他社はやっていないのか」と問われた時、他社のやり方や商品化が間違っていたといった失敗理由を説明することもできます。また他社は技術的に対応できなかったが、私達は技術もノウハウの応用もできると明確に答えると、会議での他の質問に対しても説得力を持たせられます。

そして市場参入のタイミングとしては、想定顧客が「変化せざるを得ない差し迫った状況」を見越しての参入がベストです。俗にコンペリングイベントと言われますが、顧客担当者が社内審議を通過させるための重要なポイントとなります。

例えば消費税や個人情報保護法など法律に関わる状況、売上げ・利益などの機会損失につながる状況、セキュリティやリスクに関わる状況、補助金、助成金などもコンペリングイベントにあたります。顧客が稟議書を通過させやすいということもイノベートなのです。

顧客ニーズと参入タイミングも見極めて実行しても、新規事業の成功率は「千三つ」(せんみつ)と言われる難易度ですから、始動後のリスクを極力排除した設計も重要です。異業種進出へのリスク軽減を踏まえたアイデアを何通りも考え、他社との提携や協業も踏まえて、軌道修正や撤退できる仕掛けも用意しておく必要があります。

事業化は育成機会でもある。リーダーとメンバー選考のポイント

先に事業的な観点で注意点を述べましたが、新規事業に取り組む目的や意義には、“組織的な人材育成や活用という観点もあります。

立案者や経営層の指名者がリーダーとなるのが一般的ですが、リーダーは事業を軌道に乗せて成功へと導く責任者でもあります。メンバーと話し合いを重ね、組織としての考え方や方針を共有し、それらを固めた上で決定する役割を担っています。リーダーや経営層の方へ伝えたい点は、技術的な専門性や営業力の視点重視だけで、メンバーを選出させるのではなく「反逆者・マーケッター」も新規事業には必要と言うことです。

① 「反逆者」が組織を活性化
新規事業始動時に陥りがちな点が1つあります。それは賛同者のみでメンバーを固めてしまうことです。全員が前向きであればあるほど意見は同質化しやすく、合理的な判断を妨げてしまうこともあるかもしれません。そんな時に必要なのが反対意見、冷静な視点です。

「そんな売り方じゃ誰も振り向いてくれない」「○○がダメ。私ならまず買いませんね」など、他のメンバーからすれば厄介な存在かもしれませんが、反対意見は的を射ていることも少なくありません。そんな意見にも対応していくことで事業の精度は高まり、組織も強くなります。

新規事業に関わっていない社員は、始動後は〝触らぬ神に祟りなし〟といった風潮もあります。反対意見や批評があってもあえて口にしない人も多い。つまり「身内に敵を招き入れる」ことで、チームを活性化しつつ合理性を保つのです。

② ぶれないマーケッター
「ターゲットが想定と少し違っていないか」「売上げが伸びない」「商品の良さが伝わらない」など、新規事業の紆余曲折。停滞が長引くと、メンバー間に「コンセプトは正しいのか?」といった不安や疑いが過る場合もあります。ただし、そこですべきは営業戦略を見直しや販促企画に工夫など、マーケティング戦術の変更によって対処することであり、「新規事業ガイドラインやコンセプトの変更」をすると失敗リスクが高まります。

市場・時間・規模の3つの軸の見極めが求められるリーダー資質

既存事業の製品やサービスが成熟期で、どちらかと言えば組織観点を目的とした場合、新規事業を軌道に乗せるだけでなく、事業開発での経験や知見・ノウハウを会社全体として横断的に蓄積することが大切と考える経営者もいます。

「新規事業創出プログラム/社内ベンチャー制度/オープンイノベーション」などのアプローチを行うのは、人材育成と協業先の見極めなど、種まきの一環とも言えます。

市場軸:どの市場や領域/分野で展開するか。既存事業のアセットを活用できる市場か、新市場を創出するか。

時間軸:どの期間で事業としての成果創出を目指すか。短期的な貢献を目指すか、中長期での成長を目指すか。

規模軸:どの程度の規模感の事業を目指すか。売上や利益、シェアや顧客数の設定。


新規事業の可否を判断するフィジビリティスタディからビジョン決定にいたるまでのどの軸のフェーズでも、リーダーに求められる素質に論理的思考が挙げられます。新規事業を円滑に進めていく上で、いかに柔軟に早く対応ができるかが成功のカギを握っています。より多彩な人材をアサインする方が、経営幹部候補のリーダーだけではなく、メンバーの視野も広げることにもつながっていくでしょう。

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