マーケティングデータの活用方法~過去から現在、そして未来のデータ活用とは~

マーケティング

2019年08月26日(月)掲載

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草創期において、マーケティングで扱うデータは商品の売上でした。そして、その単位商品を細かくすることが精緻なマーケティングにつながるとして、バーコードの登場・利用によりそれが可能になりました。さらに、そこから仕入れ時のバーコード利用などを通して、在庫管理・発注までつながり「単品管理」という単語が生まれました。

それに購入した人の情報を付加しようとしたのが、コンビニエンスストアでの目視確認による性別・年齢の入力であり、それに顧客の囲い込みを目的としたポイントカードが結合して、会員制度に発展。これ によりどのような人がいつどこで何を買ったかということが分かるようになりました。今や、私たちはポイントをもらうことを対価にこれらの情報を渡しているわけです。

過渡期から続く調査手法の模索

ただこれでわかるのはあくまで購入時点の情報のみであり、商品開発にフィードバックする情報としては有益ですが、購入までの過程であるマーケティングの広告・宣伝という領域のデータではありません。

「広告の半分が無駄なことは分かっているが、問題なのはどちらの半分かが分からないことだ」という言葉があるように、広告・宣伝活動の改善・効率化は永遠の課題と言えるでしょう。

TV・新聞・雑誌などの広告宣伝媒体でどの媒体が有効かということのためには、視聴率・発行部数などのデータがありますが、それだけではもちろん十分でなく、各媒体が自分たちの媒体の利用者・購入者に対する調査を実施して、そのデモグラフィックを提供しました。

さらに、それらを補完するものとして、別のタイプの市場調査が行われてきたのです。例えば、広告素材の評価として、広告をいくつか見せてどれが一番買いたいと思うかを問う調査や、媒体の評価として、実施した広告を見せて見たことがある広告を選ばせる、などの調査です。

ネット調査の発展により、これらの調査は気軽かつ比較的安価に行うことができるようになりましたが、結局は消費者に質問し回答してもらう自記式調査であり、結果を得るまでに時間がかかり、また安くなったとはいえコストもかかります。その上、正確性が担保されたものでもなかったと言えます。

成長期は「情報接触」と「消費行動」に関わる数値分析

ネット上でのデジタル広告が始まると、この領域では広告表示数もクリック数も把握することができるようになりました。特にネット上で購買まで完了することができる商品に関しては、購買の有無がデータとして把握できるため、購買データと広告データが同じソースで把握することができるようになりました。

このため購買という最終目的に対してどの広告が有効だったのかがデータで明示できるようになったのです。こうなると、より大きなコストをかけているアナログ領域広告での正確なデータの欠如が課題として強く認識されるようになりました。

これを受けてCMについて、いくつかの会社で、TV視聴時の音声を録音しCM視聴の有無を把握する、あるいは番組表に視聴有無を毎日記録してもらうなどの仕組みでCMの接触有無を把握し、データ提供する会社が現れました。その仕組みを活用して、私がそのデータと従来型の自記式調査結果を突き合わせてみると、データ上は接触しているはずの消費者の64%が、自記式調査では接触していないと答えた例もありました。新しいデータの取得により、従来型調査の不確実性が露呈したのです。

さらに、そのデータ提供に同意しているモニターの方が、WEBログの提供と、購買履歴データの提供に同意していれば、CMとの接触とデジタル広告との接触と購買との関係を把握することができるようになっています。

その前から、購入履歴データはレシートのコピーの提供などの手段によって、調査会社にデータ提供する仕組みができていたため、「情報接触」と「消費行動」に関わる複数種類のデータを同一サンプルから収集できるのです。

このような仕組みをシングルソースパネルといいます。一人の消費者のメディア接触から購買までのデータを把握することで、今までは別のデータとして把握し、分析者の感覚で因果関係を読み取っていたものが、一つのデータベースの中で集計して分析し、因果関係を把握できるようになってきています。それらのデータが定常的にログとして蓄積されており、消費者理解、広告プラン策定・効果測定まで活用シーンも拡大しています。端的に言えばCMとネットの広告費の配分をどうするかの「解」が、抽出し易くなってきたと言えるでしょう。

アイトラッキング(視線計測)・表情解析の時代

既にパソコンに続いて、スマホなどモバイル機器のWEBログデータも把握できるようになっており、マルチデバイスの時代に対応し、PC・モバイルの出稿出しわけにも対応できるデータとなっています。

新聞・雑誌・屋外広告(電車・高速道路沿いの看板・駅構内看板・交差点スクリーンなど)については、まだログでの把握は出来ていないので、自記式調査により補完する必要があります。しかしこちらの領域も、いずれアイトラッキング※(視線計測)などの技術を活用したソリューションが提供されるものと思われます。

※アイトラッキング:視線の方向を把握することにより何を見ているかを把握することができる技術広告については、「接触数×クリエイティブ力」がその効果を構成する要因といえます。ログとして把握したデータはあくまで接触数であり、同じ1000接触であってもCM(A)とCM(B)は、広告素材が違えばその効果は違います。

違いがあることは明確であっても、その広告素材への評価について、従来は自記式調査を実施しており、そこで好き嫌いや購入意向などを聞いていました。しかしその評価はあくまでその時点での感情であり、実際に購入に結び付くのか、結びついているのかどうかは、分からなかったのです。

デジタル広告の場合は、広告の制作コストもそれほど高くはなく、出稿数の増減も比較的容易なので、いわゆるABテストと呼ばれるものを実施することがあります。AB両方の広告を同じ場所に少量出稿してみて、クリック数の多い方を本格展開するという方法ですが、CMや新聞雑誌広告の場合、なかなかそういうテストはできません。

このような中で、信頼性に疑問がある調査に代わり、それ以外の客観的方法で広告の影響力を測る方法として、脳波を利用するニューロリサーチの手法や表情解析の手法が開発され、いくつかの企業で利用され始めています。

ニューロリサーチは、CMなどの広告媒体を見ている被験者の脳波を取得してその解析をすることにより、見ているときの感情を把握しようとするものです。表情解析も同様に被験者の表情をカメラで記録して解析し、感情を把握しようとするものです。

どちらの方法もその感情が広告閲覧時のものであり、最終的な購買というものまで結びついていないという問題があり、また、脳波や表情を取得する数が限られるなどの課題もまだあります。しかし注目される脳科学分野のため、スタートして1~2年で、いくつかの課題はすでに解決されつつあるなど改善のスピードは速く、広く使われる日もそう遠くないと予測されます。

カスタマージャーニーをすべて追う発展期

倫理・安全面への注意など企業の導入障壁もやや高めですが、既存の調査では不可能であった、言語化や記入される前の「感情の可視化」「人の潜在意識」「感情変化の定量データ化」は、クリエイティブ評価だけでなく、販促支援やブランド評価においても活用され始めています。

これらの手法以外にも、今や個人に一台以上あるスマホの活用はもちろん有望な方法です。また、スマートウオッチのように接触デバイスであれば、身体的パルスをとることが可能であり、シングルソースの可能性は高まるばかりです。もちろん個人情報保護についての配慮が必要ですが、マーケティングで使用するデータのデジタル化・ログ化の流れは止まらないでしょう。

点ではなく、線で動きを見る分析調査がほんの少し前のトレンドであったのに対し、さらに購入というアクションの前後にある思考や感情・意識の変化まで追うために、カスタマージャーニーのすべてをカバーする既存データを入手して、目的に応じて分析する時代になってきています。


※記事は執筆者個人の見解であり、パーソルキャリア株式会社の公式見解を示すものではありません。

ライター後藤 晋哉氏

トヨタ自動車株式会社で調査部やレンタリース・海外輸出関連部署を経験。その後調査会社で主に自動車関連クライアントへのサービスを経験した後アウディジャパン株式会社へ。マーケティング関係の市場調査・データ収集・分析を実施。さらにそれらに基づき施策提案、実行を実施。

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