ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?企業の取り組み事例を解説

生産

2022年04月26日(火)掲載

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2015年のパリ協定を境に、世界各国で脱炭素社会に向けた取り組みが進んでいます。

消費者側でもエシカル消費を中心とする環境配慮のニーズが高まっており、オーガニックをはじめ、認証ラベルの有無やサステナブルな製品であるかなどが新たな購買行動の判断基準になろうとしています。

今や持続可能な社会実現に向けた環境への配慮は、企業の信頼性を担保するうえでも欠かせません。

そのうえで環境負荷の度合いを算出する方法としてライフサイクルアセスメント(LCA)が注目を浴びています。

本コラムでは、環境問題に対する世界の動向とライフサイクルアセスメント(LCA)を活用した企業の事例を中心にご紹介します。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)は、製品やサービスによる環境負荷の度合いを定量的に算出するための手法です。

製造業を中心に導入が進んでおり、サプライチェーンにおける調達、生産、流通、販売の領域に加え、使用、廃棄、リサイクルまでを対象として、環境負荷の見える化を通じて、より環境に優しい製品・サービスの開発を進めていきます。

ライフサイクルアセスメント(LCA)の評価指標を活用することで、資源・エネルギー・排出物の量が明確になり、環境負荷の原因を突き止めることや改善につなげるための判断材料としても役立ちます。

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、ISO(国際標準化機構)によって環境マネジメントの国際機構(ISO 14040シリーズ)に規定されており、自社の商材がISOに準拠することは、バリューチェンの効率改善だけでなく、消費者やステークホルダーとの関係構築にも影響を及ぼすでしょう。

特に近年はサーキュラーエコノミーやESG投資の浸透によって、カーボンニュートラル、温室効果ガス、脱炭素などのキーワードを軸とした環境問題が、メディアでも取り上げられる機会が増えたことで、世間の関心が高まっています。

どれほど環境に配慮された製品・サービスであるかは、すでにユーザーの購買行動や企業投資において重要な判断材料になっており、企業が持続的な競争力を持つためには欠かせないポイントです。

2050年の脱炭素化に向けて、欧州ではLCAベースでCO2排出量の申告義務化が検討されるなど、サプライチェーン全体を巻き込んだ取り組みに注力する企業は、これから着実に増えていくでしょう。

ブランド失墜やサプライチェーンからの排除リスクを予防するためにも、ライフサイクルアセスメント(LCA)に対してどのように取り組むかが大切になります。

企業のLCA事例

環境負荷の現状や世界各国の動向を踏まえても、環境に配慮した製品・サービス提供は欠かせません。

しかし、ライフサイクルアセスメント(LCA)を軸とした評価は、まだ一部の企業でしか導入されておらず、導入に対する課題感もあるのではないかと予想されます。

では、ライフサイクルアセスメント(LCA)を推進している企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。

今回はライフサイクルアセスメント(LCA)の企業事例を6社ご紹介します。

A社(精密機器メーカー)の事例

A社では、主に「マネジメントシステムの構築」「第3者検証の実施」「環境ラベルの取得」という3つの取り組みを行っています。

マネジメントシステムは、ライフサイクルアセスメント(LCA)における開発から情報公開までの流れの一元管理を目的とし、CO2排出量の算出を開発・設計段階から行うために構築されました。

また、サプライチェーン排出量の算定を目的に第3者検証を実施し、調達、生産、流通、販売という各バリューチェーンの事業者を巻き込むだけでなく、資本財、リース資産、事業廃棄物、従業員の出勤・出張で発生する温室効果ガスも評価対象に加え、改善を実施しています。

これらの取り組みを通じて得られた評価結果の見える化として環境ラベル登録を積極的に行い、いくつかの製品にはすでにカーボンフットプリント(CFP)やエコリーフなどの環境ラベルが付与されています。

B社(自動車メーカー)の事例

B社では、ライフサイクルアセスメント(LCA)の評価対象として製造・物流の工程に加えて、自動車の使用時、廃棄・リサイクルも含んだ環境負荷対策を実施しています。

技術開発においては、地域ごとのエネルギー資源・発電形態・生涯走行距離を踏まえたマルチソリューションに注力しており、排ガス規制に適合できる低排出ガス車の開発、実用燃費の向上、電動化技術の開発、電気自動車(EV)のバッテリー改良、代替燃料の開発推進、車両の軽量化、バイオマテリアルの活用などを通じて、環境負荷の低減を目指しています。

生産・物流においては、省エネルギー化によるCO2の排出削減、メーカー・流通センター・ディーラーなどとの協働やモーダルシフト拡大での輸送効率化、梱包・包装資材の削減、独自のエミッション基準による排出量の管理などによって、大気汚染に影響を及ぼす要素の低減に尽力しました。

C社(アパレル)の事例

C社では、カーボンフットプリントの排出量ゼロを目標に掲げるだけでなく、カーボンネガティブを目指し、「再生型農業の導入」「天然素材への置き換え」「燃料・電力のクリーン化」という3つの取り組みを行っています。

まずカーボンフットプリントに関しては、ライフサイクルを素材・製造・輸送・選択・廃棄の5段階に分けて、製品ごとに数値を測定・公開しています。

再生型農業では、羊の牧草を食べる習性と土壌の基盤に着目し、大気圏に排出されるカーボンを植物と土壌に吸収してもらい、大気中のカーボンを減らすための仕組みを構築しつつ、環境負荷の低いウールの共有量を増やすという再生型農業のモデルを確立しました。

天然素材への置き換えでは、プラスチックや石油から作られる合成素材を、再生可能な天然素材やリサイクル素材への変更を進めています。

植物由来のレザーなどの素材だけでなく、製法や梱包にもこだわり、製品寿命や再利用の観点での改善も行っている点が特徴です。

燃料・電力のクリーン化では、再生可能エネルギーの使用に伴う生産拠点の選定やサプライヤー連携、海上輸送への切り替えに取り組んでいます。

また、サプライチェーン全体に加えて、エンドユーザーによる環境影響も社会的責任として捉え、低温洗濯や自然乾燥の促進を行い、エネルギーに対する環境的責任を果たすための活動を続けています。

D社(食品メーカー)の事例

D社では、サプライチェーン排出量を分析し、結果をカーボンフットプリント・マークのかたちで商品に表示しています。

原料・資材・商品などの生産・輸送、商品の調理・保管、廃棄物の処理など、バリューチェーンごとにCO2排出量を算出し、排出規模や関与余地などを総合的に判断したうえで改善に取り組んでいます。

具体的にはCO2排出量だけでなく、事業活動で使用するエネルギー(電力、燃料、用水など)、原料、飼料、廃棄物の量を月次で測定し、環境情報共有システムに集約しています。

そこで把握した全体像をもとに評価や次の目標設定を行い、より環境に配慮した食品ライフサイクルの実現を目指しています。

E社(自動車メーカー)の事例

E社では、自動車の環境影響をライフサイクル全体で定量評価し、環境負荷の削減に取り組んでいます。

その中でも特徴的な取り組みが、「設計・部品の切り替え」「ガソリンエンジン車の燃費改善」「電動車の拡充・EV開発」の3つです。

設計・部品の切り替えでは、環境負荷に配慮した見直しが行われています。

まず設計段階では環境配慮性に優れたオレフィン系樹脂の採用、ハーネス類の効率的な解体を可能にするレイアウト・構造の採用、材料表示の改善による分別性の向上、スイッチオープナー改良によるビス締めの廃止など、リサイクルを考慮した変更が施されました。

部品については、樹脂部品の切り替え(再生樹脂やバイオマス材料など)、環境負荷物質(鉛、水銀、六価クロム、カドミウムなど)の削減、世界各国の化学物質規制への対応、厚生労働省が定めた13の揮発性有機化合物(VOC)の代替による車室内環境の快適化に努めています。

ガソリンエンジン車の燃費改善では、ターボシステムの改良、リーン燃料技術の採用、リニアトロニックの変速範囲の拡大によって、発進時の加速において力強さを引き出し、高速巡航での燃費向上をさせつつ、環境配慮との両立を実現しました。

また、排出ガスのクリーン化に向けて各国の規制に対応した車種の拡充が進んでおり、現在は原子レベルの材料設計により、触媒の高性能化と貴金属の省資源化の両立を目指しています。

電動車の拡充・EV開発では、マイルド・ハイブリッド搭載車の拡充、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)の発売、ストロング・ハイブリッド車(SHEV)の市場投入を通じて、CO2排出量の削減に取り組みました。

また、オープンイノベーションを活用したEV専用プラットフォームの共同開発など、技術の強みを持ち寄ることで、さらなる価値の向上を実現しようとしています。

F社(印刷)の事例

F社では、ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いたライフサイクル全体の見直しを通じて、CO2排出量の削減に取り組んでいます。

環境負荷の見える化によって、調達、生産、廃棄・リサイクルなどの工程でCO2排出量を定量的に評価し、環境負荷の小さい仕様のものに置き換えを進めることで、サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減に貢献しました。

紙素材や再生材、モノマテリアル化、水性フレキソ印刷、バイオマスインキなどの活用によってパッケージを改良し、石油化学製品(プラスチックなど)を使用した従来品と比較して、約18%~28%のCO2排出量の削減に成功しています。

また、容器の薄肉化にも力を入れており、独自の技術を用いることでプラスチックの厚みを従来よりも抑え、成形時に使用する樹脂量が減り、CO2排出量の削減につなげています。

環境配慮に向けたライフサイクルアセスメント(LCA)を実践するために

環境負荷は世界各国にとって深刻な問題として受け止められており、消費者から選ばれる企業になるためにもライフサイクルアセスメント(LCA)での評価・改善は重要です。

しかし、ライフサイクルアセスメント(LCA)による環境負荷の見える化を行うための仕組みづくりや、適切な評価指標の設定、改善に向けた具体的なアクションプランの策定など、自社だけで取り組むには難易度の高い領域もあるでしょう。

経営支援サービス「i-common」では、企業の抱える課題に対して、成功体験を持つ専門家をご紹介し、実働型での支援でプロジェクトに伴走することで、課題解決までを支援します。

「社内ではライフサイクルアセスメント(LCA)の基盤を整えられない」「ライフサイクルアセスメント(LCA)で得たデータを適切に判断できる人材がいない」などでお困りの際に、ぜひお役立てください。

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