ものづくり企業のIoTの進め方~効果のご紹介

生産

2019年07月10日(水)掲載

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注目を集めている「IoT」。多くの企業様がIoT化を進め、新規事業や業務改革を推進しております。
今回はi-commonに登録のある大手製造業で国内外のIoT化の推進を行っていた専門家に取材を実施し、IoTのトレンドや活用方法を伺いましたのでご紹介します。

「ものづくり」におけるIoT化のトレンド

 IoTは「Internet of Things」の略称ですが、社会インフラとしてのニュアンスが強くあり、モノや人のデジタルデータをインターネットに上げることで企業や産業を超えて全体を最適化し、エコで住みやすい都市にするといったようなビジョンに基づいています。

 いわゆるGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)のようなプラットフォーマーと呼ばれる企業群は、社会インフラ規模のサービスを提供するために自ら必要なICT/IoT/AIを開発しています。ICT/IoT/AIが社会インフラの一部になることで、様々な技術が以前より安価になり、入手しやすくなってきました。コンシューマー・テクノロジーと呼ばれるものです。

 一方、生産、販売・サービス、メンテナンスといった様々な現場の連鎖で活動する「ものづくり」企業においては、製品やサービスに付加価値を付けたり、従来から行ってきている品質や生産性改善をもう一段階ステップアップするために、ICT/IoT/AIを活用することを検討しています。そのようにすることで、これまで突破できなかった課題が解決できるのではないかという期待があります。

 IoTで利用される各種センサー、画像処理技術、音声認識なども、従来のICタグやバーコードに加えて充実してきており、ものの位置や管理特性、人と人、人とコンピュータのコミュニケーションが手軽にできるようになってきました。IoTをInternet of ThingsではなくInformation of Thingsと読み替えても良いでしょう。

 生産現場でIoTを導入すると、1個1個の製品の識別IDを各工程で読み込んだ上で、その時の加工処理条件や中間工程の検査結果や気づき(コメント)などを全て紐付けることが容易になります。そうすることによって、品質不具合が発見されたらすぐに上流工程で何か起こっていたかが確認できるようになります。また、どの工程で製品の時間的滞留が起こっているかをモニタリングし、生産性の改善にも使うことができるようになります。

サプライチェーン・マネジメント、品質管理、生産管理におけるIoT化の効果

 IoTの基本コンセプトは「繋げる」ということであり、IoTにより「プロセスの流れを良くする」ことは、サプライチェーン・マネジメント、品質管理、生産管理へ効果を発揮します。

 材料や部品は様々な工程を通り最終製品になりますが、もし、ひとつひとつの部材がどのような条件で加工され製品になったのかがわかると、どこかの工程で不具合が発見された際、それまでのデータを確認し、それを元に即座に上流工程をチェックすることが可能になります。また、蓄積されたデータからどのような条件の組み合わせの時に不具合が起こりやすいかを分析することも容易になります。

 結果として、品質のトレーサビリティーも向上します。ここへさらにAIを活用しても良いでしょう。要因系と結果系がはっきりするため、より精度の高い結果が期待できます。

 他の問題、例えば生産性の問題でも同じような効果があります。各工程の開始と終了時間といった時間要素で部材製品毎に追っていけば淀みや乱れがよくわかるようになります。

 各プロセスの管理項目の記録に、部材、製品の個別識別番号が書かれていればそのようなことが可能になります。管理項目は部材の直接的な加工や処理だけではなく、設備のチェック結果や、部材の合否判定の承認を誰が行ったかなどあらゆる周辺の仕事が含まれます。

 生産やサービスの工程におけるIoTを例にしましたが、お客様へ納入される自社製品に付随したIoTがあります。納入された製品はお客様の仕事のプロセスの一部を担っていると考えてみてください。そのお客様の仕事のプロセスがうまく行くように、製品からデータを入手して適切なタイミングでメンテナンスを提供したり、お客様のプロセスと繋がって一緒になって品質や生産性の改善を行なうなど、さまざまな活用が考えられます。

 このように「繋げる」ことを改善改革の基本コンセプトに据えると、現状の問題点がさらによく見えるようになってきます。IoT的な現場の見方といって良いでしょう。

※その他のIoTの性質から貢献しやすいテーマ例
・これまで計測できなかった特性を測定して良品条件を確立したい
・人による測定を画像解析などを使った測定に変えて全数検査ができるようにしたい
・ある工程でこれまで手間がかかり困難であった作業報告や製品の状態の記録を取って品質トレーサビリティーを確保したい
・不良を発見したら際に、その場ですぐに原因を特定して工程や作業の修正を行いたい
・生産設備のトラブルを予防・予測したい
・受注から納入・稼働までのリードタイムを短縮し、納入納期を確実に守りたい。そのために、プロセス全体がうまく流れるようにしたい
・海外にある工場のQCD(Quality、Cost、Delivery)を見える化し、適切なタイミングで指導出来るようにしたい
・遠隔にある測定値データをマザー工場の専門家がネットワークで共有し、原因の追究をスピードアップしたい
・工場のエネルギー消費やCO2の排出量を下げたい
・お客様で稼働する自社製品のトラブルを未然に防止し、サービスコストを抑えたい。将来はビジネスにしたい

IoTを活用した現場改革の進め方

 実際に現場改革をIoTを活用し進めるにあたり、まずは何を対象としてシステムの導入を行うのかを決定することが、プロジェクトの成果に大きな影響を与えるといえるでしょう。テーマ設定の流れとその際に注意すべきポイントを紹介します。

ポイント① ビジネス上のゴール(目的)の設定
 関係者が同じゴール(目的)を持つことで組織的な協力が得られ、目的に適した手段を選ぶことができます。IoT/AIはその手段の一つであって、それだけでは生産や販売活動を支えることはできないでしょう。そのため、まずは共通のゴールの策定を行うことが重要です。経営課題と活動の関係、活動を進める上での制約を考慮して「何をすべきか」を検討します。当初から明確に設定することは困難かもしれませんが、さまざまな部門、現場から経営層までの意見を材料にしてディスカッションし、かつ、ゴールの策定については事業所や経営トップが関わることが極めて重要です。

ポイント② 取り組むテーマの設定
 ゴールを設定できれば、次に、具体的なテーマを設定します。ある製品、ある生産ラインだけでも良いですし、品質や生産性などの絞り込んだもので良く、関係者の協力が得られやすいテーマにすることがポイントです。関係者自身の時間の制約や難易度によって、試行する範囲を絞ることも有効です。

  注意事項としては、テーマのサイズ感に気をつけることです。あまりに小さなテーマにすると、IoT適用のコストや手間が大きく意味が見出せないことがあります。逆に実力以上に大きいテーマにしてしまうと進みが遅くなり効果の実感が湧かないでしょう。もちろん実力が伴えば果敢に攻めても良いのですが、通常は目的の方向に沿った少しだけ背伸びをしたテーマが丁度良いでしょう。

 ゴールやテーマの設定に関しては、自社内の課題を把握している社員で進めることが重要ですが、技術の進歩のスピードが早いIoT/AIを活用したいということであれば、外部の専門家を交えてテーマ設定を実施することも有効です。外部の専門家を活用することにより、最先端の情報を社内に取り入れることができ、かつ、第三者的な視点からより失敗のリスクを減らすことができます。

外部の専門家を活用し、IoT化を進める企業も増えているため、一つの手段としてご検討ください。
株式会社LIXILの事例:https://i-common.jp/casestudy/lixil/

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