インフルエンサー・マーケティング3.0~今企業が取り組む理由とは~

マーケティング

2019年10月03日(木)掲載

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ここ数年で一気に盛り上がりを見せ、今やマーケティング手法の主流となったインフルエンサーマーケティング。

しかし、他の手法と比べ、未だ“5W2H*”のどの軸をとってもこれぞという成功パターンが無いのが現状です。それでも実施したことがある、または興味があるという企業も多いのではないでしょうか。

使い方によってはどの手法よりも非常に効果的であり、一方で間違えるとブランドリスクにもつながる、今回はそんなインフルエンサーマーケティングの本質について考えてみたいと思います。

生活者が主役の時代に生きる

インフルエンサーマーケティングについて話す前に、この手法が生まれた背景から考えてみます。

2008年頃からSNSという新しいメディアが人々のコミュニケーション手段の一つとして確立されていきました。今まで企業は規模が大きければ大きいほど信頼され力を持っていました。

しかしこの同じ年に起きたリーマンショックなどを背景に、企業の信頼度は著しく低下し、企業よりも見ず知らずの生活者の声の方がSNSなどを通じて人々に届きやすくなり、今や生活者の方が企業より発言力があると言えます。これには他のメディアの衰退も一役買っており、ミレニアル世代以降はどんどんテレビから遠ざかり、主に大企業が発信を行なっているメディア自体にそもそも触れなくなってきています。

テレビやSNSなど、現存しているメディアを分類していきますと、それらはPaid、Owned、Earnedという3つのメディアに分けることができます。

簡単に言うと、Paidは企業が出す広告、Ownedは企業が所有するWebサイトなど広告以外のメディア、そしてEarnedはSNSなどその仕組みの参加者全員が発信することの出来るメディアです。

さて、先述の時代背景とこのメディアの分類から、現代において企業が5W2Hを100%コントロール出来るPaid、Ownedではなく、企業がコントロール出来ないEarned領域の方が生活者にとって真正な情報が集まる場となっているということ言えます。

SNSに限らず、読者の皆様も通販サイトで何かを購入される際、企業の広告やWebサイトだけを見て買い物をすることは少なく、必ず購入者の評価や感想をチェックしてから購入されるのではないでしょうか。名前の聞いたことがある企業よりも、名前も知らない生活者の声の方が意思決定を左右する。そんな時代に私たちは生きています。

*5W2H
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が/誰と) 、What(何を)、Why(なぜ)、How(どうやって)、How Much/How Many(いくら/いくつ)

インフルエンサーマーケティング1.0と2.0

さて、ここまでを前提にインフルエンサーマーケティング とは本来どうあるべきかを考えてみたいと思います。

この手法においての5W2Hの中で最も大事なパートは”WHO”、つまり誰と協業するかです。 “WHO”であるインフルエンサー=影響力を持つ人。その影響力を持つ人の定義がこの手法での明暗を分けます。

数年前をインフルエンサー1.0時代と呼べると思います。1.0時代、影響力を持つ人の定義は“フォロワーが多い人”でした。フォロワー数が数百万人という規模のインフルエンサーは、一般的に有名人、著名人になります。外で見かけたらみんなが気付くような方々です。

このレイヤーのインフルエンサーの特徴は、1回の投稿で一気に多くの人にリーチすることが可能で、多くの人々に該当商品、サービスの認知度を上げることが可能です。

一方でその人物像に合ったキャンペーンや投稿であれば、リーチだけではなくエンゲージ(いいねやコメント)が付きますが、その人物やこれまでの発信内容の文脈に合わない投稿の場合は、いくら有名なインフルエンサーであってもエンゲージが付きづらいと言う傾向があります。

このレイヤーは、そのインフルエンサーのファンがフォロワーの中心で、その人物自身に対して共感しているということが言えます。

次にインフルエンサー2.0と呼べる現代においては、その定義が“エンゲージが多い人”となりました。エンゲージとはいいね!やコメントなどそのインフルエンサーの投稿に対してのリアクションを指します。

このレイヤーのインフルエンサーはフォロワー数、数十万のミッドティア、また数百から数万フォロワーのマイクロインフルエンサーと呼ばれる方々が中心です。この領域の方々の投稿は、テーマが絞られていることが多く、例えば子育て・料理・動物などの特定のコミュニティにおいてリーダ的存在です。

このレイヤーは、同じ趣味趣向の方々がフォロワーの中心で、そのインフルエンサーがあげる投稿(コンテンツ)に対して共感しています。

例えば、料理をテーマに日々投稿しているマイクロインフルエンサーがいるとします。このインフルエンサーには通常、同じく料理に興味のあるフォロワーが付きます。もしある企業が調味料のキャンペーン行う場合、日々料理のレシピを投稿しているインフルエンサーの過去投稿と文脈を合わせた投稿を行い、レシピの中にその調味料をどう使ったか、使ってみてどうだったか、という彼ら彼女らの感想をその調味料の購買層であるフォロワーに伝えられるとより効果的であることは言うまでもありません。

少し前まではフォロワー数、つまりリーチする人数だけを重要視していましたが、昨今はリーチ数だけではなく共感指数とも言える、エンゲージ数もしっかり見ていく企業が多くなってきています。

同じ100万リーチでも、100万人のフォロワーがいるインフルエンサーを1人アサインするよりも、1万人のフォロワーがいる特定の領域でのリーダ格であるインフルエンサーを100人アサインした方が同じリーチ数でもエンゲージ数(率)は倍以上になります。リーチを多く取れる有名インフルエンサーと協業する場合にも、その投稿だけではなく、該当領域のコミュニティリーダーとの協業は必須です。

インフルエンサーマーケティング3.0のすすめ

1.0から2.0にシフトしていく企業が多い中、より本質的なインフルエンサーマーケティング を実践する企業が増えてきています。

有名人の投稿によりリーチをとっていくのが1.0、特定の領域でのコミュニティリーダーの投稿でより深いエンゲージをとっていくのが2.0、そして彼ら彼女らと中長期的に協業していくAlways On型の体制を作る、それが3.0です。

2.0まではキャンペーン単位で行うため、プロモーションをする際にのみ、適切なインフルエンサーに声を掛けてワンショット的に協業を行うわけですが、3.0はインフルエンサーとの中長期的な共創を目指します。

先述のEarned領域にいるインフルエンサーは、いわば企業の代弁者です。生活者の視点でその企業の商品やサービスを見て、体験し、その様子を他の生活者に伝えることが可能です。

その代弁者と中長期的に協業することで、生活者視点のコンテンツ(画像や動画)を制作し、そのコンテンツを企業がWebサイトの素材として採用し掲載することで、サイト訪問者を増やすことに挑戦してみることも可能でしょうし(Owned)、そのコンテンツを広告の素材に活用することで広告に触れる生活者にとって自分ごと化出来る訴求を行い定期的にA/Bテストを行うことも可能になります(Paid)。

このように、企業だけでは不可能な領域での共創を行うことがこの3.0のポイントです。

また、マーケティングにとどまらず新商品や新サービスを彼ら彼女らと開発するなど、バリューチェーン上流のビジネスデザインにおける共創も可能であり、企業が主観的に考えて開発や戦略策定を行うよりも仮説精度を高めることが期待出来ます。

これだけ移り変わりの激しい世の中で、現在先頭を走っていても中長期的に最先端をキープして走り続けることは非常に難しくなってきています。大企業でももう安定はないでしょう。デジタル化が進む中で、それらを上手く使いこなすスタートアップや、思いも寄らない業界からディスラプターが襲いかかってくる時代です。インフルエンサーマーケティングは単に拡散するための手法ではありません。競争が激化するこの世界において、彼ら彼女らとの共創が企業にとって大きなヒントとなり、他社に勝つための強い武器となるのは間違いありません。

これまでSNS、そしてインフルエンサーマーケティングにおいての本質的な活用方法をお伝えしてまいりましたが、流行りだからそれらと向き合うのではありません。顧客第一主義を実現するためにはデジタル変革が必要であり、企業が生き残る為に生活者の視点を持つコミュニティリーダーとの共創が必要です。

共創は迎合ではありません。企業の信念と生活者の視点を織り成すことで、両者の強みを活かした今までにない新しいものを創ることが出来るのではないでしょうか。

多くの日本企業がこの可能性に気付き、世界で戦える商品やサービスを積極的に展開していく日を願ってやみません。

ライター野村 肇氏

indaHash Country Manager、ビジネスデザイナー、マーケティング戦略アドバイザー。ベンチャー創業、米ユニコーン企業の日本及びアジア圏の事業開発などを経験。現在大手ブランドを中心にデジタル変革からマーケティング及び営業戦略の策定、実行まで幅広く支援。

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