ヘルスケア業界の展望(第一章)

研究開発

2019年06月05日(水)掲載

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ヘルスケア業界の過去から現在

超高齢社会を迎え、ヘルスケア・健康産業の需要はますます高まっています。今後、さまざまな業種・業態から、「ヘルスケア分野」に新規参入する企業がさらに増えていくことが見込まれます。
今回は2章に渡り、今後のヘルスケア業界の展望について、i-commonに登録しているヘルスケア領域の専門家に取材しました。

1章では、過去にさかのぼり、現在までのヘルスケア業界の変遷について解説します。

ヘルスケアのイノベーションを過去から現在まで見通すと、イノベーションの原動力もしくはトリガーになった技術のいくつかはヘルスケア業界に元々あったものではないことが分かります。


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今では当たり前に遺伝子発現を網羅的に解析できますが、これは遺伝子チップや解析ソフトがあるから出来ることです。この遺伝子チップは、半導体製造装置や素材技術からなる製品で、情報を網羅的に解析する技術は情報技術の賜物です。もし遺伝子発現解析技術がなければ、遺伝子に関わる知見がかなり乏しいものだったに違いありません。少なくとも生命科学の発展がかなり遅れていたことは確かです。さらに現在では、高性能次世代シーケンサが登場し、ゲノム医療も本格化しつつあります。

また、徐脈の患者さんが生きていく上で必須のペースメーカーは、元々電気技師が開発したものです。今のような小型の植込み型になったのも、小型の回路設計技術、生体適合素材の利用、長寿命で小型の電池の登場があったからこそ実現しました。さらに、電気技術や電子技術をうまく扱うことで、血糖を自己測定するようなセンサーチップも開発されており、糖尿病の患者さんが自分で疾患管理を行うことが可能になっています。

そのほか、ヘルスケアのイノベーションの原動力にはどういったものがあるか、以下に事例を示します。

●生物学の進歩
●AIなどの人工知能、ソフトウエア技術
●センサー技術 
●新素材と素材加工技術
●計測・制御・設計技術
●電池や電源の長寿命化、安全性の向上
●薬事規制の緩和とハーモナイズ 
●オープンイノベーションマネジメント力の向上

ヘルスケアビジネスを支える技術の多くは、異業種の技術とその技術革新によって支えられ、これらが医療ニーズに合わせて巧みに組み合わされたものであることが分かります。

 さて、今後のヘルスケアの業界はどのようなものか、またそのトレンドはどのようになっていくのか。ヘルスケア業界の展望は、多くの科学者やエコノミスト、政策立案関係者たちから“考える素材”として好まれるものらしく、過去から現在まで、星の数ほどの予測がなされています。それほどヘルスケアが重要な産業として認識されているという証左です。一方で、各々の予測は大筋では似たようなものであっても、細部を眺めればかなり趣を異にするという特徴があります。

過去のイノベーションの原動力は先に述べた通りですが、未来のイノベーションの萌芽はどのようなものに注目すべきでしょうか。技術をそれぞれのフェーズで考察してみましょう。

バイオ技術は、まだ黎明期の初期に位置していますが、今後は急速に技術革新が起こると予想されます。ただし、臓器移植はかなり先の話で(血管系や内分泌系が入り込まない臓器移植は早期に実現すると予想)、これらの技術自体が創薬支援や医薬品生産に利用されるということから始まっています。バイオチップは、いろいろなことが出来そうな期待は今でも十分に大きいのですが、バイオチップを欲するコトが全然ついてこないという現状が見えています。

エクソスケルトンは既に実用化されつつあります。エクソスケルトンとは、HALに代表される外骨格ロボット技術です。これは「コト」(HALが必要とされる状況)と技術がうまくつながったことによる成功例と言えるでしょう。

3Dプリンティングは、ヘルスケアビジネスの世界でも活躍しつつある有力な技術ですが、次に注目されるのは4Dプリンティング技術ではないでしょうか。3Dよりも1次元多いのですが、この次元は「時間」です。時間の経過で変化する(もしくは復元する)可変体のプリンティング成果物が得られるのが特徴です。ヒトの臓器はまさに可変体の器官ですので、この器官再生に4D技術が組み合わさることで、より現実的な器官再生技術が生まれるのではないかと予想されます。

スマートダスト技術は、例えばナノレベルの大きさで自己制御可能なロボットまで発展すれば、生体内で器官の不具合を察知し、それとなく修復(利用)するといった活用が考えられます。
先進技術を眺めれば、これ以上に多くの医療医術への応用可能性が想像できそうです。ただし、これらの技術はやっと黎明期に差し掛かったところという印象で、これからの発展に期待が寄せられます。

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