自社採用に欠かせないEVP(Employee Value Proposition)

人事

2022年04月28日(木)掲載

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日本ではいま、少子高齢化や人口減少を起因とする人手不足が大きな課題です。採用に際し、これまで「選ぶ」側だった企業は「選ばれる側」へと変容しつつあります。

こうした社会変化のなかで注目されているのが「EVP」です。EVPとはEmployee Value Proposition(エンプロイー・バリュー・プロポジション)のことで、企業が従業員に提供する価値を意味します。現在働いている社員の転職を防いだり、優秀な人材に「ここで働きたい」と思ってもらうためにも、EVPは欠かせません。

本コラムではEVPの概要や、EVPが重視される理由、EVPの施策例などを解説します。

EVP(Employee Value Proposition)とは

改めて、EVPとはEmployee Value Propositionの頭文字をとった言葉で「従業員への価値の提案」を意味します。これまでは、従業員や求職者に対して「企業にどのような価値をもたらしてくれるか」という考え方が浸透していました。一方、EVPは「企業が従業員にどれくらいの報酬や待遇を用意してくれるか」という考えを指します。

EVPの具体的な設定項目はさまざまあります。まず報酬や評価に関することです。具体的には、給与やボーナス、従業員が納得できる評価制度や昇給制度などが挙げられます。次に、福利厚生や勤務形態に関することです。ワークライフバランスを配慮した勤務形態や有給休暇の推進、近頃はリモートワークの導入といった新たなワークスタイルに関するものもあります。また、キャリアアップのサポートや資格取得支援制度といった、キャリア形成に関することもEVPの設定項目に挙げられます。ほかには、多様性や個性を尊重する職場環境、経営理念やビジョンの浸透といった企業風土・文化などです。

なぜ重要なのか

EVPはなぜ注目され、重要といわれているのでしょうか。

理由は、人材の流動性が高くなっているためです。日本では長らく終身雇用が一般的とされてきましたが、現代では終身雇用制度での雇用が困難となりつつあり、ビジネスパーソンはより良い条件を求めて転職するのが当たり前になりました。そのため、優秀な人材の確保や定着が、企業の課題となっています。企業が従業員を選ぶ時代は終わり、いまでは従業員(求職者)が企業を選ぶという考えが強くなってきました。従業員・求職者に選んでもらえる企業となるためにも、EVPは重視しなければなりません。

また、働き方の意識が変化していることにも影響を受けていると考えられます。現代の従業員の働くモチベーションは、給与や報酬だけではありません。ワークライフバランスやリモートワークの導入といった働きやすさ、資格取得支援制度や研修・セミナーの参加費を負担してくれるかなど、従業員が企業に求める価値は多様化しています。ライバル企業に良い人材を奪われないためにも、EVPを重視して差別化を図ろうとする企業は少なくありません。

事例

企業によるEVPの施策事例を解説していきます。

ファーストフードチェーン企業の事例

ファーストフードチェーン企業のA社での施策は、誰もが働きやすい環境づくりや、従業員の育成です。A社では学生・主婦(夫)・シニア・外国人・障がい者など、さまざまな個性やバックグラウンドをもった多様な人材を採用し、一人ひとりが着実に成長していくためのトレーニングシステムが設けられています。A社では企業の成長を支えるのは「人」だとし、社員や店舗従業員が成長し活躍できる、従業員満足度の高い環境を目指しています。

メディア・インターネット広告関連企業の事例

メディア事業やインターネット広告事業を展開するB社での施策は、女性の活躍推進です。ダイバーシティ推進プロジェクトや、女性活躍推進制度などを通じて、さまざまなバックグラウンドをもつ従業員が、それぞれを理解しながら中長期的にキャリア構築できるようサポートしてきました。事実、全従業員のうち約3割が女性、管理職の女性比率も20%と、高い数値となっています。

総合電機メーカーの事例

総合電機メーカーであるC社では、従業員を「重要なステークホルダー」と捉え、一人ひとりの力が最大限活かされ、エンゲージメントを高めるための施策に取り組んでいます。C社では個の自律性と挑戦を尊重しており、人事戦略のワークフレームにおいても「個を求む」「個を伸ばす」「個を活かす」と再定義されました。ほかにも、さまざまなライフステージでライフイベントと仕事のバランスをとり、仕事を続けながら力を発揮できる環境整備のための制度も推進されています。

セレクトショップ運営企業の事例

セレクトショップを運営するD社では、従業員価値創造の行動指針を「いきいきと働ける職場」「公正・公平な職場環境」「従業員の健康と安全」「人材育成の環境づくり」と定めています。具体的な施策としては、納得性の高い人事評価制度に改定したり、全従業員を対象にした全社教育機関を設けたり、幅広いキャリアに挑戦できるよう社内公募制度やキャリア自己宣告制度を設けるなどです。そのほか、年に一度「従業員意識調査」を実施し、業務のやりがい・職場環境・教育制度・福利厚生などに関する声を集め、各種取り組みの改善につなげることも行っています。

テクノロジー企業の事例

家庭用のデジタル電化製品やソフトウェアなどの開発・販売を行っているE社では「在宅勤務アドバイザー」という名前でカスタマーサービス部門の職種を採用しています。パートタイムとフルタイムいずれも採用しており、最長9週間のオンライントレーニングを自宅で受けられるほか、製品割引や有給休暇といった福利厚生も用意されています。働く場所に関係なく、活躍できる場を提供している良い例です。

電気通信サービス企業の事例

電気通信事業を展開するF社では、人事ポリシーとして「多様な人材の活躍推進」「いきいきと働ける環境づくり」「事業戦略と社員への成長機会実現」を掲げており、ポリシーに沿った施策に取り組んでいます。「多様な人材の活躍推進」としては、女性活躍推進などに取り組んでおり、女性管理職比率を20%に引き上げる目標を掲げ、女性活躍推進委員会を設置しました。「いきいきと働ける環境づくり」では、テレワークやサテライトオフィスなどの新たなワークスタイルを導入しています。「事業戦略と社員への成長機会実現」としては、社員の新規事業への挑戦機会を設けるため、メンバー公募のジョブポスティング制度を導入しました。そのほかにも、F社ではさまざまな施策に取り組んでいます。

まとめ

EVPは「従業員への価値の提案」を意味する言葉で「企業が従業員にどれくらいの報酬や待遇を用意してくれるか」という考えを指します。近年、人材の流動性が高くなっていることを背景に、優秀な人材の確保や定着が企業の課題となりました。会社が従業員を選ぶのではなく、従業員が会社を選ぶ考えが浸透してきたことで、企業は従業員に選んでもらえる企業を目指し、EVPを重視する風潮が生まれています。本コラムでは、EVPを設定している企業の事例を6社ご紹介しました。

企業と従業員の関係性が様変わりするなか、企業は従業員を重要なステークホルダーであると認識し、然るべき投資を行う必要があるでしょう。人事部門も従業員の声を聞き、必要な施策や取り組みを構築することが重要です。

EVPを重視する企業は今後も増えていくと予想できますが、一方で「EVPの設定のやり方が分からない」という企業もまだ多く存在するでしょう。

経営支援サービス「i-common」では、課題解決に必要な経験・スキルを備えた専門家をご紹介し、実働型の支援でプロジェクトに伴走します。EVPの設定に際しお困りの際は、ぜひお役立てください。

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