企業がとるべきパンデミック感染症対策と事業継続計画(BCP)①

法務・ガバナンス

2020年03月16日(月)掲載

新型コロナウイルスの脅威により、頭を悩ませている経営者の方や企業の方は多いと思います。新型コロナウイルスのパンデミックは、世界的な不況をもたらす可能性が十分にあります。そこで、パンデミック感染症対策やその後の経営に向けて、企業がやるべき施策を紹介していきます。
後編はこちらの記事にありますので、そちらも併せてご覧ください。

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事業継続計画(BCP)とは?

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。(中小企業庁 中小企業BCP策定運用方針より)

POINT

・BCP(事業継続計画)とは、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業継続のための方法を取り決めておく計画のこと。

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物足りない事業継続計画

中国から世界中に広がった新型コロナウイルスは、この原稿を執筆している2020年3月上旬段階では感染が拡大しており、残念ながら治療方法もまだ模索している状況です。

ウイルスは今後の被害の拡大が予想できない

この新型コロナウイルスはまだ病気そのものの知見が不十分で未知の部分があるため、健康被害のリスクの評価が難しい状況です。そのため、世界的に感染拡大防止のため地域封鎖や国境での水際対策、学校の閉鎖やイベントの中止などの取り組みが行われました。これらの対策は一方で人と物の移動を阻害することから、企業活動やサプライチェーンに対して大きな影響を及ぼしています。

今回の新型コロナウイルスに対応するために事業継続計画を発動しようとして当惑した企業も多いようです。実は、感染症対応については、地震を元にした事業継続計画では対応できない場合が多いのです。これは、地震が「急激に減る資源への対応」であることに対し、感染症対策の場合は「緩慢に増大するリスクと足さなくてはならない資源への対応」の違いがあるためです。

地震や風水害の場合には、「最初の一撃」で企業活動に必要な資源にインパクトがあり、何かが欠けたことで一時的に事業が中断することが問題となります。そこで、目標復旧時間を定め代替え措置や再調達を行い事業の早期再開を図ります。

しかし、感染症の場合には緩慢に影響を与えてくるリスクに対して、経営資源を足すことで影響を低減する取り組みが必要です。例えば、普段は必要がないマスク等の着用を顧客から求められて、慌てて調達した企業も多いのではないでしょうか。また、連鎖的広域的に影響する市場と経営資源の減少は、地震や風水害に比較し破壊の程度は小さいものの影響は世界規模になる場合があります。

今までの事業継続計画は「地震」軸であった

我が国の事業継続計画は、予測できない不足の事態の中でも、特に、「地震」に特化して考えられていました。では、なぜ我が国の事業継続計画が地震を軸に展開されてきたのでしょうか。それは、事業継続の概念が我が国に導入された際に、それまで馴染みがない取り組みであったため災害としてイメージしやすい地震を題材として作成が進められたからです。その後、東日本大震災や北海道胆振東部地震など大きな地震が相次ぎ、企業は災害対応の一環として地震を想定した事業継続計画の策定を進めてきました。

また、ここ数年は多発する風水害に対する対応として事業継続計画が発動されるケースも多く自然災害対策として事業継続計画が普及してきました。
但し、コンサルティング会社に発注して方針とマニュアルを整備してもらったものの、社内への浸透が不十分なため「使えない事業継続」となってしまう失敗事例もあります。まず、「災害対応」と「事業継続」は分けて考える必要があります。「災害対応」は、地震・台風・大規模停電など事案ごとに対応計画を立案し資機材を揃え、訓練する必要があります。「事業継続」は発生した事案の影響から企業を守るための経営戦略としての取り組みです。

POINT

・新型コロナウイルスは、まだ病気そのものの知見が不十分で未知の部分があるため、健康被害のリスクの評価が難しい。
・感染症の場合には、緩慢に影響が出てくるため、経営資源を足すことで影響を低減する取り組みが必要である。
・日本は、災害として「地震」がイメージされやすい国であったため、事業継続計画が地震を軸に展開されてきたという背景がある。

「災害対応」としてのパンデミック対策

パンデミック対策は、「感染源(病原菌やウイルス)」「感染経路」「感受性体(感染する生き物)」の三要素の関係を遮断する対策が重要となります。なかでも「感染経路」への対応が重要となります
特に、2020年3月WHOが「パンデミックである」と述べた新型コロナウイルスは、「飛沫感染」「接触感染」が主であり「ふん口感染」「エアロゾル感染」もあるとされています。
「飛沫感染」は感染者の会話や咳・クシャミなどにより飛散した唾などのしぶきによる感染です。「接触感染」は感染者の飛沫がついた物や、感染者が触った物を触り、その手から感染が広がる場合です。災害対応としてはこの二つの感染経路を遮断することが重要となります。

今回は、新型コロナウイルスをはじめとした飛沫感染・接触感染への対策方法をお伝えします。

手洗いの励行

「接触感染」は、ウイルスが付いた手で鼻や口を触ることや食べ物を触ることで生じます。そこで頻繁に手洗いを行い、ウイルスを洗い流してしまうことが重要です。石鹸を使い、30秒ほどかけて手洗いしウイルスを洗い流します。但し、手は短時間に色々なものを触りますから一日に何度も手洗いをしましょう。花粉症の方は洗顔もお勧めします。

清掃の徹底と頻度の増加

新型コロナウイルスはドアノブなどに付着した状態でも数時間から数日は感染する力を保持しているそうです。9日間感染力を持っているとの研究もあります。一方、アルコールには弱く、普通のふき取り掃除等でも除去できるとのことですから、人が触れる場所については定期的に拭き掃除やアルコール消毒が大切です。清掃業者任せにせず、オフィス・工場内の要所を安全衛生委員会で点検し「人が触れる場所」をリスト化して清掃しましょう。電話やキーボード、給茶機のボタン、複合機なども清掃の対象です。なお、応接室や会議室、ミーティングルーム等の利用は届け出制として、終了時には隅々まで清掃することを義務付けましょう。

換気

ビルに入居している場合には、窓が開かないため自然換気が難しいケースが多いのですが、極力換気を心がけましょう。過去の感染症でも自然換気は効果的であったとの研究があります。新型コロナウイルスは、ライブハウス・屋形船・スポーツジム等の締め切った環境内での感染が多いようですので執務空間の換気が重要です。

対人距離の確保と対人接触の抑制

ウイルスを含んだ飛沫は二メートルほど離れれば影響は少ないと言われています。来客や面談の場合には対人距離を確保し、短時間に済ませるようにしましょう。カウンセリングなど時間が必要な場合には、感染のリスクとカウンセリング方法について面談時に説明し、以後は面談と電話対応を併用して行いましょう。感染の拡大が続いている社会情勢の場合には来客はお断りし、全てメールやネットワーク会議等で対応するようにしましょう。

健康管理

平常時の対応測定・記録を励行し、体調の変化に関心を持たせるとともに、客観的に体調不良者の早期発見に努めましょう。体調不良時の休養は当然ですので、一定期間の療養を指示しますが、医療機関の負担軽減のために軽症での「診断書」や「完治証明」等を求めないようにしましょう。
また、接触するメンバーを特定するためフリーアドレスは廃止し、出社する場合の席を固定的に運用することも必要です。

テレワークの推進

新型コロナをはじめとするパンデミック対策として各企業が取り組んでいるテレワーク等は、「働き方改革・仕事改革」のまたとない機会です。しかし、折角テレワークを導入したにも関わらず、書類にハンコが必要なために出社せざるを得ない 企業もあるでしょう。
これまでの会社の文化として冗長な仕組みが残っている場合には、経営者は大きな決断をすべき時代に入っています。経営効率を高めて生産性を上げるには「働き方改革・仕事改革」が不可欠であり「テレワーク・業務効率化」が大きな柱です。

従来「万が一のミス」や「不正」を防止するため、企業は業務に階層を設け権限と確認機能を幾重にも重ねてきました。これは人のミスや不正を次の人が発見し「万が一」に備える仕組みです。

しかし、業務が様々なソリューションによって処理される今日では、多層化したチェック機能などはシステムの複雑化を招きコストの上昇と事業継続性の低下に繋がります。

「わが社は特殊だから」とシステム化に注文を付けるよりも、市販の仕組みを活用して簡潔かつスピーディに業務を進めることを検討すべきです。オフィスに噛り付く人が減ることによるオフィス経費の低減は大きなコスト削減です。一方でテレワークに利用できる様々なサービスが低価格で利用できる時代となりました。

通勤時間の混雑は感染のリスクが高く、時間の浪費でもあります。技術革新により働き方も新たな時代に入ってきました。柔軟な働き方で人財を確保することもリスクを軽減する対策の大切な取り組みです。

POINT

感染症対策として、ウイルスの拡大を防ぐことが最重要である。ウイルス拡大防止に向けてできることは具体的に以下などである。
・手洗いの励行
・清掃の徹底と頻度の増加
・換気
・対人距離の確保と対人接触の抑制
・健康管理
・テレワークの推進
中でもテレワークは今後の業務効率化のためにも必須項目であり、この機会に導入されるべきである。

近年、企業の評価項目として「健康管理経営」も着目されるようになってきました。企業が社員の健康に対しどのように関心を持ち配慮しているかが、ユーザー・投資家・応募者から関心を持って見られています。新型コロナウイルスを契機として、パンデミック対策を一時的な事案対応に終わらせること無く、企業体質強化の機会として活用することが肝要です。 

続きは、下記の記事で公開しておりますので、ご確認ください。

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パンデミック対策にはアドバイザーを

今、求められるのは、災害を「地震」のイメージでしか捉えてこなかった日本が、「感染症」をも視野に入れた事業継続計画を作成することです。

先述しましたが、新型コロナウイルスを契機として、パンデミック対策を行うことが非常に重要であることは明らかです。組織強化にお困りなら、社内での解決で最善を目指すのは限界があります。社外のプロ人材の視点を取り入れることで解決しましょう。i-commonでは、さまざまな経営課題を解決してきた顧問が多数在籍しています。業界も幅広い顧問がいるため、自社にぴったりと合った人材を見つけることができます。社外のノウハウを簡単に取り入れることができますので、ぜひ検討してみてください。

執筆者H.K氏

日本大学卒業後、生活・公共サービス業界の大手企業 に37年間勤務。施設管理と危機管理の取り組みを行い、取締役常務執行役員を最後に2019年に独立。事業継続や災害対応に関するコンサルティング・セミナー・訓練等を行っており、判りやすい説明と実戦的訓練に定評がある。

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