BtoB企業のブランディング、基本の進め方や成功事例

マーケティング

2020年03月04日(水)掲載

前回のコラムでは、マーケティングは経営そのものであるということと、BtoBには特有の難しさがあることを解説しました。

2回目の今回は、経営そのものであるが故に、連携すべきブランドの考え方とその実現に必要不可欠なBtoB特有な商品企画の課題を解説します。

ブランディングの進め方

「ブランド」とは何でしょうか。
それを「その会社らしさ」と簡単に表現するならば、その会社または商品やサービスから想起される特長が明確である必要があります。お客様はその「らしさ」にメリットを感じて多くの競合ブランドの中から選ぶのです。これは競争市場におけるその会社の存在意義にも通じると筆者は考えています。
これを議論するときに注意が必要なのは、「らしさ」を「ブランド」と認めるのはお客様であるということです。綺麗に謳った商品やサービスにお客様が実際に触れて、「これがxx社なのか!」や「これってxx社らしいね!」と感じていただけた時に、企業の意図とお客様のベネフィットが繋がり、「ブランド」として機能するのです。この様なお客様の感情を「らしさ」として作り出す経営を推進強化していく事が「ブランディング」ということになります。

図:筆者作成

上図左の看板のように読み方がわからないことや自己主張だけのアピールでは、お客様不在のブランディングということになってしまいます。

近年の日本企業は、欧米に比べるとこのようなブランド戦略に差をつけられているよう感じます。それは日本人の弱さなのでしょうか。
古くは戦国時代に遡ります。例えば六文銭を掲げた赤い甲冑で戦略的に攻めてくる真田軍は、敵将にデザインと色を見ただけで逃げ出したくなる感情を抱かせる強いブランドを持っていたのではないでしょうか。日本人はブランドに疎いのではなく、ブランドを体現するための戦略性に課題があるのだと考えます。

ブランドには以下の3つの効果があり、それらを差別化戦略として機能することができます。
① 新規客のMind Shareを得る。
② 既存客のLoyaltyを向上する。
③ 社員及び関係者の自信を醸成する。

図:筆者作成

その推進をマーケティングとして実施するのであり、従って「マーケティングはブランドを実現する戦略」と言えます。言い換えると、マーケティング戦略を考える上でその方向性をブランドで示す、ということです。ここではそれを「ブランドビジョン」という言葉を用いて解説しますが、それは経営理念やMission/Vision/Valueと捉えることもできます。

下図のように進める戦略策定では、個々の戦略においてモデリングする「あるべき姿」は必ずしも一つではありません。社内外の環境または組織や人によって様々です。しかし企業の全ての戦略は経営理念に基づくべきであり、それをお客様のベネフィットとして具体化するブランドビジョンで導くことが必要です。個々の戦略は、このようにブランドビジョンに収束させることで有機的に連携するようになります。そのような戦略統制の結果、企業としての個性を生かし伸ばしていくことができるのです。

図:筆者作成

① 事実データを活用してAsIsを把握
② ブランドビジョンに基づいてToBeを描く
③ それらのGapを理解
④ 状況とその時点の実力から推進をフェーズ分け

ブランドビジョンがなければ戦略はバラバラになってしまい、企業としての強みを生かせない場当たり的な措置になってしまいます。そのような戦略は一時しのぎであり、やがて機能しなくなり、その結果同じ過ちを繰り返して社員が疲弊してしまいます。ブランドビジョンは誇れる戦略を社内で共有することで社員をイキイキとさせ、成長させながらポテンシャルを引き出すベースになるのです。

POINT

・ブランディングとは、お客様に自社らしさとメリットを感じてもらう経営を推進強化すること。
・ブランドによる3つの効果「新顧客からの認知」「既存客からの納得の向上」「社員や関係者の自信醸成」
・マーケティング戦略の方向性をブランドで示すことは「ブランドビジョン」と言え、企業としての個性を伸ばすには、ブランドビジョンは全ての戦略の根本にあるものにならなければならない。

インターナルブランディング

ブランディングは社内にも有効です。その社内向けのブランディングを「インターナルブランディング」または、「インナーブランディング」と呼びますが、ここが不十分であるために戦略自体が機能しきれないケースがBtoBマーケティングで散見されます。

多くのBtoB企業がモノ売りからコト売りへの変革に挑戦しています。従来のハードウエア提供だけでは市場変化に耐えられなくなったため、ソリューションとしてお客様へ課題解決を提案する中で、自社の商品やサービスを購入していただくスタイルに変えていこうとしているのです。しかし、その推進のためには社内改革が必要です。

では、社内のどの組織の改革が必要なのでしょうか。

営業、サービス、モノづくりなど様々な部門がありますが、全ては企業ブランドを体現するために存在しています。管理部門はお客様と直接的な接点を持つ機会が少ないのですが、直接部門の活動をインフラ面で支援する最も身近なパートナーです。営業もサービスもモノづくりも管理部門も、シームレスに連携すべきバリューチェーンを構成する一つの要素です。それぞれの部門が密に関係することで価値が増大していくのであり、インターナルブランディングによって全社一丸となって事業品質を高め、それを推進することで企業のポテンシャルを発揮するのです。

図:筆者作成

その中心になるのが提供価値を生み出す商品企画です。
その詳細は後ほど解説しますが、市場へ提案する商品を企画する際に、そのコンセプトは当然ながらブランドビジョンと密接であるべきです。ブランドビジョンと合致しない商品だとすると、「その会社はその商品に本腰を入れないので直ぐに撤退してしまうのではないか?」とお客様は考えます。
また、その商品の売り方や宣伝広告などを商品企画とは別に、営業部門や広報部門が策定するのではなく、企画時点で考え抜かれたことがベースとなるべきです。特に企画発案した目的や目標は提供価値コンセプトとして社内の関係部署間で必須の共有項目であり、開発や製造部門においても全く同じ関係です。

図:筆者作成

モノづくり現場では製造上で様々な意思決定がなされますが、それもブランドビジョンに基づく商品企画で決定された商品コンセプトがベースとなるべきです。そこに問題があるのであれば、関係する部門は商品企画に参画するべきであり、それによって全社共有するブランドビジョンが体現されるのです。

POINT

・企業内の様々な部門がより密に関係することで、事業品質が高まり、企業としてのポテンシャルを発揮することにつながる。
・製造上での意思決定もブランドビジョンに基づく商品企画で決定された商品コンセプトをベースに。
・問題が発生時、関係する部門が商品企画に参画することで全社共有のブランドビジョンが体現する。

ブランドを体現するのはソリューショニストである「ひと」

インターナルブランディングにもう一つ重要な観点は「ひと」に着目することです。
全ての意思決定は「ひと」によるものであり、従って全社員のマインドをブランドビジョンに連携させるのです。
以前に、不正競争防止法や個人情報保護法等のために、全社で一斉に情報セキュリティ強化に乗り出した時期がありましたが、強固な技術的対策を施しても一人ひとりの考え方や姿勢が伴わなければ意味を成しませんでした。
要するに、企業として戦略を推進するために以下のような社員マインドを前提とすることが必要なのです。
① 企業として何をしようとしているのか、その考え方を全社員で共有する。(ブランドビジョン)
② 一人ひとりがその企業で働く目的を持つ。(ブランドビジョンにおける社員一人一人のエンゲージメント)
このようなことを常に意識することで、各戦略が有効に機能しはじめます。

筆者が考える「BtoB企業で働く目的」は、お客様が働く組織であるということから、組織や社会への「貢献」による未来社会の共創です。
それにはモノを提供するだけではなく課題解決を考えていくスタイルへ変更することが必要であり、そのためにソリューショニストとして全社員が物事の考え方を見直していくことが必要です。その考え方をベースにして、ソリューションカンパニーとしての組織と社員が社内でブランドを体現するのであり、これがBtoBには非常に大切なことなのです。お客様毎に課題は異なり、BtoB企業社員も一人ひとりのバックボーンは様々です。従ってソリューションは教科書的に丸暗記すれば良いというものではなく、正解はありません。常にお客様の立場で何が最善なのかを考えることが必要であり、だからこそ社員のマインドがベースとなるのです。

このように販売戦略や商品戦略、また企業としての経営計画においても「ひと」は経営資源であり、マーケティングの大きな要素なのです。教育や研修だけで人財開発ができるものではありません。普段からの業務の中でブランドビジョンを浸透させ、それによってマーケティング戦略を実行していくことが必要です。従って筆者は、マーケティングの4Pに「PEOPLE」を追加して常に5Pで考えています。ソリューションカンパニーへの変革方針を打ち出すBtoB企業は多いのですが、人財マネジメントなくしては達成できるものではありません。例えばCSは重要な経営指標ですが、そのCSを向上させるために、まずは社員満足度またはエンゲージメントが強化されるべきです。

図:筆者作成

「自社の強みは人」と言うリーダーが多くいます。
しかし、この表現では言葉が足りなく誤解を与えてしまう可能性があります。「ひと」が強いというのは結果論であり、人依存した経営ということになってしまうと思います。ブランドビジョンを体現して、牽引する「ひと」に成長する制度や仕組み及び結果としての企業文化が強みであるべきだと筆者は考えています。それはマーケティング戦略が常にサイクルとして機能し、その前提として明確なブランドビジョンがあるということです。その意味で人事部門はとても重要なマーケティング部門であるということになります。

ソリューションカンパニーの「ひと」に求めるスキルは何でしょうか。
もちろん論理思考能力やコミュニケーション能力は必要なのですが、ソリューショニストとしての姿勢がベースです。「お客様の為に」ではなく「お客様の立場で」考えることが必要であり、それは社内他部門への働きかけも同じです。
詳細な解説は別の機会に譲りますが、BtoBマーケティングの推進には、心の知能指数と言われる「EQ」を指標とした人財のブランディングが必要不可欠であり、長い時間をかけて推進していく必要があります。

ここまで、インターナルブランディングに重要なのは、全ての社内組織が提供価値を生み出すためのバリューチェーンとして繋がっているということと、活動のベースは社員のマインドからである、ということを解説してきました。これらの観点こそが初回のコラムで解説したように、マーケティングが経営活動そのものということを示しています。

POINT

・活動のベースは社員のマインドなため、インターナルブランディングの重要な観点は「ひと」。
・「ブランドビジョン」と「一人ひとりがその企業で働く目的」を常に意識することで、戦略が機能する。
・モノを提供する意識から課題解決を考えるスタイルへの移行がBtoB企業には大切。

ありがちな商品企画

インターナルブランディングの次にエクスターナルブランディングへ話を移します。
お客様がブランドを最も強く感じる瞬間はいつでしょうか。
華やかな宣伝広告を見た時、webサイトで有益な情報に辿り着いた時、営業マンがタイムリーな提案をしてくれた時、故障してもサポートが親切に対応してくれた時、社長の発言を見聞きした時、商品やサービスを使っている時など、様々なシーンが想定されます。
BtoB企業の社員がお客様に接している時は、その社員がブランドの代表になりますのでお客様はそこでブランドを感じ取ってくれることでしょう。よって、上述のように社員のインターナルブランディングが重要なのですが、一方で社員から手が離れているシーンではどうでしょうか。
お客様が商品やサービスを使っている時や効果を得た時は、BtoB企業が生み出した「価値」をCXとして体験していただくことでブランドを非常に強く感じていただいている瞬間です。場合によっては、間接部材などで使用後のメンテンナンス時に気付くこともあるでしょう。そのような商品やサービスを創造して提供することはBtoBとして最も重要な機能なのです。販売や開発製造も勿論重要なのですが、そのスタートポイントとしての商品企画の役割は非常に大きなものとなります。

初回のコラムで解説したように、BtoBは経験に基づく専門的なナレッジと技術で戦うのですが、革新的な技術開発は容易ではなく、従って現状の機能更新が商品企画の主眼となってしまう傾向があります。競合商品に負けてはいけないという着眼点は大切ですが、それが強すぎるあまりに競合性能を上回る商品の改廃で手一杯になってしまい、結局レッドオーシャンの連続となってしまいます。
その商品でお客様は、何をしようとしているのか、今後何をしなければならないのか、このような本質を見極める着眼点と論理的思考を持つことが必要です。そのために下図のような情報を活用し、それによってソリューションを実現する商品を企画することができるのです。

図:筆者作成
POINT

・お客様が自社製品を外部で使用して価値を体感した際、ブランドを強く感じてもらえる。
・お客様目線で本質を見極める着眼点と論理的思考が大切。

CMOではなくC3PO

インターナルブランディングとして、組織間連携と社員のソリューショニスト化、エクスターナルブランディングとしては商品企画がベースとなることを解説してきました。また初回のコラムでは、BtoB特有のお客様訴求が重要な活動であることを解説しました。これらの強化は、ブランディングとして推進するマーケティングの大きな強化ポイントと言えます。

一方、企業のマーケティング最高責任者であるCMOがカバーすべき領域は、マーケティングが経営活動そのものであるために非常に大きくなります。そのため上記3点の強化連携の優先度を高くしてみてはいかがでしょうか。
その組織機能をChief 3P Officerと言うかどうかは別として、総じてここにBtoBマーケティングの課題が集まる傾向があるため、このような着眼点が必要です。

図:筆者作成

① Product :ブランドを体現する提案型の提供価値を生み出す
② Promotion :デジタルを活用した効果的リードジェネレーション
③ People :組織間連携とソリューショニストとしての人財開発

POINT

・インターナルブランディングは「組織間連携」「社員のソリューショニスト化」がベース。
・エクスターナルブランディングは「商品企画」がベース。

企業の個性を活かして価値を提供し続け、それによってブランドビジョンを実現します。それは企業経営そのものであり、その中心は日々活動する社員と提供する商品サービスであると解説してきました。
次回最終回のコラムでは、その活動に求められる重要なスキルである、「論理的な戦略思考」と「データ分析とDX」を解説します。

BtoB企業のブランディングを成功させた事例なら

BtoB企業のブランディングに悩むなら、i-commonに相談してみてはいかがでしょうか。i-commonには、BtoB企業のマーケティング戦略やブランディング戦略についてアドバイスできる顧問が多数在籍しています。

BtoB企業において、ブランディングは非常に大切です。社外に対して信用性をアピールすることができ、売上を拡充することができたり、社内に対して良い印象を持たせることができたら従業員のコミットメントが向上したりします。

自社の経営に少しでも課題を感じているのであれば、ご相談ください。様々な分野に特化した専門性の高い経営顧問が貴社の事業を支援します。

ライターH.Y氏

31年間製造業界の大手企業3社でITとマーケティングを推進。ITでは業務改革から情報システムを構築し在庫半減を実現。マーケティングでは営業と商品企画およびブラディングとしての経営計画をデータ分析の活用と共に戦略推進し、デジタルマーケティングで当時の引き合い数の10倍化に成功した実績も有り。

関連コラム

ページTOPへ戻る