導入企業様と支援顧問の
対談インタビュー

千代田化工建設株式会社

売上:
1000億円以上
業種:

新規事業、システム

社内DXを起点に革新的システムを共同開発。新会社を設立し世界へと展開

対談01

  • 株式会社PlantStream代表取締役CEO愛徳誓太郎氏

  • i-common登録顧問鴨林 広軌氏

  • BEFORE導入前の経営課題

    AIを活用したプラント設計業務の効率化を目指し、複数のAIベンチャーとPoCを進めていたが、思うような結果を得られずにいた

  • AFTER導入による成果

    専門家の助言によりAI導入ではなくシステム構築へと方針を転換。結果、画期的な「空間自動設計システム」の開発に成功し、JV設立による事業化へとつながった

企業の“魂”である熟練技術者のノウハウをシステム化する

大規模プラントの設計・調達・建設(EPC)を世界各地で手掛ける千代田化工建設株式会社と、CADソフト開発のスタートアップである株式会社Arentは2020年7月、合弁事業「PlantStream」をスタートした。これは、独自に開発した自律型CADによってプラントの空間設計業務を大幅に効率化するもので、もとは千代田化工建設の社内DXプロジェクトから始まった新規事業だ。遡ること2年前、i-common登録顧問であるArent代表の鴨林広軌氏が、外部コンサルタントとして同プロジェクトに参画したことが、両社の協業の起点となった。3か月にわたるコンサルティングを経て、システム開発の方向性が固まったことから、その後は千代田化工建設とArentが開発契約をし、本開発のフェーズへと移行した。千代田化工建設の一社員から新会社PlantStreamの代表取締役CEOに抜擢された愛徳(なるえ)誓太郎氏と、鴨林氏に、開発プロジェクトの経緯や今後の展望を語ってもらった。

愛徳誓太郎氏(以下、敬称略)2018年当時、千代田化工建設ではAIによる配管設計の自動化を目指して、複数のAIベンチャーとPoC(コンセプト実証)を進めていました。ただ、1年以上かけても思うような結果が出ず、模索が続いていたときに、i-commonを通してお会いしたのが鴨林さんでした。最初の面談で鴨林さんから「そのやり方ではうまくいかないと思います」とはっきりと言われて。目指すものを実現するには、違うアプローチの方が適していると明確に指摘していただき、進むべき方向性が見えたのをよく覚えています。

鴨林広軌氏(以下、敬称略)AIを導入するにはビッグデータの存在が前提となります。しかし、世の中に大規模プラントは何万基もあるわけではなく、現段階ではデータ不足から、AIに精度は期待できないと考えました。一方で、案件の中身を精査したところ、複雑ながらも数式化できるロジックが明確に見いだせたため、今回はAIではなく、CAD開発の方が適しているとお伝えしました。

愛徳課題の本質を把握して解決しようとする姿勢が最初から強く伝わってきました。今回われわれが業務効率化に取り組んだ背景には、プラントの空間設計における膨大な業務量が、エンジニア・熟練設計者にとって過負荷となっている実状がありました。私自身、配管設計部で16年間設計に携わりましたが、プロジェクト遂行中は常にスケジュールに追われ、関係各所からの要求の調整に消耗する毎日。家庭の事情などで働き方に制約があるエンジニアは、プロジェクトに参画することも難しく、この状況をどうにか変えなければという使命感が出発点でした。

鴨林プラント設計は非常に複雑で奥が深いですよね。私たちArentがまず取り掛かったのも、プラントの業務について徹底的に学ぶことでした。このプロジェクトは、千代田化工建設様が何十年と培われてきたプラントの設計標準、いわば会社の魂の部分をシステム化するものであり、それにはプラントを深く熟知することが不可欠でした。職人の熟練の技を実装していく上で、数学力とプラントのノウハウの両方が高次元で必要だった点が、今回の開発の大きな特色です。

愛徳実際にArentの皆さまの説明は、プラント技術者と見間違うほど専門的かつ的確で、そこは千代田化工建設側が最も評価した部分でもあります。ひと口に配管と言っても、単につなげれば良いわけではなく、プラントの操作や保守のしやすさ、環境負荷など、プラントごとに異なる様々な条件や制約を踏まえて設計する必要があり、複雑さを極めます。そうした細かいところにも考慮が行き届いたソフトウェアでなければ、実際に設計の現場で使ってはもらえないと考え、Arentの皆さまに細部まで突き詰めて開発をお願いすることになりました。

鴨林意識したのは、早い段階でプロダクトをお見せし、少しずつ規模を大きくしながら、プロダクトが着実に育っていく姿を見せ続けることです。モノがあることで、そこにディスカッションが集中します。何度も繰り返したレビュー会では、「ここが足りない」「この機能も欲しい」といった忌憚のない意見が交わされました。モノをいち早くお見せして、できることの質と規模を具体的に証明したことも、上層部の方々のスピーディな承認につながったと考えています。

日本のDXの可能性を拓くモデルケース

愛徳JV設立による事業化を経て2020年9月、世界に向けてプロダクトを発表しました。反響は大きく、世界の名だたるプラントオーナーやコントラクターから問い合わせをいただいています。改めて、設計業務の効率化は、業界の共通課題なのだと確信しました。この課題を解決し得るソフトウェアとして、PlantStreamへの期待が高まっていることを感じます。まずは業界のプラントオーナー様、エンジニアリング会社様への広い周知に努め、実際に使って効果を体感いただくことに注力したいですね。

鴨林これまで、他社様ともこうした開発プロジェクトに取り組んだ経験はありますが、現場のメンバーの方が熱意にあふれていても、上からのGOが出ずに進まないケースが少なからずあります。しかし今回は、愛徳さんとわれわれArentだけでなく、承認する上長の方々も含めて、一つのチームとして進んでいけた非常に稀有な例だと思います。おそらく途中には様々な課題や反対の声が社内であったはずですが、「このプロジェクトは進めるべきだ」という考えを持って後押しをしてくださる方が多かったからこそ、難所も突破できたのだと思います。

愛徳今回の成果として、空間設計の効率化を実現できただけでなく、プラントエンジニアが蓄積してきた特殊なノウハウをマネタイズする新たな道筋をつくれたことも、画期的な点と言えます。今後の可能性として、別の企業様の設計ノウハウとArentのCAD技術の組み合わせによる開発もあり得ると考えています。

鴨林日本のものづくりの技術でしかできないことはまだまだ多くあり、ソフトウェアの世界なら、そうしたオンリーワンの価値に光を当てて差別化につなげることが可能です。その意味で今回のプロジェクトは、日本のDXの可能性を広げるモデルケースになり得ると捉えています。すでにPlantStreamに対しては、「より深いところまで自動化してほしい」「別の業界の設計に使えないか」といったタテ・ヨコ両方向への機能拡張のニーズも届き始めているので、そこにも対応していく考えです。

愛徳そうした様々な要望に応えながら絶えず改善を重ねていける点も、プロダクトを外販する大きな意義ですよね。事業化にあたっては「自社の強みをシステム化して競合他社に売るなんて」という反対意見も社内に根強くありました。しかしながら、プロダクトの出来を見て将来の拡張性への理解が広がり、そうした意見も賛同へと変わっていきました。あくまでシステムはツールであり、それを使いこなす社員・ユーザーが育成されてこそ真の競争力に繋がると思います。

鴨林開発したシステムを社内だけに閉じて使っていると、ある一定の性能で「良し」とされて改善のスピードが鈍化し、結果的に後から出てきた他のシステムに追い越されてしまうことはよくあります。外に売ることは、プロダクトの競争力を保つ上でも必須の選択だったと言えます。

二者択一ではない新しい起業家のあり方を体現

愛徳私は入社以来、設計ひと筋でキャリアを積み、ビジネスの知見はありませんでした。それが今、こうしてCEOの立場を担えているのも、鴨林さんとのやりとりを通じて広い視野を持つ大切さや、経営者として必要な覚悟を学べたからです。エンジニアは総じて、一つのものをつくり上げることに全情熱を傾けますが、これからの時代は、それに加えてビジネスを学ぶことも必要だと気付き始めた人は多いと思います。

鴨林愛徳さんは使命感と熱意を持ってこのプロジェクトに挑み、一社員からJVの社長に就き、今や世界のトップ企業とやりとりをしている。その姿はまさに、Arentが目指す新しい働き方の体現でもあります。世間では往々にして「サラリーマンか起業家か」という二者択一の考え方をされがちですが、大企業のメンバーでありながら、なおかつ起業家のように自身のやりたいことに使命感を持って取り組む事例がもっと増えていいはずだと、常々考えてきました。それにバッチリとはまったのが愛徳さんです。

愛徳確かに今回は、大手企業とスタートアップが互いのリソースをうまく有効活用しながらプロジェクトを拡大していけた理想的なケースだと捉えています。i-commonのサービスを利用して良かったと思うのは、多くの登録顧問の中からぴったりな方を提案いただけたこと。オープンイノベーションを目指す上で、適したパートナーを自分たちで見つけることは人脈の面でもマッチングの面でも極めて困難ですが、その橋渡しをしてもらえるのは非常にありがたいですね。私にとって、鴨林さんをはじめArentの皆さまは、目指すものに向けてともに苦難を乗り越えてきた“戦友”だと感じています。

鴨林登録顧問の立場からも、i-commonを介したイノベーションの可能性を改めて感じました。今回のお話をいただかなければ、プラント業界にこうした課題があることは全く知らないままでした。普段は接点を持ちにくい様々な業界の企業様の課題に触れ、理解を深め、その解決に最新のIT技術で挑んでいく。新たな挑戦につながる広い視野を与えてもらえるサービスだと実感しています。

  • 千代田化工建設株式会社

    株式会社PlantStream代表取締役CEO愛徳誓太郎 氏

    信州大学工学系研究科卒業後、2004年千代田化工建設株式会社 配管設計部に配属。海外プロジェクトのプロットプラン、配管設計を担当。2018年から空間自動設計システム開発タスクリーダーを経て、2020年株式会社PlantStream代表取締役CEOに就任。

  • i-common登録顧問

    取締役鴨林 広軌 氏

    京都大学理学部数学科卒業後、株式会社MU投資顧問、グリー株式会社を経て、2015年株式会社Arentの代表取締役社長に就任。VR/AR、AI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術を駆使した開発を強みに、ITエンジニアと経営の両軸の考え方で複数の企業を支援し、活躍している。

企業名
千代田化工建設株式会社
設立
1948年1月
従業員
5,649名(連結・2020年3月現在)
売上
3,859億(連結・2020年3月期)
事業内容
総合エンジニアリング事業(ガス、電力、石油、石油化学、一般化学、医薬品等のプラントの設計、調達、施工、試運転およびメンテナンス等)
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